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93話 砂の海

北大陸のほぼ中央にそびえる火山、その先に荒地が火山を囲うように円形に拡がり、さらにそれを囲う森へと繋がっている。


火山に赴くだけでもそれなりの時間を有したのだが、そこから東へと向かい、ステラが植物に興味を持ってからは、さらに旅の足は遅くなった。


そして東の果ての断崖にたどり着いた時、北大陸に足を踏み入れてから早1年が経っていた。


ほとんどの日を森の中で過ごしてきたのだが、毎日と言っていいほど新しい植物や動物に出会いがあった。


それほどまでに北大陸は雄大であり、多くの動植物が暮らしていたのだ。


当初アクセルの予定では中央大陸に再び道が現れる3年の内に東、北、西の果てを見て回る計画なのだが、すでに1年が経過し、残り2年では間に合わない計算だ。


だが今はソニアも共に旅をし、最悪、時空間もあるということで旅の速度は変わらずのんびりと北大陸を回っていたのだ。


そして現在は北大陸の北側を目指し移動しているのだが、しばらく進むと森は姿を消し、目の前に広がっているのは遮るものが一切ない砂漠だ。


「うぅ、また暑いところだ……」


「はは、我慢だな!………しっかし暑いな。熱気が目で見えるぞ」


森が見えなくなってくるまで進むととてつもない暑さが襲ってくる。


さらにここに生息している魔物や動物達も独特で、炎の身体を持ったトカゲや、超巨体なミミズ、地竜らしきものも確認出来た。


夜になるとその暑さは一転、凍えるほどに冷え込み、昼間姿を見せなかった魔物達も姿を現すようになった。


「ひんやり気持ち~!!」


「お前、寒いのは平気なのか…ソニアは平気か?」


ステラは冷えた砂の上をゴロゴロと転がり楽しそうだが、ソニアは身体を抱え、プルプルと震えていた。


「問題ありません。しかし、まさかこのような場所があったとは……」


中央にそびえる火山の影響か、ここ北大陸は全体的に気温は高めで、住処から出たことがなかったソニアにとって震えるほどの寒さを体験したのは初めてのことだったのだ。


「訓練をしておいて良かったです。あれがなければ凍ったトカゲになるところでした」


「トカゲって……」


そんな強がりを見せているソニアだったが、完全無欠に思えたアグレクトルドラゴンも寒さは少し苦手のようだ。


魔力を操り環境に適応しつつも、未だ身体をプルプルと震わせている。


日の高い内は灼熱、日が落ちれば極寒、そんな砂漠の旅を続ける一行だったが、とある日………


「凄いな……」


「圧巻の光景だ」


アクセルとミラが口を揃えてそう言うのも頷ける光景が目の前に広がっている。


それは砂がまるで地面に吸い込まれているかのように落ちていき、広範囲に渡って砂の海が渦を巻いているのだ。


そして時折吸い込んだ砂が、空高く打ち上げられている。


そんな光景を目の当たりにし、アクセルは魔力を拡散、地形の把握を試みる。


「うは!地下も相当深いな!!地下でも砂が水流みたいに流れるてるぞ」


陸の上でありながら、海さながらの光景に興奮したのか、アクセルが楽しげにそう口にする。


「飲まれればただでは済まないということか……む?まさかとは思うが…」


そう言いながら仲間を見渡すミラだが、アクセルだけならず、ステラもアクセル同様目を輝かせ、ソニアもどこかソワソワしている。


「はぁ……次は砂の海に潜り、地下探索か……」


ミラの言葉を聞き、飛び跳ね喜ぶアクセルとステラは何故かハイタッチまでして喜んでいる。


「わ、私は別に、皆さんについていくだけです!」


「ソニア…地下ってのは色々と不思議が詰まってるんだぞ?まだ見たこともないヤツもいっぱいいて、ものっっっっ凄く美味しいかもしれないぞ?」


「はわぁぁぁ」


アクセルの言葉を聞き、妄想しているのか恍惚の表情を浮かべるソニア。


そしてアクセル達と手を取り合い、飛び跳ね喜んでいる。


「はぁ…見事に彼に毒されていったな…私が歯止めをかければ」


そんな3人を見て、顔に手を当て呆れかれるミラ。


「おいおい!そんなこと言ってて良いのか?地下には歴史も多く遺されているって言ってのお前だろ?」


「はぁ……分かった、分かった!どうせ私が止めても無駄だろう……ならば、しっかりと準備を整えて万全の状態で行こう」


「「「オー!!!」」」


こうして持ち物の準備やどこから入るのか、どう侵入するかなど入念に打ち合わせをした後、いよいよ砂の海に潜ることになった。


ミラ、ソニアは翼を生やし、ステラは風の魔法を使い宙に浮いている。


そしてアクセルは念には念を入れ、魔装状態となり突入するようだ。


「よーし!じゃあ行くぞ!」


そう声をかけたアクセルは勢いよく砂の水流に飛び込んでいく。


それを3人は空中から追いかける形だ。


大きな穴をくぐるとソニアは即座に仲間の周囲を明るく照らしていく。


水流に乗ったアクセルは流れに逆らわず、背にある光の球を板状に変化され、まるで波乗りしているかのように流れ落ちていく。


そしてどんどんと地下に降り、少しすると開けた場所に着地した。


「うはぁ!楽しかった!!凄い速さだったのに結構降ったな」


先に着地したアクセルに続き、皆が到着すると周りを見渡してみる。


数箇所から砂が流れ落ちており、少しするとモコモコと砂が盛り上がり、やがて爆発音と共に上空へと凄い勢いで打ち出されている。


そしてさらに奥へと続く道を発見する。


この場は危険だと判断し、奥の方に進んでみることになった。

読んで頂きありがとうございます

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