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92話 ステラの趣味

再び北大陸に戻り旅を再開した一行。


修行を経てステラ、ソニアも力を付けたことで、油断とは違う心の余裕が生まれ、物事を見る目が変わり旅を楽しんでいた。


そしてステラはそれが顕著に表れ、以前にも増してアクセルにくっつき、はしゃいでいた。


「ステラはホントにマスターに似てきましたね」


「ステラにとってマスターは親も同然だからな。その背中を見ていれば自ずとそうなるのは仕方ないさ」


アクセルは相変わらず興味のある物を見つければ、服が汚れることなど厭わず対象との距離を縮め、子供のように喜んでいる。


ステラもそんなアクセルと一緒になり走り回っていたのだ。


そんなステラなのだが、未知を追い求める中でもアクセルが特に鉱物を好むように、ミラが歴史に興味を持つように、ソニアが美食への探求をするように、趣味ともいえる旅の目的を未だに持てずにいた。


旅を始めた当初から焦って見つける物でもないとアクセルに言われ納得していたのだが、それぞれの分野で夢中になる仲間達を見たこと、強くなり余裕が生まれたことで自分も夢中になれる何かが欲しいと強く思うようになった。


そして、その出会いは突然訪れた。


その場所は火山から遠く離れ、巨大な木々が生い茂る森を抜けた先に広がる一面の花畑だ。


その色とりどりの花々に囲まれ休憩をしている時だった。


「あれ?」


ステラが何かに気付きゆっくりと一輪の花に近寄っていく。


「ん?どうした?」


「この花……歩いてたような…」


ステラのおかしな物言いに顔を見合わせるアクセル達だが、ステラはその花に顔を寄せ、じっと眺めている。


「むーー……………」


すると同然、その花は茎から伸びた葉で身体を支え、自ら地面に埋まった根を引っ張り出すと、二股に別れた根で地面を蹴り走り出したのだ。


「うわ!!走った!!!あはは、ねぇーーーみんなーーー!!」


ステラもその花を追いかけながら皆に声をかける。


しかしすぐに花はまだ地面に根を隠し、なんの変哲もない花と化してしまった。


「あらら、戻っちゃった」


ステラの呟きと同時に皆が集まってくるが、その花は依然動きを見せない。



▽▽▽



「走る花かぁ……動く木ってやつはいたけど、あれは魔物に分類されてるしなぁ」


「植物といえど生き物だ。石も意志を持ち、魔獣を退ける力を持つ木々もあることだ。花が走っても不思議ではない」


今まで植物に注目することがあまりなかったが、確かに不思議な力をもつ植物は沢山あった。


包帯のような草、傷を癒す力を草、毒を消す草、他にも様々だ。


その中で自ら移動する花があったとしてもなんら不思議ではない。


それにここ北大陸は中央大陸とは違い、不思議な植物達がいっぱいなのだから。


この走る花がきっかけとなり、ステラは植物に深い興味を示すようになった。


今までただ通り過ぎていた道端に生えている草でさえその興味の対象となり、地に這いつくばり、丸い尻尾をフリフリしながらよく観察するようになった。


「ステラのやつあんなに夢中になって…まだまだ子供だなぁ…」


「君が言うな!興味を引く石を見つけた時の君と、まるで瓜二つではないか!全く……」


そんな日々が続いていたのだが、ステラには悩みも出来ていた。


いつものように、また新たなの植物を見つけたステラだったが、現在は頭を抱えウンウンと悩んでいる。


「どうした?」


そんなステラに声をかけるアクセル。


「あ、マスター。じつは――――」


ステラの悩み。それはアクセルの石のように少し分けて貰いあとで調べることが出来ないことだ。


木の枝や花の葉をちぎるのは、手足をもぐようなものだと思えて、その場で観察するしかなかったのだ。


そしてステラは姿、形だけでなく、どんな効能があるかも調べたかったのだが、観察するだけで時間が過ぎ、旅の足を止めてしまうと思い悩んでいたのだ。


「まぁ確かに草木は種類が多くてその都度、足を止めてたんじゃ一向に旅は進まないしなぁ」


「せめて形をすぐに記憶出来たら、その分調べる時間に当てられるんだけど……」


ステラのその呟きにアクセルとミラが同時にある事を閃いた。


「「絵だ!!」」


揃ってそう答えるアクセルとミラ。


コリンの持つ力が参考となり閃いた。


「紙とかに絵を描くんだ!それなら形だけでも見直すことも出来るし、その絵と一緒に調べたこと書き込めば分かりやすいだろ」


「おぉ!!!なるほど」


「ふふ、まるで図鑑だな」


「あ、そうだ。これ俺が文字を覚える時に使ってた本だけど、ほとんど使ってないからステラにやるよ。あとこのペンもな。魔力を使って書くんだけど、ステラくらい魔力があればなんの問題もないだろ」


「うわぁー!!ありがと!マスター」


大喜びでピョンピョンと跳ね回るステラだったが、アクセルから貰ったペンとは違う別のペンで早速絵を描いてみる。


「うっま!!」


「まるで転写したかのようだな…」


「これを短時間で描きあげるとは……」


3人も驚きの声をあげるステラの絵の腕前は、もはや絵ではなく写真のようだ。


だが当然、線と塗りつぶした2色しかなく、白黒写真のようだった。


「ふむ、しかしこうなると色が欲しいな」


ミラがそうポツリとこぼす。


「色……そうか!くく、はっはっはっはっ!!そうか!ちょっと待ってろ」


突然大きな笑い声を上げるアクセルに一同も驚いたが、何かを閃いたのだろうとすぐに理解し、またこういう時のアクセルのちょっとは、ちょっとではないことも知っていた。



▽▽▽


「出来たーーー!!!」


アクセルがそう叫んだのは2日後だ。


「2日後をちょっととは言わないぞ…」


ミラの的確なツッコミが入るがアクセルは構わずステラにある物を手渡す。


「これは色を自在に変化させるトカゲの魔物から採れた核を使ってる。この核を押しながら…例えばこの草に先を当ててみな」


アクセルの説明を受け、それに従うステラ。


「それで何か描いてみろ」


そう言われ、ただ線を引いてみると、なんと草と同じ色の線が引けたのだ。


「うわ!凄い!!!」


「もう一度その核を押すと普通の色に戻るぞ!これでお前の絵を組み合わせると、実物を切り取ったみたいな絵が出来るな!!」


こうしてステラはアクセルから貰った本に色とりどりの植物を描き、ページを埋めつくしていく。

読んで頂きありがとうございます

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