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06話 帰還

「こんなガキが生き残れるとはなぁ。いっそここで喰っちまうか」


「やめておけ。魔王様が殺さなかったのには何か理由があるのだろう」


「そりゃどんな理由だ?」


「そんなこと俺みたいな下級魔族にわかるわけないだろ」


魔族達はこんな会話をしながらアクセルを抱えて運んでいる。

そして“門“と呼ばれる場所に程なく到着する。そこは城から然程離れていない森の中。


門とは呼ばれているが、扉の類は付いていない。

アクセルの使う時空間の渦を扉ほどに大きくしたものだ。


「そらよっ…と」


そう言いながらその門にアクセルを投げ込んだあと、


「これに入ったら人間の世界に行けるんだよな。食い放題じゃねぇか。」


「お前…何も知らないのか…ここを通れるのは人間と、大した力のない雑魚だけだ。前にお前みたいなやつが通ろうとして塵になった時のこと聞いてないのか?」


「そういえば……ちっ」


過去アクセルとは違う方法で迷い込んだ人間は複数いたが、いずれも門に投げ込まれている。

ただし、行きと帰り、時空間を通るさい魔力を大量に搾取され枯渇、帰還してもそのまま力尽きるものがほとんどだった。


そんな会話をしながら戻っていく魔族の目を盗み、黒い何かが門に飛び込んでいった…




▽▽▽▽▽▽▽▽



「あの馬鹿、どこほっつき歩いてやがる…」


「つべこべ言わず探す!」


アクセルが今まで言いつけや約束を破ったことはない。何かあったのではと、ネーラとグレイは心配し探しに来ていた。


「…アオーーーン」


遠くで遠吠えが聞こえる。

その声を聞いて焦る二人。


「おいおい、まさか襲われたりしてねぇだろうなぁ」


「急ぎましょ」


遠吠えが聞こえた方角に走る。そして


「いた!」


「魔物は…いねぇな。俺らに気づいて逃げたか…アクセルは無事か?」


「ええ、でも良い状態ではないわ。急いで戻りましょう」


発見されたアクセルであったが、意識はなく、皮膚は所々、焼け焦げている。

家に連れて帰り治療を施し、アクセルが目を覚ますのを待つ二人。


そして朝、アクセルが目を覚ました。



意識が覚醒し、ガバッと身を起こす。二人を視界に捉えたアクセルは脱力し、項垂れる。


一頻り心配された後、


「それじゃまずは何があったのか説明して」


ネーラの言葉にアクセルは頷き、ありのまま話始める。


「しかし魔王なんてのと戦って良く生きてたな」


「ん〜、多分だけど、助けてもらった…気がする。身体のあっちこっちが痛いけど、全部動くし」


「…たしかにそんな状況を考えれば、アクセルの今の状態は奇跡ね」


あの状況でアクセルが一人、二人魔族を倒したとしても魔族達は確実にアクセルを殺していただろう。

それを従える魔王が元々殺す気がなかったとしても、人間の世界には帰れなかったかもしれない。


「あ、先生。聞きたいことがある」


そういうとアクセルは魔族達から魔力を感じとった時のことを話す。元々サーチという魔法は存在するがアクセルは使えない。

なぜ感知出来たのか、それともサーチを無意識で使えるようになっていたのか知りたかったのだ。


「サーチは範囲内にある魔力を探知するだけだから、対象の魔力の大小までは分からないはずよ」


そう、アクセルは魔力だけでなく、その規模まで感知していたのだ。


「あと、魔力の模様?とどんな風に出てるかも見えた」


ネーラに視線が集まる。


「…うーん、たしかに魔力は個人によって波動が違うってされてるけど……そうね、冒険者のギルドカードはそれを元に作られてるって聞いたことあるけど、何も解明されてないわ」


「つまり?」


「わからないわ!」


なぜか吹っ切れたように胸を張りながら答えるネーラ。


「ねえ、アクセル。それは今も見えるの?」


「今は見えない。多分魔力がなくなってるから…」


アクセルは膨大な量の魔力を持っているが一定数まで魔力が低下すると、自然回復が途端に遅くなる。

逆に下回らなければ、凄まじい速さで回復する体質だ。


「魔力がない?戦闘は一瞬だったんでしょ?」


「多分、最後の紅い光を受けたからだと思う…」


「…バチバチ鳴ってた…となると雷魔法の類だと思うけど、そもそも雷魔法自体使える人が少ないから情報が無いわね…。もっと言うと、魔法が効かないアクセルに怪我を負わせるとなると…」


「魔法が効かない奴にも効く魔法ってことか?」


「もしくは別のなにか、ね…」


頭を傾げる三人…


「とにかくそれを防ぐのに魔力を使い切ったってことね」


「…でもなんで突然そんな力が使えるようになったんだろ…」


「それは、あれだ。窮地に陥ると力が目覚めるってやつだ」


グレイの言葉にアクセルが、また茶化されたと思っていたが、


「これは冗談じゃないぜ。正確には窮地に陥ったことで新しい力の使い方を閃いたって感じだな」


「…閃く…」


「そうだ!今まで培ってきた経験や努力、それらがあるからこそ閃いたんだ。生まれ持った物は別として、何もしてないやつが突然何かに目覚めるってのは、俺はないと思ってる」


「なるほど。そっか………ありがとう…」


グレイの言葉を聞き納得したアクセルは二人に感謝を述べる。

そんな力を引き出せるまでに育ててくれたことが嬉しかったのだ。


「まぁとにかくしばらくは、大人しくしてな」


「…わかった」



こうしてまた新しい力を得て生還したアクセルであった…

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