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85話 強くなりたい

「ソニアか…良い名だ」


老ドラゴンがポツリと呟く。


「おじい様……」


「我が孫よ…いや、ソニアよ、行くがよい。こんな狭い穴ぐらに閉じこもる必要はない。その翼で大空を舞い、その眼で世界を見極めよ」


「はい!」


「そしてアクセル。人の子にして大いなる力を宿す者よ。もはやこの大陸にはそなたが求める物はなかろう…西大陸に向かうがよい」


「求める物があるのか、ないのか、それを決めるのは俺だ。心遣いは有難いが、俺はやりたいようにやらせてもらうぜ」


「さようか…実りある旅になることを祈ろう。そしてソニアをよろしく頼む」


「おう!じゃあ、またな」


こうして火山を出た一行。


そして火山地帯を抜けたあたりで、突然ミラは地面にへたり込み、アクセルは大の字に寝転びながら天を仰ぐ。


「はぁーーーー!!!怖かったーーー」


「ホントに寿命が縮んだぞ……」


突然のことにステラとソニアも呆気にとられる。


「うわ!」「え?だ、大丈夫ですか?」


「いやぁ、ソニアのじいちゃん、ホントに凄いな。今も震砕石か!ってくらい手も足も震えてるよ……」


ブルブルと震える手を見つめながらアクセルがそう言うとミラも、私もだ。と付け加わる。


「「…………」」


ステラ、ソニア共に言葉が出なかった。


老ドラゴンを目の前にし、そんな素振りを全く見せなかった2人は、それほどまでに疲弊していたのだ。


「………意外です。貴方達は恐怖すら乗り越えているものだと……」


「バカ言うな!恐怖なんか、常にまとわりついてるよ…どんなに鍛えても、怖いものは怖いさ」


アクセルと言葉の後、沈黙が続く。


それを機にしばらく休憩することなった。


アクセルもミラも相当参っているようで、眠りについている。


そんな中、周囲の警戒をする為、すこし距離をとるステラとソニアは地面に腰をおろす。


遠くに見える火山を眺めながら、ステラがポツリと呟いた。


「強く……なりたいね」


「あぁ……」


ソニアの祖父が一瞬だが見せた力を目の当たりにし、ステラとソニアは身動きすら出来なかった。


そして変わらず皆の前に立つアクセルと、ステラを庇うように前に出たミラ。


改めてそんな2人との力量差を思い知らされた。


そして何より、そんな2人と気持ちを共有出来なかったのが悔しかったのだ。


「力になりたい、役にたちたい、もうそれじゃダメだよね…ボクはあの人たちの後ろじゃなくて、並んで立ちたいんだ」


「あぁ、旅を共にして間もない私が言うのもおかしいが、私もそう願う。共に強くなろう…」


「うん、頑張ろ!!それに時間なんて関係ないよ!」


2人はアクセル達と対等で在りたいと願ったのだ。


勿論、主従関係云々ではない。旅をする仲間としては対等であったとしても、戦闘など有事の際にはどうしてもアクセル達の影に埋もれてしまう。


現状では自分達は守られる対象であり、助け合える関係になれていないと感じたのだ。


目指すのは、まさにアクセルとミラのような関係だ。

自分達もそれに加わりたいと、ソニアの祖父という強大な力を持つ相手と対峙して思うようになった。


そんな決意を新たにするステラとソニアであった。


その後、休憩を終え、ソニアの歓迎会と拠点の案内も兼ねて1度拠点に帰ろうということになった。


まずアクセルの持つ時空間魔法にソニアは驚き、拠点の美しさ、雄大さ、そこに住む変わった生き物にも大いに衝撃を受けていた。


そして串焼きなど簡単な料理ではなく、手の込んだ色んな料理に大いに驚き、喜び、その日は宴を楽しんだ。


そして翌日、これからの事を話し合おうとしていた。


「さて、これからだけど…」


アクセルがそう言うと、ミラが割って入る。


「それなのだが、私から提案がある。1度、本格的に鍛える期間を設けてみないか?」


昨日、ステラ達の話を知ってか知らずか、ミラはそう提案し、ステラ達もその提案に賛成の意を示す。


「ボ、ボクも強くなりたい!」「私も」


「おぉ、随分やる気だな…確かにまだまだ強くて、危険なやつらはいるだろうしなぁ」


「幸いうってつけの物を君が持っている事だしな」


ハテナ顔を浮かべるソニアにミラがランタンの説明をする。


「時間の流れが違う世界……いや、しかし肉体の変化が起こらず、元に戻るのであれば訓練をしても徒労に終わるのではないですか?」


当然の疑問をソニアが口にするが、アクセルがそれを否定した。


「いいや、そもそも身体を鍛えることだけが強さに直結するわけじゃない。俺達の訓練方法も身体や魔力の使い方を知る為のものだしな。身体なんか動いてたら自然と鍛えられるさ」


「なるほど……自身の身体を使いこなすことこそが強さ…」


「まぁ、ちょっと違うけど、それは追追だな。まぁランタンに注ぐ魔力も調整出来るようになってちょくちょく入れてたらから溜まってるけど……あれ、俺しか扉を開けられないし、1度開くと時間おかないとまた使えないから、全員で入って、全員で出ることになるぞ?」


前回使用した時からアクセルは1人で実験を行い、ある程度使用に関する条件を理解出来ていた。


そして扉の中は過酷な環境だ。


誰か耐えきれず退出したい場合、全員で出ないと中に取り残されてしまうことになる。


そして扉の制限時間があり、それを超えた場合、どうなるかまでは分からないため、そう提案したのだ。


「問題ない。入ってすぐ耐えきれず出たとしても使うの君の魔力だけだ!」


「おぉう、まぁその通りなんだけど…なんか引っかかる言い方だな…じゃあ、これを機に頑張って鍛えてみるか!」


扉の中では、扉に入った時の状態が固定されるため、体調を万全に整えてから。ということになり、持ち込む物なども揃え、翌日から修行を始めることとなった。



読んで頂きありがとうございます

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