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83話 ドラの心境

アグレクトルドラゴンの女、ドラを加えて旅をすることになった。


世界を見て回るのだというドラをアクセルが誘った形だ。


すでに幾日か旅をしているのだが、ドラが旅を共にすることを決めたのは、アクセルに興味を抱いたからだ。


人間など吹けば飛んでいく脆弱な者達だと思っていた。現にアクセル以外の人間はそうだった。


しかしその人間に正面から叩き伏せられたのだ。


二度目の戦いに際しては、ドラゴンの姿を見せたにも関わらず、圧倒的なまでの強さを見せつけられ、手も足も出なかった。


そして敬愛する祖父に匹敵するほどの力を感じ、その力はすぐに恐怖に変わった。


さらには、その恐怖を抱いた相手は、様々なことを教えてくれた。


例えその教えられた知識が間違ったものであったとしても、ドラにとって何かを学ぼうとするきっかけにはなったのだ。


そして、なにより美味しい物が食べたかった。


アクセルが用意してくれたものはどれも美味しく、その種類だけでも数多かった。さらには調理法や調味料、それらの組み合わせを合わせれば、数え切れないほどの美味がまだまだ存在することを知ったのだ。


世間知らずとはいえ、アグレクトルドラゴンという高位な存在だ。頭の回転は速い。


幸い空を飛ぶ自分を、追いかけてはこないと理解し、すぐに得るものを得たらこの者達から離れれば良いと思い立ち、共に旅をすることを決めたのだった。


そう思っていたドラであったのだが、思った以上に心地いい。


打ち負かされたのだ。好き勝手命令されるものだと思っていたが、アクセルのみならず、皆が対等に接してくれる。


特にミラなどは愛情ともいえるものをもって接してくれる。


ステラは最初、馴れ馴れしいと思っていたが、短い付き合いの中でも、今では友人とはこういうものかと思わせてくれる存在になった。


そしてアクセル。あの凄まじい力と恐怖を感じた相手は、今もステラと共に地に伏し、汚れることなど厭わず小動物達と戯れている。


そんな様子を眺めているとミラが声を掛けてくる。


「ふふ、まだ彼を理解出来ないといった感じか?」


「え?、あ、いえ……そんなことは」


「気を使う必要はないさ。見ての通り、彼は子供だ。と言っても子供のように純粋という意味だがな」


「………」


「だが、そんな彼だからこそ、己の在り方を理解し、力の使い方を知っている。不思議だろ?彼は1人で生き抜く術も力も持っている。しかしそれを分かっていても、手助けしてあげたいと思ってしまうんだ」


ミラにそう言われ、ドラもハッと気付いてしまう。


共に旅をしていくうちに、些細なことだが自分も何かをしようと思っていた自分に。


食事の用意や、野営の準備。他にもあるが率先して手伝うようになっていたのだ。


特にやれと言われた事などない。むしろ休んでて良いとまで言われていた。


旅の道中、皆が協力し合っている中、やはりその中心にいるのはいつもアクセルだ。


そんな彼の力になってあげようと、ミラやステラの手助けをしてあげたようと、知らず知らずのうちに考えるようになっていたのだ。


「私もステラもそんな彼に惹かれ、共に行動をしている。彼とでしか見えないモノがある気がしてな…」


「なんとなく分かります……」


短い付き合いのドラではあったが、自分のことを考えるとそれはすぐに理解出来た。


力で支配されることも無く、好きに行動させてもらっている。


支配されていたならば、今のように広い視野で物事を観ることは出来なかっただろう。


力を持っているからと自分本位に振る舞わず、常に対等な立場にたち物事を観ている。


そんなアクセルとしか観れないモノがあるのは、今も元気にアクセル達の周りを走り回っている小動物達を見れば、理解出来た。


そしてドラは以前にも増して、この一行と共に在りたいと思うようになった。


(これが母の言っていた誰かを想うということか…)


こうしてドラはその想いを胸に秘め、やる気を漲らせていった。



▽▽▽




「ドラの住処に挨拶に行こうと思うんだ」


あれからさらに数日旅をしたある日、朝食をとりながら突然アクセルがそんなことを言い出した。


「え?いや、それは……」


「ふむ、確かに祖父とやらも心配しているだろうしな」


「さんせーい!」


戸惑うドラをよそに、ミラとステラは賛成のようだ。


「どのみちこの北大陸にはしばらくいるんだ。それとも何か理由があるのか?」


「祖父は兎も角、他のドラゴン達は私を良いように思っていない。そんな私が他の種族を引き入れたとなれば、皆に危険が及ぶ」


「うーーん、お前のじいちゃんって、そのドラゴンの長なんだよな?高位な存在を纏めあげてるヤツがいるのに、好き勝手するヤツはそうそういないと思うんだけどな…」


「確かにおじい様は凄まじい力を持っていて、逆らう者はいないが、そのおじい様が牙を向く可能性もないわけじゃない!そうなれば如何に貴方が強くても生き残ることは不可能だ!!」


「まてまて、話も聞かず襲いかかってくる物騒なやつなのか?俺はただお前と一緒に旅をすることになったと挨拶したいだけだぞ?」


いっこうに意見を変えないドラだったが、とりあえず近くまで行こうとアクセルに押し切られ、渋々頷くしかなかった。


こうしてドラたちアグレクトルドラゴンの住処である、北大陸中央にそびえる雄大な火山を目指すことになった。

読んで頂きありがとうございます

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