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75話 まずは形から

「よし!じゃあ早速明日から俺達と毎日これをやるぞ!最初は時間もかかるけど、焦らなくて良いからな」


ステラに鍛えてほしいと言われ、拠点に戻りアクセル達が幼い頃より続けている鍛錬方法をステラに教え込む。


一通り鍛錬を終えたステラだが、どこか納得出来ないといった様子で、握ったり開いてたりしている手を眺めている。


そんなステラの様子を見て、アクセルはステラの頭を撫でながら語りかける。


「さっきも言ったろ?焦らなくていい。魔力操作の鍛錬は兎も角、これの成果が出るには時間がかかる」


「……はい」


現状ステラは赤子の様な状態だ。


獣人はほぼ全ての者が魔力から縁遠い環境で暮している。

その為、生活の中で魔法を使うことはおろか、自身の魔力を感じることさえも出来ない者もいるほどだ。


しかしこれは人間も同じなのだが、環境が違う。


魔道具や魔法、生活の一部となったこれらを、好奇心旺盛な幼児が興味を持たないはずがない。


貧しい者達でも目にする機会は充分にあるのだ。


そしてステラも例に漏れず、自身の魔力を感じることから始めたのだが、驚くほど短時間で、僅かだが魔力を操作するまでに至った。


現状、魔力操作に関してはアクセル以上に上手い者はいないが、そんなアクセルも魔力を操作するまでには相応の時間が必要だった。


だがステラは長い期間、呪法に耐えていた。


無意識であるだろうが、魔力が働きかけていたことは明白である為、即日習得に驚きはしたが納得はしていた。


だが身体の動きを理解する為の鍛錬は経験がものをいう。


獣人が身体能力にどれだけ優れていても、すぐに成果が現れることはない。


ステラは長い時間、虐待を逃れようと身動きすらしていない期間があった為、尚更だ。


「よし!じゃあ次は道具を揃えに行くぞ」


「道具ですか?」


「武器と防具だな。まずは武器か!今から街に戻るから気に入ったやつがあったら教えてくれ」


ポロの街に戻り三人で武器屋を見て回っているのだが、ステラ本人よりアクセル、ミラに熱が入っていた。


双方が「これは?これは?」と口を出し、様々な物を勧めてくるのだ。


そんな中、ステラの意見を聞きつつ剣に種類を絞り探していくとステラはある剣を手に取った。


「これ…」


「おぉ!島洋剣…カタナだな」


「カタナ……」


「俺が武闘大会に出てたのもあるカタナが欲しかったからなんだ。そういえば決勝でカタナ持ってるやつと闘ったな……」


「ふむ、しかしカタナは他の剣より扱いが難しいと聞いたぞ?」


自分が勧めた弓や投擲剣が候補から外され、若干拗ね気味のミラがそう口にする。


「まぁ、確かにこまめな手入れは必要だろうし、連戦は辛いかもなぁ。力任せに叩き付けると折れちゃいそうだし…まぁ気に入ったんなら魔法なり、なんなりで補助すれば良いだけだ」


「ボク、これが良いです」


なんと一本150万ポルンと凄まじい値段だったのだが、これからステラの命を守り、力になってくれる物だ。アクセルもミラも金に糸目はつける気はサラサラない。


そして買ったカタナはアクセルが預かり防具を探すことになったのだが、これが一番難航する。


アクセルもミラも防具は付けていない。


アクセルは防具に動きを干渉される事を嫌い、ミラは戦闘時、魔族の姿に変わる。魔族の姿になれば全身の皮膚が薄い装甲の様なものに変異する為、皮膚自体が防具となるのだ。


故に二人共防具の善し悪しに疎く、妥協が出来なかった。


ポロの街の防具屋全てを回ったがアクセル、ミラは兎も角、ステラも気に入った物を見つけることが出来なかった。


「やっぱりじっちゃんのいる街に行くしかないな…」


「職人の街、フォルジュか…それで見つかれば良いのだが」


「ボクは別にこの街にあるやつでも…」


「「ダメだ!!」」


「……はい」


「ステラ、俺達は意味もなく選んでるわけじゃない。防具一つで動き方は変わってくる。それをことある事に変えてたんじゃ、身体の感覚も狂ってくる。……たぶん」


「そこは言い切るところだ。だが、実際その通りだと私も思う。武器とは違い身体に密着するのだ。妥協はしない方がいい。性能、見た目、共にな」


「分かりました」


翌朝、時空間でフォルジュにきた三人は最初にドランのもとを訪ね、ステラとネロを紹介した後、防具について尋ねてみる。


「気に食わんやつじゃが、防具に関してなら腕は間違いなくこの街で一番じゃ」


そう教えてもらった人物の店に足を運んでみる。


武器と防具、作るものは違えど、あの気難しいドランが認めた程の人物が営む店だ。


奇抜な物も中にはあるがどれも安価な素材の物から高価な素材の物まで手を抜くことなく作り込まれているのがよく分かる。


アクセルはドランに紹介されたと店主であるエリマリンに伝えると、そこからドランに気に入られた珍しい子はあんたかと話が始まり、ドランの愚痴にまで発展してしまった。


そんなアクセルは他所にミラは見た目にも拘り、ステラと共に店内を見て回っている。


しばらくするとアクセルも解放されたのか合流するが、ここでもこれといったものに出会えなかった。


だが、店の一角にあるガラスのショーケースの様な物に入った服にステラは釘付けになっていた。


「お?それがいいのか?これ防具なのか?」


「あ、えっと綺麗だなって…」


値札も付いていないためエリマリンに聞いてみる。


「これは私が東大陸に修行に行った時、巫女と呼ばれるが者が儀式の際に着る服でね、それを私が参考に色々と手を加えて防具に呼べる物に仕立てあげた。あんたのその剣がドランのジジイの究極の品だとしたら、私のはこれさ!」


その後もどんな素材が使われているのか、どれ程の攻撃を防げるのか、色々と説明してくれるエリマリン。


「ステラも気に入ってるようだし、これ買うよ」


「簡単に言いなさんな。これには貴重な素材をふんだんに使ってるし、持てる技術の全てを注ぎ込んだ。そうさねぇ、3億ほどは貰いたいね」


「買った!!!」

読んで頂きありがとうございます

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