74話 それぞれの想い
翌朝、冒険者ギルドに遺跡探索の報告をする為、ステラには拠点で留守番をしてもらう予定だったのだが、どうしてもついて行くと譲らなかった。
危険がある訳でもないと共に行くことにし、コリン達と合流後、冒険者ギルドを訪ねた。
その間、コリン達も領主の屋敷が燃えたことが耳に入ったのか、どこか落ち着かない様子を見せていた。
そしてそれは冒険者ギルドにいる者達も同じだったのだが、たまに「いつかこんなことになると思っていた」などという声が冒険者達の中から聞こえてきていた。
その後、職員に呼ばれギルド長の部屋に通された後、遺跡を発見し、探索も完了したがその後崩壊し海に沈んだ事を伝え、そして空気を綺麗にするレガリアを見つけたと、差し出しながら伝えると、ギルド長や傍に控えていた職員も驚嘆の声を漏らした。
コリン達だけにはありのままを伝えているのだが、ゴーレムやあの遺跡の造られた目的などを冒険者ギルドに報告する必要はないと話し合いで決め、謎のまま海に沈んだということにしたのだ。
ランタンも文字が浮かび上がっていたのだ。当然普通の物ではないのだが、今のところ変わったところはない。
だが、戦利品はレガリアだけで良いだろうということになり、ランタンはアクセルが貰い受けることにしたのだ。
こうしてあの遺跡は空気を綺麗にするレガリアを護っていた場所だったのではないか。と予想を付け加えて報告を完了した。
そしてこの探索の報告をしたことでアクセルは最高位である★7の冒険者に昇格となったのだが、アートランでのように総出で祝うようなことはないようだ。
だが、コリン達が祝ってくれるようで、後で宴をしようと約束し、一旦別れたあと、ミラとステラは宿に戻り、アクセルは一人、アートランでモーラが営む宿の一室に時空間で向かった。
「やっと来たね!!」
部屋に降り立つなり、そう声をかけられる。
「すまない!ちょっと用事があったんだ」
そう答えるアクセルの視線の先にはアリーと、昨夜領主に虐待を受けていた獣人の少女が治療を施され、アリーの横に座ってオドオドした様子を見せていた。
アクセルも二人の前に座る。
「まずは突然押しかけて悪かった!」
そう頭を下げ、これまでの経緯を話し始める。
「まぁ、大体の事情はこの子に聞いてたから、何となく察しはついてたけど……それでそのポロの領主はどうなってるの?」
「…俺がこ」
アクセルの言葉の途中でアリーが「まって!」と遮る。
「もう分かったから…」
しばらく沈黙が続いたが、アクセルが少女に問いかける。
「なぁ、お前はどうしたい?故郷に帰りたいなら何とかするけど……でも、もしそうじゃないならこのアートランに残ってみないか?」
「……え?」
「ちょ、ちょっとアクセル君、どういうこと?」
「え?アリーだって人手が欲しいって言ってただろ?まぁ、今さっき思い出したんだけど…それに元々、おばちゃんに頼もうと思ってたし」
考え込んでいるのか、俯いてしばらく無言の少女。
だが、考えが纏まったのか、ぱっと顔を上げ、アクセルを真っ直ぐ見つめながら口を開く。
「私は帰る場所がありません。一緒に暮らしていた子達もどこかに売られてると思うし…だがら、ここに残らせて下さい」
「そうか…でも俺は一緒には居られないぞ?たまに会いに来ることは出来るけど…」
「……はい………大丈夫です!!」
少女はアクセルの言葉を聞き、あからさまに気落ちした様子だったが、最後には再び気を持ち直し、元気に返事をした。
「慣れるまで大変だと思うけど、ここは良い街だ!世界を旅してる俺が言うんだ。間違いないぞ」
その後、しばらくの間、少女がこの宿で生活が出来るよう、モーラに説明すると同時に軽く経緯を説明し、深深と謝罪した。
そして100万ポルン程を少女の宿代と生活費に当ててくれと、モーラに手渡し、少女を励ましたあと、再びアリーと二人で話し始める。
「全く、君は……」
「すまん。けど、やったことに対しては後悔していない」
「まぁ、ポロの領主はあまり評判が良くなかったから、いずれ同じようなことになってたかもしれないけど……権力者嫌いのアクセル君は領主に近付かないと思ってたのになぁ」
その後、アリーから説教を受け、解放された後、少女に気を配ってあげて、と改めてお願いしたあと、アクセルはポロの街に戻っていく。
そして昨夜に続き、連日の飲み会となったが、その後は何事もなく、過ぎていった。
そしてさらに翌朝、ステラに呼び止められるアクセル。
ステラの表情はどこかやる気が満ち溢れている。
「どうした?」
「いっぱい考えていました。…ボクも二人と一緒に冒険したりしたい。それがボクの望み…でもそれには危険がいっぱいあって、何も出来ないボクがいると二人まで危ない目にあっちゃう。だから、戦う力が欲しい。戦い方を教えて下さい!!」
「………まぁ、どのみち自分の身は守れた方がいい。それにお前が決めたことだ。もう口出しはしない。でも、一つだけ覚えとけ。力の使い方は間違えるなよ?」
「はい!」
こうしてステラはアクセルとミラ、二人と旅をすることを望み、力をつけるべく修行することになった。
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