71話 探索結果
(よし!やるぞ、お前ら!)
(おう!)(はい!)
ゴーレムに向かって走り出し、ロアとロイに呼びかけながらアクセルはバチっと音をたてながら身体能力を魔力で強化させていく。
人型魔獣との戦闘時に時折みえていた閃光も、今ではアクセルを中心に足元から渦を巻いている。
可視化し、さらには渦を巻く程、膨大な魔力で身体能力を向上させているのだ。
さらにその魔力の渦にロアとロイ、それぞれを象徴するかのような蒼と茜の魔力が加わる。
一般に使われる身体能力強化の魔法は、一時的に力が強くなったり、足が速くなったり、少し頑丈になったりと、どれか一つの機能に対し魔法で強化していく。身体能力全てを一つの魔法で補うことは出来ないのだ。
正確には出来る者がいない。
一つ一つを修得できていれば後はそれらをまとめるだけ、そう簡単なことでもないのだ。
それには一つにまとめる魔法を1から作り出さなければならない為、万人には到底無理なのである。
しかしアクセルは幼い頃から自分の身体と向き合ってきた。
自分の身体のことは知り尽くしているといっても過言ではない。
その知り尽くした身体の能力を限界まで高めているのだ。
軽くえぐれる程地面を蹴り、ゴーレムに肉薄するアクセル。
ゴーレム達もすぐさま弩で撃ち抜こうと矢を放ってくるが、その全てを叩き落としていく。
矢を避ける事など今のアクセルには息をするにも等しいが、アクセルの後ろにはミラが追従してきている。
ゴーレムの破壊はミラに任せ、核まで導くことがアクセルの仕事なのだ。
そしてまずは一体に狙いを定め、迫る槍を大きく弾き飛ばし、構えられた盾も蹴撃で同様に弾き飛ばした。
一瞬にして万歳状態となったゴーレムの核にミラの雷が炸裂する。
核が粉々に砕け散るとゴーレムも力なく崩れ落ちた。
もう一体のゴーレムも同様に核を潰す。
「ふぃーーー!!強敵だった!ロアもロイもお疲れさん!」
(お役にたててなによりです)
汗もかいていない額を腕で拭うような仕草をしながらアクセルがそう言う。
「よく言う…このゴーレム達が可哀想なくらい一方的だったではないか」
「ホントだぞ?コイツらだからさっきの身体強化使ったんだからな」
「まぁ、とにかく道は開けた」
二人で建物の入口に並び立つ。
「罠とかはなさそうだな……」
その言葉に続きアクセルが扉を開く。
警戒しながらも中に入ると、目に付くものは大きな机とその上に置かれたランタンのみと、どこか殺風景だった。
そしてさらに踏み込むと、物陰で人を縁どったかのような白い粉を発見した。
「コイツがここ作ったのか…」
「骨すら残っていないとは、一体どれ程の年月が経過したのだろう……」
二人で手を合わせたあと、アクセルは長い年月が経過しているにも関わらず、状態の綺麗なランタンを不思議に思い、近づいていく。
一方、ミラは骨の粉の中にある1冊の本を見つけた。
(拝借する)
そう心の中で一言いうと、本を手に取り開く。
(文字が消えて読めないか…)
ページの端などは、めくる度にパラパラと粉になっていく。
慎重にめくっていくと微かに文字が残るページを見つけた。
(…………!!)
「何か分かったのか?」
「あ、あぁ、僅かに読めるものが残っていた」
「おぉ!なんて書いてあったんだ?」
「備え、我が名は……だ」
「…見事に肝心な部分が無いな」
アクセルはそう呟くと再びランタンに視線を向け、手を伸ばす。
「そう言うな。残っているだけでも奇跡だ。それに収穫もある」
その言葉にランタンに触れると同時にミラの方を向くアクセルだったが……
突然ランタンが眩い光を放つ。
何事もなく光は収まったが、ランタンの表面に文字が浮かび上がっている。
「所有者、変更、確認?」
「………君に何かの所有権が移ったと考えて良さそうだが…」
ミラがそう呟くと同時に、手に持っていた本が粉になってミラの手からこぼれ落ちて行く。
「なっ!?」
さらに今度は建物自体が揺れ始めた。
「出るぞ!」
アクセルの言葉にミラはこの場所を作ったであろう人物の骨の粉を一掴みし、外にでた。
建物を出ても揺れは続き、遺跡部分まで戻ってくると揺れは感じなくなった。
先程までいた部屋は崩れ、海水が浸水してきている。
「これ、ここも不味いよな?」
「いずれはそうなるだろうな…それよりそれ…」
「あぁ、咄嗟に持ってきちまった」
アクセルはその手に持ったランタンを顔の高さまで持ち上げそう告げる。
「ん?魔力が…」
「どうした?」
「この場所に集まってた魔力が薄くなっていってる…」
アクセルが言った瞬間だった。
先程のものとは比べものにならないくらいの揺れが辺り一帯を襲う。
さらには壁だった部分に亀裂が生じ、海水が噴き出してきている。
「掴まれ!!」
ミラに手を伸ばし、声を荒らげるアクセル。
ミラがその手を掴んた瞬間、二人は地上に戻った。
そして地上に出てきても僅かに感じる揺れと騒音、荒れ狂う海水を眺める二人だった。
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