69話 対ゴーレム
ポロの街から少し離れた海、その波打ち際を歩いていくと大きな亀裂が目に入った。
遺跡への入口だ。
「どうだ?」
その入口に付近に五人で辿り着いた後、コリン、アネッサ、ステラをその場に残し、入口に近付いたアクセルとミラだったが、その入口にはゴーレムが片膝を付き鎮座している。
「あいつ以外はいない…と思う」
「ん?どうした?」
「あの入口から向こう、魔力が濃すぎてなんかグニャグニャした感じだ……感知しづらい」
「…空間が歪んでる?それほど高濃度に魔力が集まっているのか」
「俺が時空間使う時に似てるな。空間と空間の間にいるあの変な感じ」
「ふむ…とは言え、入ってみるしかないだろうな」
「あぁ、その前にあれをどうにかしないといけないけどな」
そんなやり取りの後、入口に近づくとゴーレムがブゥゥンと鈍い音と共に立ち上がる。
従来のゴーレムは岩などが寄せ集まったような簡単の造りの物が多いが、今目の前にはいるゴーレムは体長2m程で、金属製だ。しかも人間に限りなく近い身体の構造をしている。
立ち上がったゴーレムだが、アクセル達を見据えたまま動かない。
「ここが境界線か…撤退する」
「了解した…」
ゴーレムから目を離さないようその場から数歩下がると、ゴーレムはまた膝を付く体勢になり静かになった。
「それであのゴーレムはどうだ?」
コリン達の元に戻りながらミラがアクセルに尋ねる。
「もっと詳しく見てみないと断言はできないけど、魔晶輝石が使われてるだろうな。鎧みたいに中がスカスカでもないだろうし、繋ぎ目もなかった。なのに人の形に出来る金属なんて他に思い当たらない」
コリン達の元に戻ると三人が出迎えてくれた。
「「おかえり」」 「おかえりなさい」
「随分早かったね!もう終わったの?」
「まさか…まだ入ってもいねぇよ」
アハハと笑うコリン。
武器を置き、地面に腰を下ろすとステラが飲み物をアクセルとミラに手渡す。
礼を言い、一口飲んだあと、ミラが口を開く。
「それであのゴーレムをどう突破する?」
「うーん、壊すしかないな…俺達だけなら無視して進めば良いけど、コリン達が地図作るのをアイツは邪魔するだろうからな。核の場所も大体分かったし」
その後、コリン達から領主の派遣した調査隊とゴーレムの戦闘時の話を聞き、対策を固めていく。
そんな様子を黙って見ていたステラ。
(良いなぁ…ボクも二人の力になりたい…)
二人に救って貰った恩を返したい。その想いは当然あった。
しかしそれだけではなく、アクセルもミラも難しい顔をしながらでも、どこか楽しそうなのだ。
勿論ゴーレムを破壊するという行為にではない。
未知の金属により造られたゴーレム、そのゴーレムが護る遺跡。そこには何があるのか。
アクセルとミラにとってこれは冒険なのだ。そしてそれを楽しんでいる。
ステラもそんな輪の中に入りたかったのだ。
(ボクのやりたいことか……)
▽▽▽
「よし!じゃまずは作戦その1だ」
アクセルは剣を抜きながらミラにそう伝えると、剣に魔力を纏いながらも、凄まじい速さでゴーレムに真っ直ぐ向かっていく。
そしてキィィンという甲高い音と共にゴーレムを横一文字に切り裂いた。
かに思えたが…
「ひぃぃ、硬ぇぇ」
剣は片腕を落としたものの、胴部分で止まってしまった。
即座にゴーレムが行動を止める距離まで下がるアクセルだが、ゴーレムは止まらず、アクセルを追いかけてくる。
「だろうな…」
これはコリン達から聞いていた。
攻撃を加え、敵対する者には結構な距離を追いかけてくるようだ。
入口からかなり距離を開けたゴーレムだが、遺跡から新たなゴーレムが出てくる気配もない。
「ふむ…思考能力はそれほどでもないか…」
それをバサバサと翼を揺らし空から眺めるミラ。
アクセルもそれを同時に理解し、次の行動に移る。
「作戦その2だな」
アクセルがそう呟くと移動速度を一気に速め、姿を隠した。
同時にミラが空からゴーレムに雷魔法を放つが、少し痕が残るくらいの効果しかなかった。
しかしそれでもそれなりの威力はある。恐らくあのゴーレムは魔法に耐性があるのだろう。これもコリン達から聞き分かっていたことだ。
だがミラの放った雷魔法はゴーレムを攻撃するためではなく、注意を引く為のもの。
ゴーレムは空にいるミラに視線を向け、腕を伸ばし掴もうとするだけで、特に何もしてくる気配がない。
「遠距離攻撃はなし…か。最後だな」
その言葉と共にゴーレムの背後に時空間で現れたアクセルは、ゴーレムの胸の中央、その奥に隠されるように存在する核に、アクセルの剣の弾倉から発生した人の頭程の大きさの衝撃弾を撃ち込んだ。
そして引き金を引くと同時に衝撃弾は核と共に破裂し、ゴーレムは地面に倒れ込んだ。
「やはり核を壊すと動きは止まるようだな」
ミラがゆっくりと降りてきながらアクセルにいう。
「コイツの身体全部吹き飛ばすくらいの力は溜まってたと思ったんだけどな…やっぱこの金属普通じゃないぞ」
兎にも角にも、ゴーレムをこのまま放置することも出来ない。
チュチュ袋に入れようにも袋の口より大きい為入らない。
「あ、空間作ってそこに放り込んでおけばいいか」
自身の剣を仕舞うのにも使っている力でゴーレムを収納し、改めて入口に並び立つ二人。
「んじゃ、いくか」
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