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58話 アートラン再び

「うーん、やっぱり……はぁ…」


「いい加減心を決めろ。私もいるのだ、大事にはさせないさ」


ミトリースを旅立ち、東大陸に渡るため、東の果てにある港街に向かうなか、アクセルの心は沈んでいた。


港街に向かう途中にはアートランがあるのだ。


そしてミラの提案でアートランに立ち寄ろうという話になったのだが、アクセルは返事を渋っていた。


「だってさぁ、結構迷惑かけたし、どんな顔していいか分からないんだよ…」


「…もうこのやり取りも何度目だろうな…こうなれば最後の手段だ…マスター、私は君のワガママに散々付き合ってきたはずだ。私のワガママにも付き合ってくれてもいいのでは無いか?」


「はぁ…なんでそこまでアートランに行きたいんだよ」


「私は君が作った魔力風呂に入りたいのだ!」


以前アートランで魔力風呂を作った事はミラに話してある。

そして大層興味を持っていた。


天然の魔力風呂に連れていくことを提案したのだが、ミラはアクセルが作った物に興味を示し、これを断っている。


「…分かったよ…追い回させても知らないぞ」


「ふふ、君がなぜそんな行動をとったのかは知っている。もし、そうなれば私が街を破壊してやるさ」


「それはちょっと……」


冗談だとミラは微笑んでいるが、これからはもう少し考えて行動しようと思うアクセルであった。


▽▽▽



「ほう、あれがアートランか。中々立派な街並みだ」


「いや、かなり変わってるな…凄く立派になってる」


アクセルがアートランを出て1年と数ヶ月、その間にアートランは更に発展を遂げていた。


目と鼻の先までやってくると、遂にアクセルも覚悟を決め、昔見た門番に近づいていく。


「お!?懐かしい顔だ…帰ってきたのか」


「お、おう…俺、入っても平気か?」


「はは、問題ない。そっちのべっぴんさんは連れか?」


「あぁ、パーティーカードもある」


ミラもパーティーカードを提示し、問題なく手続きを終えた後、再びアートランの街に足を踏み入れた。


そしてまず最初に向かったのは冒険者ギルドだ。


「ようこそ冒険者ギルドへ。ご要件をお伺いします」


「あぁ、アリーさんという方に話があるのだが…」


冒険者ギルドに入ったのはミラ一人だ。


アクセルは建物の外でチラチラと中の様子を伺っている。


「アリーは私です…が…!?アクセル君!!!」


アリーもアクセルに気付くと思わず大声であげ、周囲の視線を集めてしまう。


「あ、失礼しました…では貴方がミラさん?」


「はい…彼のことはとりあえず気にしないでくれると助かります。それで、彼の起こした事件のその後を聞かせて欲しいのですが、大丈夫でしょうか?」


「勿論です。アクセル君も一緒に別室に案内しますね」


何故か逃げようとしていたアクセルをミラが捕まえ別室へと連れて行く。


少しするとアリーとギルドマスターが揃って部屋にやってきた。


「やぁやぁ、久しぶりだね。元気だったかい?」


部屋に入るなりギルドマスターは気さくに話しかけてくる。


「あぁ、その…何か問題になってないか?俺はここに来るべきじゃないと思ってたんだけど、仲間に押し切られちゃって…」


「一つガラット国の姫であるマリー王女から君に言伝を預かっている」


「……うん」


「立派な指導者になってみせます。とのことだ」


「…えっ?それだけ?指名手配とかは?」


「勿論ないよ。君の言葉に大層胸をうたれたそうだ」


「そうか…まぁ姫のことは良いとしてここに迷惑がかからなかったのは安心したよ…」


「口を慎め!無礼にも程があるぞ」


ミラにお叱りを受けたアクセルだったが唯一の心残りだったことも解決し、その後は当時の話で盛り上がった。


そして別室を出た後、アリーとは後で会う約束をしギルドを出た。


そして次に向かったのはモーラが営む宿だ。


「おばちゃん元気かなぁ」


心残りが消えたことでアクセルの足取りもどこか軽やかになっている。


そして宿に到着したのだが…


「なんだこりゃ!!!」


宿を見て思わずアクセルは大声を上げてしまう。


アクセルが魔力風呂を作ったと同時に、領主の協力を得て改装したモーラの宿だったが、アクセルが今目にしているのは更に倍は大きくなっているであろう宿だ。


以前の安宿の面影は一切消え、一目で高級宿と分かる程だ。

そして宿というより旅館に近い雰囲気がある。


「本当にここなのか?アシュリットで王族達が泊まる位の格式に見えるが…」


「アリーも何も言わなかったし、ここで合ってるはずなんだけど…」


そう呟き、恐る恐る扉を開く。


宿に入ると従業員だろうか、一人の女性が出迎えてくれる。


「ようこそ明日への光へ。お二人様ですか?」


「えっ、と、あの、…おばちゃんいますか?」


スパーンと心地良い音を響かせミラに頭を叩かれる。が、従業員の女性は表情を崩すことなく対応を続けてくれる。


「女将さんのことでしょうか?何かお約束でしたか?」


「えっと、アクセルが会いに来たって、伝えて貰うと分かると思う」


従業員の女性は分かりましたと言い残し、店の奥に向かっていく。


そして少しするとバタバタと音をたて一人の女性が現れるなりアクセルを抱き締めた。


「よく…帰ってきたね…元気だったかい?」


「…おう!おばちゃんも元気そうだ」


「今日は宴さね!アリーちゃんも誘って、パァとやるよ」


アクセルから身体を離すとモーラはアクセルの両肩をバシバシ叩きながら再会を喜んでくれている。


「まぁこんなべっぴんさんを連れ回して、罪な男になったもんだよ。あんた達、今日は泊まるんだろ?約束通りタダで良いからね」


「助かります」


「この子が作った魔力風呂、ウチでは英雄の湯って名前で大人気さ!ゆっくりしていっとくれ」


無事モーラとも再会を果たし、アクセルが作った風呂には英雄の湯という名が付けられていた。

読んで頂きありがとうございます

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