表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/167

56話 後始末

新たな目的地、東大陸に渡ることを決めた二人。

ミトリースで一泊し、翌朝、旅立つことを決めた。


そして夜明けと共に目覚めたアクセルは、朝の日課である鍛錬に向かうため部屋を出ようとした時、ミラが訪ねてきた。

挨拶を交わし、話があるとのことで部屋に招き入れる。


「魔剣がおかしい?」


「あぁ、今朝から妙に騒がしいとでも言えば良いか…そして私自身もどこか落ち着かないのだ…」


アクセルも思考を巡らせ、昨日の暁との一件で未だに気分が高まっているのかと思ったがミラの表情からその類いでないと考えを切り替える。


そしてふと思い出した。

似た感覚をアクセル自身も感じたことがあると。


「もしかしてロア達と俺が出会った時の感覚に似てる…のか?こう…何処かが気になるとか…なんとなく気になるって感じだ」


「近いかもしれない…昨日行った暁の聖地…あの方角が気になってはいる…」


そういうことなら行って確かめようと、ミラに手を差し出す。


ミラがその手をとったことを確認し、時空間で暁の聖地であった場所に飛んだ。


だが、降り立った瞬間アクセルがミラの口を塞ぎ、茂みの中にミラを抱え、飛び込んだ。


「静かに……」


最初は驚いたミラもアクセルの行動の理由はすぐにわかった。


「…なぜ魔族が…しかも三人」


そう、アクセルは魔族の魔力を感じとり、すぐにミラと身を隠したのだ。


昨夜の内に魔界から来たのか…一瞬そう思ったがそれは有り得ない。


アクセルなら兎も角、ミラにまで感じ取れるほどの強大な魔力を有して、魔界とこの世界を繋ぐ門は通れないからだ。


幸いまだ魔族達は動きを見せていない。


このまま様子を見るか、それとも接触を図ってみるか、考える時間はあるようだ。


「少し様子を見てくる…すぐに戻る」


アクセルはそういうと魔族の魔力を手繰り、居場所を探る。


その間ミラも思考を巡らせる。


そして一つの仮説が浮かび上がる。それと同時にアクセルも戻ってきた。


「地下に続く洞窟を見つけた。あそこで間違いない…でも昨日来た時は、あんな洞窟無かったと思ったんだけど…」


「……私の考えを聞いて欲しい」


そう口にするとミラが自身のたてた仮説を語り始めた。


この聖地には認識を阻害する鉱石を使用されていた。恐らく建物などに使われていたのだろう。


そのため洞窟もその鉱石の影響を受け、見つけられなかった。


そして結界。ミラにより破られてしまったが、それなりに強力な物だった。故に疑問を感じた。


いかにマールーンが時空間に分類される珍しい力を持っていたとしても、魔力はそれほど強大ではなかった。


一からあの強力な結界を作りあげるのは時間を掛ければ成し得たかもしれないが、5年、10年で出来る代物ではないはず。


ではどうやって。


それは、すでにここには別の結界があったのではないかとミラは考えたのだ。


「その結界に手を加えることで強力な結界に作り替えた」


「…じゃあ…その結界で何を閉じ込めてたかというと…」


「恐らくあの魔族達だろう。思えばマールーンはあの結界にやたらと自信を見せていた。それも実績があるのであれば頷ける」


過去に強大な力を有する魔族を封じ込めた結界。それに手を加えたのだから自信に繋がるのも頷ける。


「封印されていた者達だ。過去に何かしらをやっているはずだ。このまま様子を見るという選択肢はなくなったな」


「でも、どうするんだ?このまま乗り込むのか?」


「元はと言えば、私が結界を破壊したことが原因で魔族が解き放たれたのだ。後始末は私がするさ」


「いや、一人でやる必要もないだろ…」


「…今回の一連の出来事は私が行ったことだ。最後まで私の手で成し遂げたいのだ…それに今回は私と同族、宿で話した胸騒ぎのこともある」


今回に限りミラは頑なに態度を変えようとしない。

それに伴う理由があるのだろうとアクセルは思い、了承するしかなかった。


「わかった……気の済むようにしてくれ。俺だけじゃなくてロアもロイもネロもいるんだ。必ず力になれる」


「あぁ、とても心強い。頼もしい限りだ」


意見を纏め洞窟に進む二人。


薄暗くひんやりした空気の中、特に何事もなく奥までたどり着く。


そしてハッキリと聞き取れないくらいの話し声が聞こえくる。


「…いるな」


「私が行く」


ミラはそう言うと正面から進む。その後ろにアクセルもついて行く。


「……誰だ!!」


魔族の一人が声を張り上げた。


「久しぶりに解放された気分はどうだ?」


ミラがゆっくりと歩み寄りながら魔族達に尋ねる。


「……あなたがこの忌々しい封印を解いてくれたのですか?」


「あぁ、そうなるな」


「そうですか…なかなか殊勝な心掛けです。私に仕えることを許しあげますよ?。それによく見ればいい身体をしているじゃありませんか……。たっぷりと褒美をあげないといけませんね」


「キヒヒヒヒ、女だ」「グフフフ、久しぶりの人間だ」


魔族達はミラを見て下卑た表情を浮かべ、何やら盛り上がっている。


「あなた、最初の命令です。まずは人間の女を数人連れてきなさい。そうすれば正式に家来としてあげますよ」


(…やれやれ、期待するだけ無駄だったか。当然といえば当然か)


「何をしているのです?早く行きなさい!」


「断る。貴様たちを野に放つことになったのは私の責任だ。封印などではなく、きっちりと消滅させてやろう」


ミラはそういうと魔族の姿へと変貌を遂げる。

読んで頂きありがとうございます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ