46話 完成!真・唯一無二の剣
ドランから依頼された素材は無事集まった。
すでに日は傾いていた為この日はゲンマドラコの縄張りから出た所で夜を明かし、翌朝フォルジュに戻った。
そして屋台で軽食と飲み物を二人分購入しドランの工房を訪ねる。
「じっちゃーん」
声をかけるとすぐにドランが顔を出した。
「おぅ、戻ったか。素材は揃ったかの?」
「おぅ!大量だ」
そう言って指示された場所に羽毛と粉、そして屋台で買った軽食と飲み物を出す。
「………多すぎるが預かろう。ワシはこのまま作業に入る故、お主は3日ほど時間を潰しとれ」
「3日か…わかった。期待して待っとくよ」
ドランの工房を出たアクセルは魔晶輝石があった洞窟、その地底湖付近に時空間で飛んだ。
(マスター、また魔晶輝石を採るんですか?)
(いや、俺も作りたい物があるから静かな所に来たんだ。ここは景色も綺麗だしな)
(なるほど。分かりました)
(お前達もその間好きにしてて良いぞ)
そして3日後、朝から再びドランの工房を訪ねる。
「じっちゃーん」
「おぅ、出来とるぞ。こっちじゃ」
そう言って地下に向かうドランの後を追う。
(あー、ドキドキしてきた…)
期待と興奮で胸が高鳴る。
さらに地下の空間に続く階段を1段降りる度、鼓動が速くなっていく。
そして扉を開き中に入ると布が被せられた机がある。
ドランはその机の前に立ち、布を掴む。
「これが進化したお主の剣じゃ」
そう言うとバサっと布をとった。
「これが……」
ゆっくりと2本を手に取り、目の前で交差する様に持つ。
色や形はそこまで変化はない。
だが、一目でわかる変化がある。
銃口に当たる部分にロア、ロイそれぞれの頭部を模した装飾が施され、開いた口から刃が伸びている。
動きを抑制することが無い小さなものだが存在感が際立つ装飾だ。
そして撃鉄に当たる部分は尻尾を模しているようだ。
「魔力の刃を使ってみい」
「あぁ」
ドランの言葉を聞き、徐々に剣に魔力を纏わせる。
手からグリップに、グリップから弾倉に、弾倉からロア、ロイを模した頭部に、そして刃部分に差し掛かると、ロア、ロイが激昂時に現れる毛の色、その蒼と茜が刃を彩っていく。さらには頭部の目が同色に輝く。
「ほう……」
「色が変わったのには俺も驚いたけど、凄くしっくりきた」
「進化した素材がお主の魔力に応えたか…」
ゆっくり確かめるようにヒュンと剣を振る。
そして徐々に速度を上げていき、最後にまたヒュンと一振。
「足りなかった物がやっと埋まった。そんな感覚になるくらい手に馴染む。凄いな、じっちゃん」
「うむ」
双方満足気に頷きあったあと、ドランが口にする。
「小僧、これを付けてみい」
そう言って乱暴に投げつけられたのは黒い手袋。
手首までは覆わず、手部分だけ覆う物だ。
「これ凄いな…付けてる感じが全くしないし、違和感もない」
「それだけではないぞ。これを使うための手袋じゃ」
そういって渡されたのは2発の弾。
「少し大きいのが、銀色の方、小さいのが黒い方じゃ」
それぞれ弾を込め、距離をとる。
まずは白銀のリボルバー型を構え、引き金を引く。
キィンと澄んだ甲高い音と共に、ブレて見える程、刃が超振動する。
だが、衝撃は来るが振動が手に伝わってこない。
続けて黒剣の引き金を引く。
こちらはガンと重々しい音と共に刃が振動するが、白銀剣程の振動はしないようだ。
「…………」
「お主に振動は伝わらんようになっとるはずじゃが、衝撃はどうにもならん。お主が上手いことなんとかせい」
「充分すぎるよ。俺ならこの衝撃を上手く逃がせるし、次の動作の起点にも出来る。本当に最高の剣だ!ありがとな!じっちゃん」
▽▽▽
「これから娘の元に向かうのか?」
「いや、まだ時間はあるしどこか邪魔にならないところでこの剣に慣れる訓練をするよ」
「そうか…まぁ何かあったらいつでも訪ねてくるがよい」
改めて礼を言い、フォルジュの街を後にする。
そしてその後は振砕石と呼ばれる、弾の素材になった石を見つけた荒野に戻り、ただひたすら剣を振り続けた。
未知の素材に進化した為、どのような特性を持っているかなども未知数。
それらを確かめるようにじっくりと剣と向き合い、新たな発見をし、そしてさらに発展させていく。
約半年の間そんな生活を荒野で送り、ミラと再開の約束をした2年が間近に迫ってきていた。
正確な日付を決めていた訳では無いが、丁度いい頃合だろうと思い立ち、ミラのいるアシュリットに向かうことにした。
(いよいよミラ様との再開ですね)
(あぁ。真っ先にお前らを紹介するよ)
(マスターの記憶の中のミラ様しか知らねぇから楽しみだ)
「よし!その前にこっそりアートランの魔力風呂に入ってその後アシュリットに行こうか!」
アートランの天然魔力風呂を堪能し、時空間でアシュリットの外れにある森に飛んできた。
すでにアシュリットは目前、ミラとの再開が楽しみだ。
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