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02話 二つの力

 カチャ、カチン……カチン……カチン……



「またそれで遊んでんのか?」



 不意なグレイの声に振り向きながら答える。



「うん、なんか落ち着くから」


「しかし“銃”なんて珍しい物、よく見つけたな。片方は見たこともねぇが……」



 アクセルの手には二丁の銃が握られていた。一つは銀色リボルバー型、そしてもう一つは黒いマガジン式の拳銃型。しかしマガジン部分は紛失し、リボルバー型よりかなり損傷が激しい。もはや朽ちかけているといってもいいだろう。



 この世界の銃といえばリボルバー型が一般であるが、すでに武器としての力は失われている。銃、弾の生産コストが莫大なことに加え、それを作れる職人が圧倒的に少なかった。さらに魔法が存在したことで存在意義すら薄くなっていく。



 そこで弾の代わりにあらかじめ魔法を込め、それを撃ち出す“魔銃”も開発されるが、本来撃ち出す魔法の威力の半分の威力も出せなかった。

 今では銃といえば魔銃を指し、魔法が使えない商人や貴族の自衛武器の一つとしてしか存在していない。

 さらには劣化も速く、威力もどんどん落ちていく。そうなった物は裕福層の子供のおもちゃにまでなっていた。



 アクセルが持っているのは以前、追っ手から逃れる道中で見つけた実弾タイプの銃だ。

 アクセルは度々、カチン、カチンと鳴らしてはぼんやり眺めるといったことをしていた。



「まあ気に入ってんなら、大事にしな。恐らくもう手に入らないからな」



 うん。と返事を返し、棚に仕舞い込んだ。



 そしてアクセルは思い出したかのようにネーラに質問する。



「そういえば先生、この黒いモヤって何だ?」



 先生と呼ばれたネーラは首を傾げる。



「モヤ?」


「うん、先生の近くにあるやつ」



 そう言われ、ネーラは周りを見るが何も見えない。

 もしやアクセルの中にある力の一部が漏れ出しているのかもしれないと思い、再び尋ねる。



「それは嫌な感じはする?」


「ん〜、しない……かな」



 一先ずは安心といったところだが、思い当たるものがない。しばらく考え、再び尋ねる。



「それは今初めて見えたの?」


「ん〜ん、違う。初めは魔法の訓練を始めたころ。あの時は時々見えるくらいだったけど、今は見たい時に見えるよ」



 ますます謎が深まるネーラに対し、グレイが口を開く。



「それ、触れんのか」


「ダメ!!」



 即座にネーラが待ったをかける。



「今度、しっかり備えてから調べましょう。それまで何もしちゃダメよ」


「わかった」



 そういうと、すぐにネーラは準備にとりかかった。

 場所は開けた所を設定し、そこに自身が作り出した魔道具や、魔法陣を加えて、思いつく限りの対策を施していく。



 そして約二日かけ準備し、検証当日となった。



「いい?アクセル、絶対に無茶はしない事、言うことを聞くこと!約束出来る?」


「うん、わかった」



 そう返事をするアクセルも少し緊張しているようだ。ネーラのとなりにいるグレイもまた緊張している。



「じゃあ、まずは黒いモヤ、今見える?」


「移動はさせれる?」



 様々な検証をし、ついに触れてみることになった。



「ゆっくりね。何かあればすぐ私の所に戻ってきて」



 その言葉に頷き、アクセルは黒いモヤにゆっくりと近づき、手を伸ばす。

 そして意を決し、触れた瞬間……飲み込まれる様な感覚と共にアクセルの視界が一瞬にしてかわる。



「きゃっ」



 ネーラはアクセルが一瞬消えたことに驚く間も無く、衝撃に襲われた。



 アクセルが自分にぶつかり、抱きついていたのだ。

 そしてアクセルがネーラを見上げながら呟く



「なんか目が回る…………あと身体に力が入らない」



 すぐに身体を調べてみるが外傷などは特にない。恐らく魔力の消費で疲れたのだろうと判断し家に戻った三人。



 アクセルを横にし休ませたあと、アクセルが眠ったのを確認し、自分達もホッと胸をなでおろした。



「それで例の力だと思うか?」


「いいえ、違うわね。恐らくだけど、時空間魔法の一種だと思う」


「時空間!?そ、それで一体どんな魔法なんだ」


「分かるわけないでしょ!?そもそも時空間魔法なんて使える人、一人しか知らないんだから!」



 時空間魔法とは先天性のもので、人により種類も異なる。さらに使える者が極端に少なく、解明は全くといっていい程進んでいない力なのである。



 さらに後天的に使えるようになった事例も今まで一度もない。

 魔法と定義出来るかどうかも定かではないのだ。

 ただ分かっているのは、時間や空間に作用する力であるということだけ。



「ま、まぁ、それもそうか……」


「本当に不思議な子……」



 それからも、時折検証を行い、ついにどのような力か特定出来た。



「おそらくではあるんだけど、魔力を使って、空間と空間を繋ぐ力ね。」


「魔力は使うのに魔法ではないんだな」


「断言出来ないだけよ。それに魔力を使って不思議なことをする魔物や生物は沢山いるでしょ?」


「それもそうか」



 そして最後にこう締めくくる。



「いい?アクセル。これはあなたの力でもあるし、あなただけの力でもある。だから、あなたの思うように使いなさい」


「うん、分かった!ありがとう」



 アクセルはこの言葉がとても嬉しかった。自分のなかにある破壊の力、それとは別のもう一つの力。

 力とは抑えつけるものだとばかり思っていた。しかし使っても良いと言ってくれたネーラの言葉がアクセルの心を少しだけ軽くしてくれていたのだった。

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