45話 ゲンマドラコ
ショックッションの羽毛と大きな羽根を2枚手に入れ、次に目指すのは南の山を縄張りにしているゲンマドラコ。
ショックッションの元を去ろうとした時、名残り惜しそうにピヨピヨ鳴きながらアクセルに抱きつくショックッションをなんとか宥め、その場を後にした。
その後、1度フォルジュの街の近くに時空間で戻り、南の山を目指す。
のんびり目的地に向かっているとロアが話しかけてきた。
(マスター、次は魔物が居ない時を見計らっていけば楽なのでは?)
(うーん、たしかにそうなんだけどな。多分無理そうだな)
(どういうことです?)
(あの鳥はさ、自分の抜けた羽根にそこまで関心がなかった。だから他の奴もそれなりに手に入れることが出来て市場に出てるわけだ)
(次の魔物は違うのですか?)
(まぁ多分だけどな。ギルドの資料にもほとんど情報がなかったし、現物もない。となれば縄張りに侵入するものは有無を言わさず襲ってるか、縄張りにある物を奪われることすら嫌っているかだと思うんだ)
(なるほど…黙って持ち去れば怒りの矛先が人に向いて、近隣の街や村が危険だと…)
(そうだな。他の魔物や動物がその粉を奪うことがなければそうなるな。暴れてるなんて情報もなかったから人以外は奪ってないと思うし。まぁこれは感だけどな)
(となれば今回はますます私達の出番はないですね)
(そうだな。そういうわけだからその時はゆっくり休んでてくれ)
今回も出番がないロアとロイの為、遊びながら目的地に向かった為、数日かかったがゲンマドラコがいるという場所までたどり着いた。
そこは1面、先が鋭く尖った岩が地面から何本も伸びている。
そしてしばらく進むと遠目で見ても一際存在感を放つ岩があった。
それは意図的に削られた様な形をしており、鋭く削られた部分は輝きを放っている。
そしてその根元には陽の光に反射してキラキラと輝く粉が積もっていた。
「あれは鉄か?……いや、違うな…なんだろう」
近くで見てみたいが恐らくゲンマドラコの縄張りに踏み込んでしまう。
その場で悩んでいると僅かだが地面が揺れだした。
「おいおい、また大きいやつか?…まぁあの岩に擦り付けてるなら大きいか……」
遠目に見える根元に粉が積もった岩も目測で5mほどはあるだろうか。
その上部に擦り付けているのだとしたらかなりの巨体だ。
そして地響きを立てながら近づいてくるものを目で捉えた。
「うーん、二足歩行のトカゲか?いや地竜か?大きいな」
真っ先に目につくのはその大きな頭部。そして鋭い牙が並んだ口。
腕に当たる部分は小さく、逆に足は太く大きい。そして鋭い爪を備えている。
現代でいうティラノサウルスによく似ている。
しかしその背中には一際大きい紫の光を放つ水晶のような物が生えている。
その周りには同様の小さな水晶が、そして背骨から尻尾に沿ってそれらが並んでいる。
さらに尾の先には先程の水晶がまるでトゲの付いた鉄球のように生えている。
ゲンマドラコは輝く岩の前に立ち、アクセルを威嚇するように咆哮する。
「ゴアァァァァァァ!!!」
「やっぱり縄張りに入られるのが嫌いか…」
恐らく今いる所がゲンマドラコの縄張りとの境界。
これ以上踏み込めば、間違いなく襲ってくるだろう。
まだお互い距離はあるが目でしっかりと確認している。
いつ襲われても不思議ではない。
だがアクセルはその場に腰をおろし、座り込んだ。
それを見たゲンマドラコは大きな口を開け、アクセルに迫ってくる。
そしてすぐ近くにくると大きな口を開け、怒りの咆哮を上げた。
「ゴアァァァァァァ!!!」
「お前には何もしない。気に入らないならここから動かないよ…」
静寂に包まれながらお互い目を見て対峙する。
少しするとゲンマドラコはその身を翻し、輝く岩の元に戻っていった。
そして背中の水晶らしき物をゴリゴリ音を立てながら削っている。
その後、満足したのか近くにある泉に移動し、水面に映る自身の姿を見て満足気に体を揺らしている。
そしてその場から姿を消した。
「ハハ、身だしなみに気を使うのか。俺も見習わないとな」
その後、数日間近づくことはせず、ただその場に居座り続けた。
その間も毎日ゲンマドラコは現れ、削っては帰りを繰り返していたが、アクセルのことも気にはなるようで合間に何度も視線を向けていた。
ゲンマドラコがいない間は本を読んだり、持っている石を磨きながらゲンマドラコが自ら近付いてくるのを待った。
そして辛抱の甲斐あって、その日姿を見せたゲンマドラコは真っ先にアクセルの元にやってきた。
そしてグルルと喉を鳴らしながらアクセルの前に並べられた磨かれた石を見つめている。
「どうだ?綺麗だろ?お前の背中も磨いてやろうか?」
その問いにゲンマドラコも視線をアクセルに移した後、尾で地面を軽く叩いた。
「じゃあ先に尻尾からやるか」
そういって布を片手に移動し磨き始める。
磨き終わり満足しているのかゲンマドラコは尾に乗ったままのアクセルを背中に誘導し、ゴアゴアと鳴いている。
「よーし!じゃピカピカにしてやる。だからあの粉ちょっと分けてくれ」
そして丹念に磨き上げ、ゲンマドラコの背の上で一息ついていると、ゲンマドラコは輝く岩に向かって移動を始めた。
そしてすぐ側にくるとゴアっと鳴いたあと、背のアクセルに顔を向ける。
「ありがとな。じゃあ少し貰っていくぞ」
背から飛び降り粉を集める最中、輝く岩も観察してみる。
「これ……もしかして金剛石か?でもこんな色見たことないな…」
遠目で見ると鉄ような輝きを見せていた岩は、削りられた箇所は薄い黒の輝きを放っていた。
「黒い金剛石の原石ってことか?…」
そんなことを考えながらも粉を集めていく。
そんな中、粉に埋もれた親指の先程の大きさの黒い金剛石の欠片を見つけた。
それを陽にかざして見てみる。
「凄く綺麗だな…なんとなくミラっぽい…なぁ、これも貰っていいか?」
「ゴア!」
泉で輝きを増した自身の背の水晶に見とれているゲンマドラコに声をかけるが興味無さそうだ。
こうしてまたも大量の素材と黒い金剛石を手に入れた。
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