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41話 試作品

「ここがそうか…」


あれからしばらく旅を続け、いくつかの村や街を経由した。

最後に立ち寄った村の先には荒野しかないから、引き返せと言われたが、同時に気になることも言っていた。


その荒野には恐ろしい何かが潜む洞窟があるとのことだ。


そして現在、その洞窟と思われる入口の前に立っている。


「何か匂いとあるか?」


(全くないですね)


(うん、ここ暫く生き物は入ってないと思う)


「そうか。特に何もなさそうだけどな…ここしか洞窟って見つけれなかったし、間違ってはないと思うんだけど…」


とりあえず入ってみないことには分からない。


そう意気込み、洞窟に足を踏み入れた。


しかし、足を一歩踏み入れたアクセルは突如、洞窟入口の遥か後方に飛び退いた。


(………)


アクセルとロア、ロイはある程度の感覚も共有している。

しかし先程感じた違和感の正体が分からず、皆で黙り込んでしまった。


再び洞窟の入口に立つ。


腕を組み、首を傾げながら考えた末、外と洞窟の境の地面を指で叩いてみた。


「これは…振動…か?」


よく観察してみる洞窟に入ったすぐ側に僅かだが震えている石を見つけた。


もう一度指で地面を叩くと確かにあの石から振動が伝わってくる。


「音とか衝撃に反応して振動してるのか…」


これが村の人が言っていた恐ろしい何かの正体で間違いないだろう。


「ま、突然こんな振動が伝われば怖くなるのも分かるな」


(引き返しますか?)


「うーん、もうちょっとだけ中覗いていいか?」


こうして中に入っていくアクセルだが、ロア達は歩くたびに振動が伝わってくるのが嫌なのか外に出てこない。


(強い振動はないけど、長い時間いると気分は悪くなりそうだな…)


そんなことを思いながらしばらく進むと突然だだっ広い空間が目に入った。


近くまで行くと今まで土や砂利だった地面がその空間だけ砂に変わっているのが分かる。


そしてその空間の中央には、半分砂に埋まった振動する石と思われる石がある。が、両拳を合わせたほどの大きさだ。


それが直感で危険だと分かった。


(もしかしてこの空間、あの石の振動で出来たのか…)


よく見るとこの空間はあの大きな振動する石を中心に円形に広がっている。


壁や天井、地面までも砕く振動。踏み込むのは危険すぎる。


試しに小石を拾い投げ込んでみる。


(………何もないな)


予想では強い振動がくると思っていたが、その予想は外れてしまった。


(この砂が振動を吸収してるのか?)


そう思い、踏み出そうとしたが、念の為、魔結晶をチュチュ袋にしまい、その場に置いてから砂を踏んでみた。


そして思った通り、アクセルが歩く度に振動する石の周りの砂が飛び跳ねているが、振動は伝わってこない。


(これは危険すぎるな…このまま放っておくのも、いつかここが崩れそうで怖いしな)


大きな石の前で胡座をかき、腕を組んで考えてみる。


(まず直接触れない。外に持ち出せない。持ち出したらそこらじゅう砂にしちまう。……厄介だな…)


そして閃いた。


チュチュ袋を取りに戻り、布を取り出す。

その布で周囲にある砂を包み、砂袋を作った後、振動する石の上に乗せた。


その袋の上から石を出来る限り衝撃を与えないように触ってみる。


(触れるな。よし!)


新しい砂袋を作った後、砂袋越しに石を掴んで新しい砂袋にゆっくりと入れた。


さらに石の入った砂袋をまた新しい砂袋に入れ、二重にしてチュチュ袋にしまいこんだ。


(ふぅ…これはこのまま封印だな)


そう思ったのも束の間、思い出してしまった。考えついてしまった。


以前見つけた、力を収束させる石。


衝撃を与えれば無限に振動を生み出す石、そしてそれを収束させる石。


組み合わせることが出来れば、面白いのではないかと。


アートランにいる時、とある依頼でドワーフの集落を訪れる機会があった。


その時に鍛治、特に装飾品に関する技術をアクセルは教えてもらっていたのだ。


ドワーフ達はアクセルの自然や石に対する考え方が気に入った為といっていた。


(ここの砂を上手く使えば加工もできる。俺が使うことが出来れば危険なだけの石でもなくなる。よーーーし!)


その後数日この空間に引きこもり、魔法の金槌を振るい続けた。


そして失敗を重ねながらもなんとか試作品の’弾丸’を完成させた。

その弾丸はアクセルの持つ剣の銃部分に装填出来る大きさにしてある。


弾丸を砂の上に置き、普通の金槌で叩いてみる。


「よし!力の方向はちゃんと決まってるな。あとは思った通りにいくかだけど…さすがに試すのは怖いな」


アクセルが考えついたのはこの振動の力を刃に伝え、高速で震える刃で硬い敵に対抗しようとしたのだ。


人型魔獣との戦闘で思い知った、硬い敵への対策だ。


剣に魔力を纏うこともしているが、あれは切れ味を良くする為でなく、汚れや刃こぼれを防ぐ為の意味合いが強い。


魔法が使えないアクセルにとって剣が通じない相手への対策は必須だったのだ。


「試して剣が折れたとか冗談にもならないな。じっちゃんに相談するか」


そうと決まればグズグズしてられない。


時空間魔法を使いじっちゃんこと、ドランのいる街、フォルジュの外れに降り立った。

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