39話 ★6冒険者
ガラットの姫達と揉めその場を去ったアクセルは街を出て、ロア達と出会った森に来ていた。
(本当に下らない人間達です!)
(俺も噛み殺してやろうかと思ったぞ)
ロアとロイもかなり苛立っているようだ。
(お前達には嫌なところ見せちゃったな…ホントに人間なんて下らないな…)
アクセルも人間の醜い部分を目の当たりにし、落ち込んでいるようだ。
(でも騒ぎを大きくしたのは俺だ。だけど見過ごすことはしたくなかった。だから後悔も反省もしてない。…こんな俺でも付いて来てくれるか?)
(当然です)(もちろん)
(…ありがとな)
こうしてこの日は森で過ごした。
そして翌日ギルドを訪れた。
扉を開くとすぐアリーに呼び止められギルド長室に通される。
そしてそこにはギルド長とアートランの領主もいた。
「アンタもいるってことは結構な騒ぎになってるみたいだな」
領主とは魔物雪崩の一件の時に少し話をした程度だ。
そしてよく見ると領主の髪が少し乱れている。夜通し話し合っていたのだろう。
「ちょうど良かった。丁度その騒ぎについて話し合っていたところだよ。まぁ座りたまえ」
そう促され席に着く。
「ガラット国の姫を守る騎士達と揉め事があったと報告を受けている。君のことで間違いはないかね?」
「あぁ」
ギルド長の隣に座っているアリーは頭を抱えている。
「アンタらに迷惑をかけることになったことは謝る。済まない」
そう言って頭を下げるアクセル。そして頭を上げ、さらに続ける。
「だけど反省も後悔もしていない。悪い事をしたとも思っていない。」
「アクセル君!!!」
バンっと机を叩き立ち上がるアリー。
アリーに視線をやり、その後領主に視線を戻す。
「だから俺はここを出ていくよ…俺を探しにきたら情報も全て伝えて良いし、冒険者の資格も取り上げてもらっても良い…でも今捕まえる気なら俺は逃げるぞ」
「……」
静まり返るギルド長室。
そしてその沈黙を領主が破る。
「では今回の判決を言い渡す!姫を襲った賊は逃亡。その後、冒険者アクセルにより捕縛された後、賊は領民を救ったことも考慮し、街からの追放処分とする。そして捕縛した冒険者にはその功績を認め、昇格するものとする」
「は?何言って……」
「ではギルド長、後は頼む」
「はい。心得ました」
ポカンと口を開けたまま呆気にとられるアクセル。
「お、お待ちください。本当によろしいのですか?下手をすれば領主様にも責任が追求され、地位剥奪も有り得ます」
呆気にとられているアクセルにかわりアリーが異議を述べる。
「問題ない。それに私は直接、賊を見ていないのでね」
微笑みながら領主が答えた。
「待てよ!俺はどのみちここを出るつもりだったんだ!それが少し早くなっただけだ。だからそこまでする必要はないだろ」
「ふむ、残ってはくれないのか…しかし私の答えは変わらんよ。変わるとすれば★6冒険者アクセルは新天地を目指しアートランを旅立ったと報告する。くらいのものか…」
「………」
申し訳なさか、領主の気持ちが嬉しかったのか、安心からか、アクセルの頬を涙が伝う。
「ありがとう」
▽▽▽
「ホントに行っちゃうの?」
「あぁ、さっきも言ったけど長くてもあと1年でここを出るつもりだった。それが少し早くなっただけだ」
「寂しくなるねぇ…」
あの話し合いのあとすぐにアクセルは旅立つ準備をはじめ、アリーとモーラが見送りに来てくれている。
「まぁまた仲間と戻ってくるかもな。迷惑じゃなかったらだけど」
「アンタも仲間もタダで泊めてやるから、かならず帰ってくるんだよ?」
「ハハ、約束は出来ないな。おばちゃん、今まで世話になった。ありがとう。それとアリー、色々と助かったよ。アリーがいなかったらこんなに楽しく過ごせなかった。ありがとな」
素直に心からの気持ちを二人に伝え、手を握りあった。
「じゃいってくる!!」
こうして二人に見送られアートランを出たアクセル。
その別れ際、アリーが押し付けるようにある物を渡してきた。
アリーは段々と小さくなっていくアクセルの背中を眺めながら呟く。
「……絶対帰ってきてね」
▽▽▽
「さぁ、どこに行こうか…とりあえず南の湖の方だな。ミラとの約束までまだ一年あるし、のんびり旅しながらアシュリットに向かうか」
(私も少し楽しみです)
(俺も、俺も)
「ハハ、じゃあ、いっぱい寄り道しなくちゃな!まだまだ見たことないものいっぱいあるから楽しみしてろよ」
こうしてとりあえずの目的地を南に定め、再び旅に出た。
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