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37話 試み

現在、魔物雪崩から一月が経ち、街もほとんど元通りといって良い程に復旧を果たした。


そしてこの一月の間、アクセルは魔結晶を作成した翌日に、薬草採取の依頼を受け、そのまま街の南の湖まで独自での調査を行った。


湖まで普通であれば三、四日かかるところをアクセルはロイに騎乗し爆走。日暮れ前に到着し、そのまま調査を行った後、時空間で街の外れに飛び、日帰りでの帰還を果たした。


だが調査の結果は芳しくなく、魔力は濃いものの、魔物雪崩に直接繋がる原因を特定することは出来なかった。


そして数日の後、コリンとアネッサから新たな依頼のため、別の街に旅立つことを伝えられ、お別れ会を開いた。


その後、コリンには特に念入りに秘密を守ることを約束させ、そして事後処理の為、働き詰めだったアリーも誘い、天然の魔力風呂を四人で堪能した。


しかしコリンもアネッサも天然魔力風呂に後ろ髪をひかれ、ここに残りたいと子供の様にただを捏ねていたが、その後渋々旅立っていった。


その後もバジリーペントのいた湿原の立ち入り禁止区域を定めるためギルドへの協力、魔結晶を首から下げる為の加工、ドランに会いに行き剣の手入れを依頼、その様子を観察し鍛治の技術を盗むなど、比較的忙しい日々を送っていた。


そして訪れた穏やかな時間。


午前中はギルドから訓練用として保管していた古い武器などを譲り受け、鍛治の勉強をし、午後は自身の鍛錬に時間を当てた。


今現在、アクセルは鍛錬の為、周囲に何も無い岩山にきていた。

そしてその手に持つ剣の刃には、魔物雪崩の時に見せたものより鋭利になった魔力が纏われている。


(さすがです!マスター。数日でここまで形にできるとは)


以前より考えとしては持っていた、魔力を武器に纏うことを練習していた。


そしてロアやロイを使役するようになり、自身でも驚くほど上達していたのだ。


(やっぱり教えて貰えると覚えも早いな)


以前は剣を炎の様にユラユラと纏っていた魔力も、現在は刃を覆う様に刃が形成されるまでになっている。


(だけどなんかしっくりこないんだよなぁ…)


(マスターならいずれ完璧にものに出来ます)


ロアは随分とアクセルのことを慕っている。

直接足の治療を受けたことが関係しているのだろうか。


ロイもそれに違わずアクセルとよく追いかけっこをしながら楽しそうにしている。


ロアもロイも天狼と呼ばれる存在ではあるが、アクセルにとっては心を許せる仲間に他ならないのだ。


そんなある日、岩山で鍛錬を続けるアクセルにロアが語りかけてくる。


(マスター、すこし良いですか?)


(ん?どうした?)


(少し試したいことがあります)


(おぅ!好きにしていいぞ。何するんだ?)


(それは見て頂いたほうが早いかと。ほらロイも)


(俺あんまり好きじゃないぞ)


ロイは少し嫌がっているようだが、どうやら揃って何かするようだ。


(ではいきます)


そういうと魔結晶から光が溢れ出しロアとロイが……


「うぉ!!人じゃねぇか!!」


そこには10歳程の少女と少年が立っていた。


少女は毛並みと同じ色の髪色をし、目は澄んだ海のような蒼。しかし頭部には狼姿の時と同じ耳がぴょこんと生えている。そしてフワフワの尻尾がユラユラと揺れている。


少年も同様だが耳は後方を向き、尻尾も下がっている。


「どうでしょうか?」


「驚いたよ…その姿だと言葉も喋りやすいか?」


「そうですね。ですがいずれは元の姿でもしっかり喋れるようにしておこうと思っています」


「そうか。ロイはやっぱり人の姿は苦手か?」


「う、うん。この姿だと普段の力が出せないから怖い」


そういうとロイの体を光が包み、狼の姿に戻ってしまった。


「ははは、そうか。無理はしなくていいからな。耳と尻尾はそのままなんだな」


「すみません。もう少し時間を頂ければ人間と変わらない姿になれると思いますが…」


「言ったろ?謝る必要なんかないさ。無理もしなくていい。耳と尻尾くらいなら獣人って言えば他のやつらは納得するだろうしな。だけど、裸はさすがに不味いな…」


現在ロアは丸裸なのだ。


「それならば問題ありません」


そういうとロアの体に光が集まり、服になった。


「おぉ!なんでも出来るんだな」


ロアは紺色の襟の付いたワンピースに白の薄いカーディガンを羽織って、黒光りする靴を履いてる。まさに貴族令嬢のようだ。


「街で見かけた物を参考に魔力で形取ってみました」


「コリン達が居なくて良かったな…」


その後、話し合いアリーに見てもらうことになった。

服装が豪華すぎるため問題になるかもしれないと思ったからだ。


▽▽▽



「きゃーーーー!!可愛いーーー!ホントにロアちゃんだよね?可愛いーーーー」


アリーに抱きつかれ頬ずりされながら、ロアはアクセルに助けを求めるような目で見つめてくる。


(マ、マスター…)


(まぁ悪意はないと思うからがまんしてやってくれ…)


アクセルも顔を歪めながら心の中で呟く。


その後、やはり豪華すぎるため普段使いには向かないとの指摘を受け、モーラの娘を参考にすることにした。

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