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36話 天狼

「はぁ…モフモフ…サラッサラ、たまんない…」


「コリン、あまりしつこくすると可哀想だろう…」


ロアを撫で回しているコリンにアネッサが言うが、本人もソワソワが隠しきれていない。


(ロア、平気か?)


(大丈夫です)


ロアとロイを目の当たりにし、しばらく固まったままの三人だったが、急にコリンの目の色が変わり現在に至っている。

ロイはコリンの異変を即座に感じ取り、アクセルの中に逃げ帰っていた。


少しするとアリーが戻ってきた。


「お待たせ」


アリーはそういうと持っていた物を机の上に置く。


それは丸い水晶に台座が付いている魔水晶と呼ばれる物だ。


「これでその魔結晶ってやつをつくるのか…」


「そうだよ。魔物使いには必須だね」


魔物や動物を使役する者を総じて魔物使いと呼ぶ。


魔物使いには二種類あり、魔物や動物をそのまま連れ歩く者、そしてアクセルの様に自身と一つになり呼び出すことが出来る者の二種類だ。


中には例外的な者も存在するが、どちらもそれなりに数が多く一般的な職業の一つだ。


アクセルと唯一違うのは使役する魔物だ。


現在確認されている使役された魔物は最高でも★6に分類される魔物だ。


ルプレックスは★7に分類され、更には★7の魔物が使役されたのは近年では確認されていない。


「この水晶に魔力を流せば良いんだよな?」


「そうだね。魔結晶が出来る様子は必見だよ?」


「魔結晶がこいつらの家になるわけか…豪邸にしてあげないとな」


そう言いながら、魔水晶に手をかざそうと近付けた瞬間、魔水晶が眩い光を発し、点滅し始めた。


それを見たアクセルは咄嗟に手を引く。


「な、なぁ…これ大丈夫か?」


「うーん、まっ、大丈夫でしょ」


アリーの言葉を信じ、再び手をかざす。


そして予想した通り、水晶は砕けてしまった。


「大丈夫じゃなかったな…悪い…」


「うそ…今まで割れたことなんかなかったのに…」


部屋の隅でロアを撫で回しているコリンとアネッサも驚いていたがその手は止まらない。


「よし!次はもっと凄いの持ってくるからちょっと待ってて」


そういうと一度部屋を出て戻ってきたアリーは数倍大きな水晶を持ってきた。


「これならきっと大丈夫。これはこの地に伝わる勇者が使ったって言われる物だからね!」


「不安しかないな…」


そう言いながらも再び手をかざすアクセルは若干遠慮気味だ。

しかし点滅はしていない。


それを確認したアクセルは一気に魔力を流し込んでいく。


すると水晶から光の粒が溢れ出し、水晶の上部に集まっていく。


そして次第にそれは6面の角柱となり伸びいき、10cm程まで大きくなると光が収まった。


落ちてくるそれを受け止め、見てみる。


透明なガラスの様に透き通り、その内部には琥珀色の気泡の様なものがゆっくりと中心に向かって渦を巻いている。


「う、うそ…」 「うわー大っきい」「これは…」


「大きいのかこれ?」


「普通は親指の爪くらいにしかならないよ!」


アリーの言う通りこの大きさの魔結晶はまさに規格外の大きさだ。


「そうなのか…これをどうしたらいいんだ?」


「常に身につけておけば大丈夫だよ…」


「分かった」


アクセルの様に魔物と一つになった状態が長く続くとそれぞれの魔力が反発し合い、最終的には魔物使い本人か魔物、どちらかが力尽きてしまう。


それを回避するため、魔物使い本人の魔力で作られた魔結晶に魔物はその身を移すのだ。


そしてロイを一度呼び出し、ロアと共に魔結晶に帰す。


(お前達、どうだ?)


(とっても広くて快適です)(凄い)


満足してくれたようだ。


「ホントに君には脅かされっぱなしだよ…」


「へへへ」


笑って誤魔化すアクセルだったが、アリーにある質問をされた。


「そういえば、魔物雪崩が落ち着いたあと、青と赤の光る何かを見たって報告を受けたんだけど、何か知らないかな?」


「うん?…多分こいつらのことじゃないかな?」


やっぱりかと顔に手を当て、深い溜め息をこぼすアリー。


「なんとなくそんな気はしてたけど…いい?アクセル君…」


魔物には上位変異種と呼ばれる者が存在する。それは条件を満たすことでそう呼ばれるようになる者や、突然変異からそう呼ばれる者、多種多少なのだが、総じて上位変異種と呼ばれている。


またその上位変異種の魔物には特別な名が付けられているとアリーが説明してくれた。


「君が見つけたバジリーペントは、そのものがリーペントの上位変異種で別名を王蛇。そしてルプレックスの上位変異種には天狼っていう別名が付けられてるの」


「へぇ…こいつらがその天狼ってやつなのか?」


「アクセル君、文字の勉強をする時に読んだおとぎ話おぼえてる?」


「あー、なんだっけ?たしか金色に光る狼が出てきたな」


「そう。それが天狼。天狼と呼ばれる条件は鮮やかな色の魔力を纏うってことらしいの。私も資料でしか見たことはないんだけどね」


「ふーん、確かに魔力を纏ってたな。でもなにか問題なのか?」


「当たり前でしょ。バジリーペントと並んで、伝説の生き物だよ?それを使役したアクセル君を世界中の人がほっとくわけないでしょ」


「うーん、バレなきゃ問題ないだろ。俺は時空間魔法のこともあるし、どうにかされるつもりもない。それにロアやロイもあんまり人前には出たくないみたいだし」


「とにかくルプレックスの存在は大勢の人が見てるからまだ良いとしても、天狼であることは隠した方がいいよ!」


「わかった!色々迷惑かけてすまないな。」


ロアとロイ、双方が天狼と呼ばれるルプレックスの上位変異種だということが判明した。

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