30話 初の合同依頼
「おぉーーい、アクセル君」
「なんだ?」
「良かったら僕達と一緒に…」「断る」
「あんたで9人目だ。悪いけど誰かと組むつもりはないんだ」
「そうか。残念だ。」
あれから数日経った今でもアクセルの試験に関わった者達がアクセルを勧誘しようと声を掛けてきていたが、その全てを断っていた。
(やっぱり面倒事増えそうだな…)
少し後悔しているが、今日はギルド総出でアクセルの上級探索者資格獲得を祝ってくれるようだ。
出来るだけ面倒事は避けようと心に誓い、ギルドを訪ねた。
そこには他の冒険者も数多くおり、モーラもいる。
そして称賛の嵐のあとギルド長が掲示板の前に立った。
「おっほん!アクセル君。アートランで初めての上級資格獲得おめでとう。そして本日より君を★2冒険者とすることをギルド長の権限をもって宣言する」
拍手が鳴り響いたあと、宴が始まった。
真っ先にアクセルの元に駆けつけたのはモーラとアリーだ。
二人とも自分のことのように喜んでくれている。
(こんな風にされるの初めてだな…)
そんな事を考えながら宴を楽しんだ。
そして翌日ギルド長に呼び出されている為、ギルドにきていた。
「朝早くから済まないね。来てくれてありがとう」
「あぁ、それで要件は?」
「単刀直入に言おう。ある依頼を受けて欲しい」
「…内容は?」
「とある場所の探索、可能であれば危険の有無、またその脅威度合いも知りたい」
そこは以前調べた際には何も無かったとのことだったが、最近、通りかかった者が悲鳴を聞いたとのことだ。
そしてその場所は近隣の街との中間に位置し、その両方から最も離れた場所だった。
その為双方しっかりとした管理が出来ていない為起きた出来事だ。
「先日おこなった探索者試験の運営の報酬として、上級探索者の資格を持つ冒険者がこの依頼に協力してくれることになっている。君にはその者達と協力してこの依頼を達成してほしい」
「…正直、一人の方が動きやすい」
「この依頼にはもう一つ思惑がある。君の昇格だ」
「うん?」
「★2の君一人で依頼を受けた場合、納得しない者もいる。そして上級探索者の資格を持つ君が★2に位置付けられていることにも同様だ」
「つまり、俺の実力を確かめる為と上級探索者に見合った分類分けの為ってことだな…」
「うむ」
ランク付けや昇格など、どうでもいいが依頼内容が探索ということでこの依頼を受けることにした。
「ありがとう。早速共に依頼を受ける冒険者を紹介しよう」
そして少し後、ギルド職員に連れられた二人の女性冒険者が部屋に入ってきた。
そしてアクセルの対面に座るとギルド長から紹介される。
「アクセル君、この二人が今回君と依頼を受けてくれる冒険者だ」
「初めまして。私はコリン、こっちは私とパーティーを組んでいるアネッサ。よろしくね」
「あぁ、アクセルだ。よろしく頼む」
ギルド長は部屋を出ていき、コリンと手を握り合った後、コリンが上級探索者の資格持ちであり、両方★5の冒険者であると説明してくれた。
すると今まで黙っていたアネッサが口を開く。
「少し良いだろうか?ギルドが認めた訳だから疑うわけではないが、君の力を見せてくれないか?君を信用するために」
共に行動をする際、相手を信じることが大事なのはアクセルも良く理解している。
「わかった」
そう言うとアクセルは掌の上に魔力でスプリットベアーを形取ってみせた。
「なっ!?」 「すごーい」
「俺はこんな風に魔力を操って周囲を見ている。他に影響が出ないくらい薄く伸ばしてるから、俺以外はこれに触れても気付かない。逆に俺は触れさえすれば自分の魔力だから理解できる。まぁ俺の魔力を水だと思ったら良い。拡げる範囲を桶として、その桶に入った水がどんな風に動いたかで判断してる」
かなり詳しく自らの手の内を晒してしまったが、分かったとしても対策出来ないため問題ない。
そして信頼を得るには相応のことをしないといけないと考えてのことだ。
「……はっ!すまない。あまりのことで自失してしまった」
「ホント凄いね!」
そして二人も自らのことを語ってくれた。
コリンは魔法を使い自身が見て、記憶したものを紙などに転写し、地図などを作成することができるとのことだ。
地形など瞬時に多数の者が分かるようになる為、上級探索者として大活躍だとか。
そしてアネッサはその護衛も兼ねている為、戦闘技術にはそこそこ自信があると言っていた。
そして顔合わせが終わったことをギルド長に報告し、後日、出発することとなった。
この日は二人とも「明日への光」に宿をとるそうなので、三人で共に宿に戻った。
「おばちゃーん」
「あいよー、おや、お客さんかい?」
「ギルドからこの宿を確保していると伺ったのだが」
「あぁ、聞いてるよ!あんた達かい。この子のお陰で凄いお風呂があるから楽しみにしときな」
そしてコリンとアネッサは風呂に入ったあと、この地に永住しようか真剣に悩んだ。