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29話 資格

魔力風呂完成から遅れること約十日。領主のおかげでモーラの宿も改築がおわり、「明日への光」と名を改めた。


人員の補充やら何やらも領主が手配してくれたそうで、モーラも今では大忙しで嬉しい悲鳴をあげている。


アクセルも勉強の傍ら改築や、宿の再始動を手伝っていた為ギルドには顔を出せていなかった。


それも落ち着き、今日は久しぶりにギルドに依頼を受けにきていた。


「あ!アクセル君」


「おはようアリー!」


「おはよう。今日はね、アクセル君にいい話があるの」


「いい話?」


「そうそう!資格試験、受けてみない?」


資格試験とはある種の技量を一定数持っていることを証明するもので、様々な種類がある。

そのなかでアリーがアクセルに勧めたのが探索者の資格。


下級、中級、上級とありアクセルなら上級は確実とアリーのお墨付きまで貰えた。


「上級探索者はギルドに登録してる人でも、そんなにいないくらい貴重なんだよね。リックさん覚えてる?あの人は中級探索者の資格を持ってるよ」


興奮気味に説明するアリーだったが、当のアクセルはあまり乗り気ではないようだ。


「それってさ、どんな役に立つんだ?」


「それはもう沢山だよ。個人宛に依頼がきたり、パーティーからは常に引っ張りだこだよ?あとは昇格にも有利だね」


「話を聞いた限りだと、いらないな」


この世の終わりのような顔をして固まるアリー。


「な、な、なんで?冒険者にとっては凄く便利だよ?」


「んー、別に金が欲しい訳じゃないし、名誉?とかそういうのも興味ないし、パーティーも別に組まないし…」


アクセルにとって冒険者とは世界を自由に回る為の手段でしかないのだ。

そこに資格などといった面倒事の種を加えてしまうと、動きづらくなるとアクセルは考えている。


「そもそもなんでアリーがそんなに残念そうなんだよ?アリーにも何か恩恵があるのか?」


「勿論、私には何もないよ?強いて言うなら気にかけている人がさらに活躍出来るようになるのが嬉しいってことかな」


確かにアリーはアクセルのことを出会った当初から気にかけてくれている。


「うーん……」


「じゃあこれならどうかな?アクセル君は昇格に興味ないって言ってたけど、世界には入るのが規制されてる場所もある。そんな所にも昇格すれば入れるし、ギルドカードを提示すれば商品が割引で買えたりする場所もあるよ?」


さらにアリーは付け加える。


「それに中級探索者のリックさんでも、あれくらいちやほやされるんだよ?上級になるもっとすごいよ?」


「それは全く必要ない。むしろ頭下げてでも構って欲しくないくらいだ」


これにはアリーも苦笑いだ。


「まぁ、そこまで言ってくれるなら受けみるよ。どうすればいいんだ?」


「本当?じゃあこっちで申し込みはしておくから。実は申し込みが今日まででギリギリだったんだよね」


「場所は別の街とかなのか?」


「違うよ。ここアートランであるんだ。当日は結構人が集まると思うよ?」


こうして資格取得のため試験を受けることになった。


▽▽▽


十日が過ぎ、試験当日となった。

アリーが言った通り、ここ数日にかけて、街には普段見かけない者達が増えた。


早朝からギルドの訓練場に集められた参加者達。


下級14名、中級10名、上級アクセル含む4名だ。


上級を受ける参加者のなかにリックの姿があり、明らかにアクセルを避けている。それを感じとったアクセルは無理に話し掛けることはせず、指示があるまでじっとしていた。


そして


「上級探索者の試験を受ける方は付いてきてください」


その言葉と共に移動を開始する。


しかしギルドを出て、街を出た瞬間、先導者が移動速度を跳ねあげた。


(見失わず付いてこいってことか…)


アクセルは軽々ついていくが既に一人は姿が見えず、脱落とのことだ。


「ここが試験を行う場所です。中の安全は★7の冒険者が確保していますのでご安心ください。すこし休憩を挟んだ後、試験を開始します」


案内されたのは魔力風呂のある岩山方面の中の洞窟なのだが、魔力風呂がある洞窟とは別の洞窟だ。


場所も離れているし魔力風呂が見つかることはないだろう。


息絶え絶えな他の参加者とは違い、アクセルは汗もかいていなかった。


するとリックが話かけてきた。


「君本当に駆け出しかい?」


「ギルドカードみるか?」


「ふん!精々無駄に足掻くといいさ。今回合格するのは僕だけだ」


それだけいうとリックは去っていった。


(…っ!励ましてくれたのか!)


どこまでも前向きなアクセルである。


休憩が終わり試験内容の説明と順番が発表された。


リック、もう一人の参加者、アクセルの順番だ。


そして試験内容はこの洞窟に潜む魔物に扮した冒険者を見つけるというもの。


単純明快だ。


参加者は順番がくるまで別の場所で待機の為、出てきた者に詳細を聞いたり、結果がわかったり出来ないようになっている。


そしてやっとアクセルの番がきた。


「ではアクセル君、試験を開始してください」


道案内と判定、そして不測の事態に備え冒険者が一人付き添うことになってる。


そして今日の試験の為に雇われたであろう冒険者に告げられ洞窟に足を踏み入れた。


そしてアクセルは即座に振り返り冒険者の男に告げる。


「あんたを入れて九人だな。俺説明が下手だから歩きながら近くなると教えるよ」


「まて、まて、何故私も数に入れている。私は判定するための係だぞ?」


「懐に短剣を隠してるのは分かってるよ。最後にでも襲うつもりだろ?」


「………」


何も言わない判定係を一先ずおいておき、躊躇なく洞窟を進み、見事に隠れた冒険者たちを見つけて行く。


八人を見つけたあと、判定係の者が襲いかかる素振りをほんの少し見せた瞬間、アクセルに腕を捕まれ観念した。


一瞬で終わった。


そして洞窟をでて即座に合否が言い渡される。


「★1冒険者アクセル…★1!?……上級探索者の試験を文句無しの合格とする」

書き溜め最後です。突然の大量投下すいません。


よろしければ評価、感想等よろしくお願いします。

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[良い点] カタルシス、感じる [一言] 試験官のモノローグ見たい、どんな気持ちで試験したんだろ
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