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28話 暗闇を照らす光

三人で話をした翌朝、早朝からアクセルは作業を開始した。


掘削するための道具はアリーに頼みギルドの物を借りられる手筈となっている。

しかしまだ道具は必要ない。


まずは場所の整理からだ。


場所はそれなりに広い。ベットに使われている大きな布などを干したりするため、ほぼ真四角の25㎡ほどだろうか。


まずは置いてある物を一箇所纏めておく。これはモーラがあとでどうにかしてくれるはずだ。


そして魔力が流れくる位置を確認し、目印を置いたあと地面に線を引き縁どりをし、風呂の範囲を定めた。


(前のは傾きがなくて水が流れていかなくて失敗したからな、ちゃんとそのへんも考えないと)


勿論計算など出来ないアクセルは全てを感覚で行なっていく。


アクセルが思い描いているのはこの空間全てを使った野天風呂だ。


そしてまずは地面を均していく。

その作業が終わる頃、アリーが複数の職員と共に道具を持ってきてくれた。


一先ず作業を中断し、買い出しの為、街に繰り出した。


「どう?順調?」


「そんなすぐに出来るわけないだろ?まだ風呂の形決めた位だよ」


アリーも未来の魔力風呂を想像してかとても楽しそうだ。


「本当に金使っていいのか?」


「うん、ちゃんとギルド長の承認も得たし、問題ないよ」


ギルドが代わりに出してくれるそうだ。

それを聞くとアクセルは建材屋に赴き、岩や石を買っていく。


長年、石を集めていただけあって質の良いものばかり選ぶアクセル。店の者は涙を流していたが、それにアクセルが気付くことはなかった。


買い出しを終え、作業を再開する。


ギルドの道具を使い掘り進めたあと、買ってきた岩を並べていく。


そして試しに浴槽に入り具合を確かめた後、岩や石を全て取り除いて魔力風呂の命であるお湯の噴出口を掘り始めた。


しかし、すぐにモーラに止められ渋々この日は終了となった。


そして数日をかけ仮ではあるが何とか形に出来た。


「おばちゃーん」


「あいよー、すぐ行くよ」


モーラを呼び、仮ではあるが完成を伝える。


「今からお湯貯めるから、説明するぞ」


「たった数日でこんな立派な物が出来上がるとは驚きだねぇ」


「へへへ、頑張ったからな。じゃあ説明するぞ。ここに栓があるだろ?これを捻って引き抜くと抜けるから……」


こうして一通り説明したあと、お湯が貯まるの待つ。


「これ泥が混ざったりしないのかい?」


「大丈夫。ちゃんと固めてあるから」


風呂を縁取る岩や浴槽部分にはアクセルが独自に開発した液体を使いしっかり固めている。

これは旅の途中で見つけた魔力を弾くスライムの吐く液体と、トリモチのような液を分泌する植物から採取したものとを組み合わせた物だ。


これだけでも商品に出来そうだが、後にその提案をギルドからされたアクセルは即座に断った。


お湯もある程度貯まって漏れがないことを確認したあと、噴出口に栓をして、浴槽の最奥に排出するために作った栓を外し、問題なく排水したことを確認すると、排出先を確認するため宿をでた。


そして問題なく街の下水と合流したことを確認し、再び宿に戻る。


「ただいま。問題ないみたいだな」


「そうかい、そりゃ何よりだ」


「おばちゃんも良かったな。領主ってやつが宿を建て直してくれるんだろ?」


「本当に全部アンタのおかげさ。アンタはこれからずっとタダで良いからね」


こんな会話をしつつ、この日は作業を終えた。


翌朝、朝から再びお湯を貯め始める。


(夜、見に来て正解だったな…暗すぎて見えん)


松明では光量が心許無いため、あることをアクセルは思い付いていた。


「おばちゃん、ちょっと出かけてくる。お風呂は頼むな。それから今日は帰らないかもしれないから」


心配するモーラに大丈夫と伝え、街をでた。


そして人目がないことを確認し、とある場所に時空間魔法で飛んできた。


「やっぱりここは綺麗だなぁ…」


アクセルが来たのは陽光石を見つけた洞窟だ。


僅かに差し込む光を溜め込み辺り一面、陽光石の光で輝いている。


そしてこの陽光石は様々な色の光がある。

アクセルが持っているのは白色の物だ。現代でいう部屋の明かりのような白さと明るさだ。


そして、しばらく光を堪能したあと行動を始めた。


チュチュ袋から岩を取り出したあと、その岩に近い大きさの物を探し見つけれては


「なぁお前一緒にこないか?」


などと語りかけている。当然返事はないのだが、僅かに光量が落ちた気がする。気のせいかもしれない。そんな変化だが、アクセルは続ける。


そして持ってきた岩より少し大きく、常夜灯のような色と光量を持つ岩が僅かに光量を上げた気がした。


その陽光石を掘り出し、持ってきた岩を陽光石のかわりに置く。


この岩はモーラの宿にあった物だ。


あの空間に合う大きさの物を選ぶ為にモーラに了承を得て、持ってきたのだ。


しかし、そのまま陽光石を設置するだけでは味気ない。


考えた末、ある作業に取り掛かった。


▽▽▽


翌日の朝、宿に戻ったアクセルをモーラが出迎え、食事まで準備してくれていた。


それを食べたあと最後の作業をし、モーラとアリーを呼んで魔力風呂のお披露目だ。


そして夜


「遂に完成だね!最後は何してたの?」


「見たらすぐわかるよ」


そして三人で魔力風呂のある庭に出た。


そこには陽光石を用いて彫刻した燃える鳥が、翼を広げ空間を照らしていた。


「……」「素敵…」


「なかなか良いだろ?星空眺めながら入る風呂も良いけど暗かったからな。こいつに照らして貰おうと思ってさ」


そういうと当然モーラに抱きしめられ、感謝の言葉が尽きることがなかった。


そして最初に入ってくれとモーラに言われ、有難く正真正銘の一番風呂に入らせてもらった。

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