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27話 企て

まだ外は薄暗いなかアクセルは動き出す。


宿に「でかける アクセル」とだけ記し、受付の机に鍵と共に置いて宿を出た。


昨夜のうちにモーラには早朝から出かけると伝えていたのだが、せっかく覚えた文字を使いたくて仕方なかった。


街の入口で待機し、少しするとパタパタと走って向かって来るものがいた。アリーだ。


「ごめんね、待たせちゃった?」


「大丈夫だ。じゃあ行こう」


二人で街を出る際、門番に冷やかされたが、依頼と伝えて黙らせた。


そして街から少し離れたところまでくるとアクセルが口に開く。


「じゃあアリー、説明するからよく聞けよ。俺は魔力を使って周囲を見ることができる。相手と、ある程度なら地形も分かる。それを使いながら岩山まで行くから安心してついてきてくれ」


「う、うん。それでどれくらいで着くの?」


「まぁ昼前には着けると思う」


「分かった。私はその洞窟に着いてからが本番なんだよね?」


「そうだな」


アクセルがアリーに頼んだのは岩山の魔力風呂に続く道を他の冒険者達が進めるかどうかの確認だった。


アクセルは岩山の魔力風呂を世間に出す気がない為、もし魔力風呂まで辿り着ける者がいた場合、塞いでしまおうと考えたのだ。


その判断がアクセルには出来ない為、昨夜アリーにお願いした。


▽▽▽


「こんな所に魔力風呂が…」


「今から本番なんだからしっかりしてくれよ?」


そしてアクセルが陽光石を取り出し、アリーに手渡しながら騒がず、取り乱すなと伝えると、アリーも緊張からか手が震えている。


そして洞窟を進むがアリーはアクセルの背中に隠れるようについてくる。


「なぁ…それで判断出来るのか?」


「だだ、大丈夫よ。任せといて」


声も足も震えている。当然といえば当然なのだが、少し不安を募らせるアクセル。


そして魔力風呂がある空間に到着した。


ここに着くまでアリーの「大丈夫、大丈夫」という呟きが呪文の様に繰り返され、アクセルも少しだけ気が滅入ってしまった。


「あ、ああ、アクセル君、ス、ス、スプリットベアーが……それにハウンドッグも」


「あぁ、あの熊と犬そんな名前なのか。まぁここでは大人しいから大丈夫だ」


「大丈夫って…★6と★5に分類されてる魔物だよ?なんでそんなに冷静なの」


「ほら、騒ぐなって。同じ個体じゃないけど、戦ったことあるし大丈夫だって」


すっかり怯えるアリーの手を引き、お湯に近付いたあとチュチュ袋から取り出した桶で掬う。


そしてアリーも周りに怯えながらも桶に手を入れた。


「凄い…手だけ別物に感じるくらい活性化してる…」


すぐに恐怖を忘れ、感動に浸る。


「本物だろ?」


「疑ってたわけじゃないよ?現実を信じられなかっただけだから」


すっかり恐怖を忘れたアリーはその勢いのまま服も脱ぎ出した。

慌てて背を向けるアクセル。


ミラと旅をしていた時、ミラが水浴びをしている所にアクセルも入って行ったことがある。

ミラはすぐに身体を隠し、出ていくように言ったが、アクセルとしては女の身体がどうなっているか知っているから問題ないと主張した。

しかしミラはそういう問題ではない激怒したため、女の裸は極力見ないようにしようと心に刻んだアクセルであった。


「バカ!急すぎるだろ」


「アクセル君もそういう気遣い出来るんだね。もう大丈夫だよ」


そういって魔力風呂に浸かるアリーはとても幸せそうだ。


そして、何事もなく洞窟を出て帰路につく二人。


「で、どうなんだ?」


「★7の人なら可能だけど、それ以外は無理だね。だからこのまま放置で問題ないと思うよ?」


「そうか。じゃあ後は宿の方だな」


▽▽▽


「おばちゃーん」


「あいよー、今日はいつにも増して早い…アリーちゃんじゃないか!どうしたんだい?」


「こんにちは、モーラさん」


日暮れ前に街に戻った二人はモーラの営む宿にきていた。

そして経緯を話し始めるアリー。


「本当にここにその魔力風呂ってやつが出るのかい?」


「うん。だけど、かなり薄くなっちまうけどな」


アクセルがアリーに相談したのはこれだったのだ。

この宿に魔力風呂のある岩山から高濃度の魔力が薄まりながら流れてきていたのだ。


アクセルも初めて泊まったその日に気付き、値段の安さに驚いていたのだ。


そしてここに魔力風呂を作ろうとモーラに提案したのである。


現在は宿の庭にきて三人で確認し合っている最中だ。


「そりゃ確かに出れば嬉しいけど、頼むにしてもそんなお金は持ってないし、知識なんてありゃしないよ?」


「じゃあ、俺が作っていいか?魔力風呂じゃないけど、似たような物は作ったことあるしさ」


「……」


「モーラさん、これはモーラさんだけではなく、この街にも恩恵をもたらす事柄です。この土地はモーラさんの物ですから不当な手段を用いない限り、全ての権利はモーラさんのものです。それに私が責任を持って領主様に報告しますので、協力をとりつけることも可能だと思いますよ」


アリーの言葉が決め手となりアクセルの魔力風呂作りが始まった。

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