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25話 ジレンマ

日が暮れ、文字を習得するための勉強を切り上げた。

そして資料室を出たところでアリーに声をかけられる。


「アクセル君、今日の宿は決めてるの?」


「いや、その辺で寝るよ。この辺りはスライムが多いし、アイツらと寝ると柔らかくて冷たくて気持ちいいんだ」


旅をしていた時、かなりお世話になった方法だ。


「だ、ダメだよそんな危険なこと」


「え?でも何回もやってるし…」


「とにかくだめ!ちゃんと宿を取りなさい」


有無を言わさずアリーはそういうと一度机に戻り一枚の紙を取り出した。


「今から教える場所にこれを渡してね。お金はまた後日ギルドに納めることになるけど」


「えぇ?金使うなら宿とか要らないんだけどな…」


「これも勉強だと思って我慢して」


それを言われると、何も言い返せなくなるアクセル。

渋々頷き、教えて貰った宿屋に着く。


(結構古そうだな…)


紹介されたのは俗にいう安宿だ。


「誰かいないかー?」


「あいよー、ちょっと待っとくれ」


少し待つと一人の女性が現れた。その女性にアリーから渡された紙を渡す。


「まぁまぁアリーちゃんからの紹介かい?見ての通りボロ宿だけど、勘弁しておくれね」


「俺からしたら贅沢だよ」


アッハッハと笑う女性はモーラと名乗ったあと部屋に案内してくれた。


「何もないけど、好きに使っていいからね。あと食事は他所で済ましとくれ」


礼を言いベットに腰掛けてみる。

ベットは初体験だ。


「ふおぉ。柔らかい。ふおぉ」


しばらくギシギシと座りながら跳ね、感触を楽しんだ。


実際には固い安宿特有のベットではあるのだが、アクセルにとってはまさに天国だった。


(これで30ポルンって多分安いんだろうなぁ)


大体どこの街も安宿は寝るだけの場所が多い為、安い。

それには魔獣が関係しており、商人、冒険者以外は街から街に移動することが少ないため安宿の需要も少ないのだ。


そして安宿を営むものは別の職を持っているものがほとんどだ。


アクセルはチュチュ袋から干し肉と木の実を取り出すと纏めて口に放り込んだあと、ベットで横になる。


(薬草採取だけで結構稼げたし、朝は薬草採取、昼は勉強で良いかな)


明日からの予定をたて、その日はそのまま眠りについた。


実際、薬草採取で稼げるのは一日かけて、良くても30ポルンほどだ。


普段、薬草採取するものは街から出た平原で行う為、質も量もそれなりなのだが、アクセルは自身が飛ばされた森の中で採取していたのだ。人の手が入っておらず、匂いを嫌い他の動物や魔物も避けている為、状態も良く数が残っているのだ。


そんなことは知りもせず、せっせと薬草を集め勉強をするアクセル。


▽▽▽


「アクセル君、そろそろ討伐依頼受けてみない?」


この街、アートランに着き、早五日。未だに薬草採取を続けるアクセルにアリーが提案してきた。


「うーん、俺あんまり戦うの好きじゃないし、殺すのはもっと嫌いだ。だからあんまりやりたくない」


これにはアリーも困った様子だが、アクセルに言い聞かすように口にする。


「良い?アクセル君。確かに君の気持ちが一番だから強制することはしたくないんだけど、討伐は大事なんだよ?」


魔物は何もせず放っておくと、互いの魔力の影響からか暴走を始め、街や森に被害を出す。これをここでは魔物雪崩と呼称している。

そして魔物雪崩はどこの地域にも起こる事ではなく、魔力溜りと呼ばれるモノが存在する場所の魔物達に発生するとのことだ。


そしてアートランにも魔力溜りは存在するため魔物の間引きは必須事項なのだ。


「………言ってることは理解出来た」


アクセルも自我を失い暴れる魔物達は何度も出会っている。

しかし、間引く対象が暴走するとは限らない。その可能性があったとしても、暴走していない者を手に掛けるのが嫌だったのだ。

しかし、だからといって間引くことをしないと魔物雪崩が発生し、被害が大きくなってしまう。


「アクセル君は優しんだね。でもやるからには非情にならないとアクセル君がやられちゃうよ?」


「そんなことはわかってる。でもさ……」


言葉に詰まるアクセルだったが、その後、そのまま無言で掲示板に向かい★2の依頼であるフォレストイーター討伐と書かれた紙をギルドカードと一緒に提出した。


「受けてくれるだね。ありがとう」


「………」


「アクセル君は初めての討伐依頼だから説明するけど、討伐依頼数は三匹。討伐したら勝手にギルドカードが記憶してくれるから証拠品とかは要らないよ。あとは討伐数によって報酬の追加もあるからね」


静かに頷くアクセル。アリーも心を傷めているようだが、割り切って説明する。


「フォレストイーターはその名前の通り森に…」


「大丈夫……見たことあるから大丈夫…」


そういってトボトボとギルドから出ていくアクセル。

ギルドから出たアクセルの心は沈んでいた。


(俺、冒険者向いてないかもなぁ…)


そんなことを思いながら街を出て森に入る。


そしてあっさりフォレストイーターを発見した。


茶色に緑が混ざったような色をした小型犬位のトカゲの魔物だ。


五匹がそれぞれ木に捕まりながら木を食べている。


パンパンと頬を叩き、即座に五匹の首を落とし、別の袋に一度入れ、その袋をチュチュ袋に入れ帰還した。


すぐにギルドに戻りギルドカードを提出する。


「相変わらず早いね。というか早すぎるね。普通、森に行くだけでこれくらいの時間かかるんだけど…」


普通の者達が森にいく片道でかかる時間で、アクセルは討伐を果たし往復してきたのだ。


「追加で二匹倒した」


「うん。確認出来たよ。じゃあこれ追加の分と合わせて報酬の200ポルンね」


アクセルは心にモヤモヤしたものを抱えながら初討伐依頼

を終えたのだった。

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