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24話 お約束

「君、早くしてくれないかな?薬草如きで僕とアリーさんの時間を奪わないでくれよ」


さっき入ってきた女連れの男だ。


振り返るアクセルだが、アクセルの代わりにアリーが答える


「リックさん、私は貴方の専属ではありませんし、薬草の査定も立派な業務の一つです」


「わかっているさぁ。僕が言いたいのは未だ薬草採取しか出来ないそこの君にだよ。大した魔力も感じないし見たところ駆け出しかな?」


魔力を感じることが出来るのかと驚いていたアクセルだったが、またしてもアリーが答えくれる


「リックさんはね、魔力を感じ取る珍しい力を持った★4の冒険者なの」


「へぇ、★4か。俺は今日登録したばっかりだ。よろしくな」


「勘違いしないでくれ。よろしくするつもりなんか全くないよ。★1如きが僕に馴れ馴れしくしないでくれ」


そういってアクセルの差し出した手を払い除けた。


「いいから、さっさと下がりたまえ」


まぁ良いかとそのまま報酬を受け取るアクセルにアリーはごめんなさいと謝っていたが、笑顔で良いよと返事をし、その場を去ろうとした。


しかし、またもやリックに呼び止められる。


「君、さっきも言ったが魔力を感じない。さっさと冒険者を辞めたほうが身のためだよ」


「おぉ、心配してくれてたのか。俺、人と話すの苦手だから分からなかったよ。でも大丈夫、ありがとな」


リックの嫌味をも素直に受け取ったアクセルにアリーも必死に笑いを堪えている。


「馬鹿にしているのかい?」


「へ?なんでだよ。感謝してるだろ。それに魔力は今は抑えてるだけだ。無いわけじゃないぞ」


たまらずアリーも他の職員達も吹き出すがすぐに顔を背け誤魔化した。


「魔力を抑える?ハッ。そんな一流の魔法使いでもない、ましてや駆け出しの君がそんなこと出来るわけがないじゃないか」


幼少から魔力の操作に関しては徹底して鍛えてきたため、一流の魔法使いといっても過言ではない。

それどころか超が何個も付くほどだ。それほどアクセルの魔力操作は卓越している。


「んー、じゃこれでどうだ?」


抑えていた魔力をリックから感じる程度に身体に巡らせる。


「なっ!?」


口をパクパクさせながらリックが驚いているがアクセルがさらに続ける。


「本気になったらもっと出せるぞ」


「ふん、少しはあるみたいだね。じゃあ僕が試してあげるよ。本気とやらを見せみなよ」


「えー?嫌だよ面倒臭い。やる意味も分からないし」


「うるさい!良いからさっさとやれ!」


「なんなんだよ。うーん、まぁ仕方ないか」


そう言いながらアクセルは人型魔獣との戦闘を思い出しながら、身体に魔力を目一杯巡らせた。


アクセルの身体の周りには人型との戦闘時に見せた閃光などは発生していないが、薄い膜のようなものがその場にいた全ての者の目に映る。


「ひゃ」


変な声をあげ、リックはそのまま仰向けに倒れ、泡を吹いている。


それをみた取り巻きの女達も慌てふためいている。


「おいおい、しっかりしろ」


近寄ろうとするアクセルだったが、すぐにリックは女達に抱えられギルドから連れ去られていった。


一連の騒動を見ていた他の冒険者や職員達も静まり返っている。


アクセルも不味かったかなと不安だったが、突然歓声があがる。


「よくやった坊主」「いい気味だぜ」「パチパチパチ」


これにはアクセルも驚いてアリーに視線で助けを求めた。


「リックさんはね、確かに実力もあるし、魔力を感じる力もあるんだけど、ちょっと性格がね…私も言いよって来るから迷惑してたの」


アリーの言葉を聞きながらも、背中や肩をバシバシ叩かれ、苦笑いが零れる。


「それよりアクセル君凄いね!実は凄い魔法使いだったり?」


「いや、魔法は全然使えないぞ。さっきのは魔力を操っただけだ」


おそらくこの場にいた全員がアクセルの言ったことを理解していない。

しかし、まぁ良いかという雰囲気になり、リックの悪口をいったり、アクセルに良くやったと褒めたりと様々だ。


「私には良くわからないけど、アクセル君には期待しとくね」


こうしてお約束を無事、体験したアクセルはその後、アリーに尋ねる。


「そうだ、聞きたいことがあるんだけど」


「なにかな?」


「文字を覚えるにはどうしたらいい?」


すると資料室という別室があり、そこには文字を習得するための本やこの街周辺の魔物達の情報、依頼に役立つ情報が揃っていると教えてくれた。

ギルドに加入している者は無料という太っ腹だ。

そしてこの日はアリーが付き添って教えてくれることになった。


資料室には所狭しと本が並べられている。


「凄いな…ミラが見たら大喜びだ」


「ミラ?」


「ん?仲間だよ」


少しの沈黙のあとアリーは強引に話をかえた。


「そうだ。アクセル君は文字を書く道具とか持ってる?ペンは貸せるけど、インクと紙は無料じゃないんだ」


「大丈夫」


そう告げるとアクセルはチュチュ袋から一冊の本とペンを取り出した。


「インクはどうするの?」


「要らないんだ。これに魔力を流すと書けるんだ」


「魔道具持ってたんだ。でも大丈夫?魔道具のペンは魔力を大量に使うから効率悪いって聞いた事あるよ?」


一文字書く度に魔力が削られていく。たしかに他の者達には効率が悪いだろう。


「大丈夫、大丈夫!」


「そっか。じゃあこれ!この地域に古くからあるおとぎ話だよ。まずは読めるようにしようね」


こうして、日が暮れるまでアリーに文字を教えて貰い、何も書かれていない本を文字で埋めていった。

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