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22話 踏み出した一歩

第2章、冒険者編です。

ミラと別れアシュリットを出たアクセル。

イリナから冒険者に適した街をいくつか教えてもらっているが、さっそく寄り道をしている。


(ここの森は綺麗だなぁ…)


森に入ったのは、そこに森があり、綺麗だったから。


探索を続けていると森の中で洞窟を発見した。


(結構深い…でもここの主はいないな)


荒らすわけではないので良いかとの結論に至り、中に入っていく。


特に変わったものもなく、ドンドン奥に進む。

そして、明らかに不自然な祠を発見した。


(何かを祀ってるところだったのか)


その祠は石造りの家を模した造りのものだ。

黙って入ったお詫びに軽く綺麗にしようと、祠を触れた瞬間、時空間魔法を使った時のような感覚がアクセルを襲った。


(しまった…怒らせちゃったかな)


数秒後、そう思い立ち去ろうと振り返ると、そこにはさっきまで無かった外へと続く出口が目に入った。


「出ていけってことか…」


そう呟くとアクセルはその出口を出た。


そして


「どこだ、ここ」


森ではなく、全く違う景色が広がっていた。

そこには青く広大な空に雲が広がり、三つの島が浮いていたのだ。

中央には大きくはないが神殿のようなものが見える。


振り返ると、さっき出てきた洞窟があり、奥に祠も確認出来た。


「空…か?浮いてんのか?)


そう呟き一歩踏み出そうとした瞬間、神殿の方に人影が見えた気がしたが、それと同時にまた時空間魔法の感覚が、その身を包み込んだ。


さっきとは明らかに違う。

すでに森の中にアクセルは立っていた。


(やっぱり時空間で飛ばさてたんだな…)


魔法無効の効果が効かなかったのは恐らくアクセルに向けた敵意が無かったからだろう。

アクセルも攻撃を受けたとは思っていない。


「なかなか上手く行かないもんだな…」


そう呟くと周囲の確認と警戒も兼ねて魔力を展開する。


そして気になるモノを感じとった。

二匹の魔物だ。


魔物なのは間違いない。何が気になると言われると明確な答えは出せない。敢えて言うならば、なんとなくだ。


(うーん、行ってみるか)


とりあえず見るだけでもと思い、その場に向かう。

しかし近付いてもその魔物達はこちらに気付いた様子もない。


かなり近くまで行くと魔物もこちらに気付いたのか警戒し、唸り声をあげている。


お構い無しで背の高い草を掻き分け進むと、そこには二匹の魔物がいた。


(犬…いや、狼か?)


そこには牙を剥き、今にも飛びかからんとする黒毛の狼と、横たわっている白銀の狼がいる。まだ小さい。子供だろう。


しかし二匹共、身体中に目新しい傷があり、白銀の方はトラバサミのようなモノが足に食い込んでいる。


(なるほど、怪我してるから俺に気付く余裕がなかったのか)


「待ってろ、今それ外してやるから」


アクセルはそう言うと、白銀の狼に近付いていくが、黒狼がアクセルの腕に噛み付いてそれを阻もうとする。


振りほどくこともせず、そのまま黒狼に告げる。


「お前もアイツを助けたいんだろ?このままだとアイツの足がなくなるぞ?」


そう告げるアクセルだが、その間も黒狼はアクセルの腕を食いちぎろうと頭を振っている。


「お前もちゃんと治すけど、先にアイツだな」


優しく頭を撫でながらそう言うと、黒狼はアクセルの顔を見つめた後、ゆっくり腕を離し、後ろに下がった。


良い子だと呟き、白狼のトラバサミのようなものを手で開いた。


そしてリーレストで貰った貴重な魔法薬を取り出し、匂いを嗅がせ、数滴垂らした後、今度は塗り薬を足に塗っていく。


アクセルが何かを取り出す度に唸る黒狼に大人しくしてろとだけ言い、白狼の治療を続ける。


そして包帯のような物を取り出して白狼に言い聞かす様に告げる。


「良いか?これは怪我が治ると自然と枯れて無くなるから、無理やりとったりしちゃダメだぞ?」


これもリーレストで貰った包草という草を元に作った包帯だ。


白狼はウォンと小さく鳴くと足に巻かれた包草を嗅いでいる。


その後、二匹の治療を終えたアクセル。

すると狼達はアクセルの手をペロペロと舐めたあと。


「アナタ…ヤサシイ…ウレシイ」


片言であるが白狼が喋ったのだ。


「おぉ!お前、人の言葉を喋れるのか」


そう言いながら頭を撫でる。すると白狼も嬉しそうに目を細め、頭を擦り付けてくる。


黒狼もアクセルの胡座をかいた膝を舐めている。


「お前達は頭が良いな…でもな、これからは出来るだけ人間とは関わるな。それがお前達にとっても人間にとっても一番良い」


そう告げるアクセルの表情はどこか悲しそうだ。


しばらくすると物々しい音と共に咆哮が周囲に響く。


即座に警戒する黒狼を宥め、追い払ってくるからここにいろと告げると、アクセルはその場を後にした。


(熊の魔物か…見たことないやつだな。それに…)


すでに瀕死の熊の魔物。大量の血を流し、恐らく痛みで我を忘れているのだろう。めちゃくちゃに暴れ回っている。


静かに目を閉じる。もう救えない命だと自分に言い聞かせ、目を開く。そして魔物の首を落とした。


元いた場所に戻ると狼達も安心したのか、警戒を解き、近寄ってくる。


軽く撫でた後、さっき仕留めた魔物を捌いていく。


そして狼達と食べ、一緒に夜を過ごす。


(多分さっきの魔物と戦ってたのはこいつらなんだろうな。ボロボロになって逃げてる途中に罠にかかってって感じか…そうじゃなきゃあんな罠にこいつもかかるわけないだろうし)


そんなことを考えなら夜を明かした。


そして翌朝には狼達も軽く走れるくらいに回復し、そのまま別れを告げアクセルも森を出た。


「おぉ!全然違う場所だな。遠くに街も見えるけどアシュリットじゃなさそうだ」


そしてその街に向かって歩き出した。

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