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17話 現れる最悪の災厄

左右の腰からそれぞれ剣を抜く。


「俺が前に出る。後ろは任せた」


「了解」


そう言葉を交わし、凄まじい速度で距離を詰めていく。


すでに騎士達と魔獣は乱戦になっているようだ。


「ひぃぃ、.......あれ?」


騎士の一人に魔獣の牙が届こうかというまさにその時、アクセルの剣が魔獣の首を落としていた。


(結構多いな...)


騎士のことなど全く意に介さず、魔獣の中に飛び込んでいくアクセル。そしてその後ろを追うミラ。


無数の爪が襲いくるなか、的確に見極め、躱すと同時に首を刎ねていく。


距離をとりアクセルを取り囲もうする魔獣だが、ミラが手をかざすとバチバチと音を立て、その身体を塵にかえていく。


「た、隊長。あの者たちは...」


「...今のうちに体勢を立て直す。負傷者は前線から下がらせろ」


三十ほどいた騎士達も今は五名が前線に残り魔獣に対処している。


魔獣も最初二十ほどいたがその数を減らし残り僅かとなっている。だが殲滅速度をアクセル達は落とさない。魔獣相手に余裕を見せる意味も必要もないからだ。


しかし突然アクセルが声を荒げる。


「...ッ!?ミラ、離れろ」


その声に反応し素早く魔獣達から距離をとるアクセルとミラ。


そして距離をとりミラも気付く。


新手がこちらに向かってきている。


変種なのは一目瞭然だ。二本の足で立ち、悠々と歩いて向かってきている。


「人型の変種...」


ミラの呟きを横で聞いているアクセルだが、その表情は優れない。自然と汗が顔を伝う。


騎士達も動揺を隠せず狼狽えていたが、一人の騎士が無謀にも人型魔獣に突撃を仕掛ける。


「やめろ!!止まれー」


アクセルの制止も聞かず、突撃をやめない騎士に人型魔獣はその人間のような腕をムチのように振り、騎士の上半身を吹き飛ばした。


「くそ...」


表情を歪めるアクセルだったが、まだ通常の魔獣も残っている。


残りの魔獣が全てアクセル達に飛びかかってくる。


ミラの電撃が難なく撃退し、残るは人型だけとなった。

しかし状況はかなりまずい。

二十の魔獣の群れより、あの人型一体の方が遥かに脅威を感じるのだ。


気持ちを落ちつかせ、改めて人型を見据える。


まだ身体に慣れていないのか、騎士を吹き飛ばしたあともその場から動かず、ジッとしている。


「ミラ、まだいけるか?」


「無論だ」


直後、動きのなかった人型がこちらに顔をゆっくりと向ける。

身体もこちらを向け、完全にアクセル達を標的として定めたようだ。


先に仕掛けたのはアクセルだ。


両手に剣を持ち、凄まじい速さで肉薄する。


そして速度の勢いそのままに、人型の目前で時計回りに身体を回転させ、二本の剣を振り切った。


「なっ!?」


しかし人型は避けることもせずアクセルの渾身の一撃を片腕で防いだのだ。


すぐに距離をとるアクセルに追撃の構えを見せた人型だが、ミラの電撃を受け、その場に踏み留まる。

しかし、傷は負っていない。


「くそ、硬いな」


一息つく暇もなく、人型はその腕を槍のような形状に変化させる。直後、腕が伸びアクセルを貫かんと迫ってくる。


「っ!?」


それを皮一枚でなんとか躱すアクセル。頬を血が伝う。


「傷を!?呪いが...」


「いや、大丈夫だ。おそらく呪いはない」


今まで魔獣と戦闘を繰り返し、呪いを受ける感覚は把握している。

今はそれがない。


「呪いが無くても俺らを殺せる自信があるんだろ。もしくは呪いを使えないかだな」


冷静に分析をするアクセルだったが、今の一合で自身の劣勢を悟っていた。


▽▽▽



それからもなんとか致命傷を避けながらも対峙する二人だったが、アクセルの剣はどこの部位にも通じず、ミラの電撃は今ではまるで意に介さず、動きを止めることもしなくなった。


「はぁ、はぁ、くそ、バケモンが...」


そう零すアクセルの身体には無数の傷が刻まれ、剣は片方の黒剣を弾き飛ばされ行方不明だ。

ミラも同様の状態だ。


「はぁ、はぁ、さすがに、これはマズイな。一度、引くべきではないか?」


「そうしたいのは山々だが、目を離してくれない。さっきも、そうだっただろ」


息も絶え絶えな二人だが、少し前に騎士達が撤退していくのが目に入った。しかし人型は騎士達には見向きもせず、アクセル達を執拗に攻め立てていた。


なんとか隙を見つけ逃げ出しても、間違いなく追いかけてくる。

振り切れる自信もない。


「今ここで、アイツを倒すしかない。」


「しかしこのままではいずれやられる...なにか打開策は...」


「あったらとっくに使ってる...正直、勝機が見えないな...」


アクセルが珍しく弱気だ。しかも今は戦闘の真っ最中にもかかわらずだ。

それほど状態は最悪なのだとミラも感じ取る。


「だけど、死ぬ気はない。死んだらそこで終わりだ。なんとか道を切り開く!」


そしてまた人型に向かっていく。


だが、やはり状況は変わらずアクセルとミラだけ傷が増えていく。


そしてついに残った剣も弾き飛ばされてしまった。


なんとか追撃を素手で防げはしたが、素手で勝てる相手ではない。


しかし距離をとった瞬間だった。


人型は今まで執拗にアクセルを狙っていたが、突如狙いをミラに変更し、猛攻を始めた。


ミラも剣を構え応戦するが、かなり分が悪い。


アクセルもすぐに駆けつけるが、まるで相手にされず、人型はまるで虫を払うかのように腕を振り、アクセルを吹き飛ばした。


「がはっ、はぁ、はぁ、」


起き上がるアクセルだが、次に目にしたものは人型に腹部を貫かれたまま宙に浮いているミラの姿だった。


「ミラァーーーー」

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