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プロローグ2

 〜五年前〜



 とある街の一角に、その2人はいた。



「過酷な運命を持つ者を導くねぇ。お前本当に信じんのか?流石に情報が少な過ぎだろ」



 そう尋ねるのは腰に通常より少し大きめの剣を携える男の剣士。



「たしかにそうね。でも"あなたの心のままに"とも言っていた。必ず巡り会えると信じて動くしかないわね。それにあの夢のこともあるし、じっとはしてられないもの」



 そう返すのは白いローブを纏い、杖を持つ魔術師の女性。



「はぁ……仕方ねえ!俺もさんざんネーラには無茶に付き合ってもらったからな!今度は俺がとことん付き合ってやるよ」


「ふふ、ええ。頼りにさせてもらうわ、グレイ」



 剣士の名はグレイ、魔術師の名をネーラ。

 2人はそれぞれの分野で実力を認められ、それなりに地位を築きながらも全て捨て去り、旅に出ていた。



 きっかけはネーラが見たという夢。



 それは“顔に魔法陣の様な模様”がもった赤子が誕生するというもの。

 たしかに顔にその様な模様がある赤子は珍しくはあるが、普通はそこまで気にするほどでもない。

 しかし、破壊により世界が救済されると信じる過激集団、暁。その組織の中枢を担う男が捕縛され、処刑が行われる際、気になることを言っていた。



 破壊の使者は身体に魔法陣を刻み誕生する。そして近いうちに誕生するであろう。と……



 信憑性など皆無、狂言であるかもしれない。しかしネーラはとてつもない不安に襲われた。

 そして、これまで各国で過激な行動をしていた暁の者たちが男の捕縛後一斉に姿を見せなくなる。それも不安を煽る要因となっていた。



 そしてネーラは見た相手の未来を覗くことが出来るという時空間魔法の使い手に会い、自身を見てもらった。

 本来この未来を見る時空間魔法は、数日内の未来を見えることがほとんどらしい。

 ネーラを通じ見た未来は、ネーラが小さい子供に指導している様子だという。



 恐らくはあの夢に見た赤子を自分達が導くのであろうと2人は解釈し、先の見えない旅を再開した。



 そして四年の歳月を経てなお、旅を続けていた2人に有力な情報が入る。



「こんな田舎の山奥に暁の連中なんかいるのかねぇ。今の今まで音沙汰なかった連中だぞ?」


「どのみちあの赤子しか手がかりがない以上、どこへだっていくわ」


「そりゃ、そうなんだが……しっかし、すでに行ったことのある場所にその赤子が産まれてたら目も当てらんねぇな」


「それはもう言わない約束でしょ?それにそうなったらまたそこに行くだけよ」



 この四年、諦めたわけでは無かったが、情報もない、進展もない、そしてさっきの会話の様な不安もあり、諦めるには十分過ぎるほどの時間があった。

 それでも歩みを止めず、ここまでやってきた。



 そして遂に掴んだ希望。



 数年前に“悪魔の子”が産まれ、最近になりその父が「この子は救世主だ」と発狂していたという。

 その情報を手に入れたのが数日前。立ち寄った街にいた行商人からの情報だ。



 そして今、夜通し歩き続け、事件があった村を目で確認出来る距離にまで2人は来ていた。



 そして村に入るなり、早朝にもかかわらず雰囲気がおかしいことに気づく。



「いや〜な感じだな」


「ええ」



 グレイは落ち着かない様子の村人を1人を捕まえ尋ねる。



「なあ、何かあったのか?」


「あんたら、よそ者か?関係ないやつが首を突っ込まないでくれ」



 村人はそういい立ち去ろうとするが、グレイが村人の肩を掴みさらに詰め寄る。



「まあ、そう言うなよ」



 村人は煩わしそうに振り返る。



「しつこ……ひっっ!」



 手を振り払おうと、振り返った村人はグレイの眼力と圧力に情けない声をあげる。



「なぁ、頼むよ」



 身体の大きいグレイは意図せず見下ろす形でゆっくりと、そう告げる。



「わ、わかった。離してくれ、ふぅ……」



 そういい、村人は観念したのか、少し距離をとって喋り始める。



「数年前、顔に変なアザのある赤子が産まれた。その夫婦もよそ者であまり関わりがなかったから、詳しくはしらん。で、その夫婦の旦那が赤子が産まれた当初から少々変だったが、昨日の夜中、遂に壊れたんだ」


「壊れた?」


「ああ、さらによそ者が2人と、その旦那とでその子を殺そうとしたんだそうだ……」



 近くに寄ってきて話を聞いていたネーラ、そしてグレイも言葉を失う。

 さらに村人は続ける。



「母親は子を守ろうとした結果、旦那と刺し違えたらしい……そのあとも母親はよそ者から我が子を身を呈して庇い、あそこに見える森に逃がしたって話だ。今、俺たちもどうするか話し合ってる最中でよ……」


「あの森には何かあるのか?」



 鬼気迫るグレイの問いに村人は怯えながらも答える。



「く、詳しくは知らんが、少数の人が住んでる所があるらしい。あくまで噂だがな。あの母親もそれに賭けたんじゃねぇか?もう良いだろ。俺は行くぞ」



 そう言い残し村人は足早に去って行く。



 そして2人は……


「行きましょう」


「おう」



 現在はまだ早朝。自分達ならまだ間に合う。そう意気込みグレイ、ネーラの2人は森へと入って行く……

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