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16話 チュチュ袋

心地のいい風と木々が揺れる音で目がさめる。


すでに日は落ちていて、月明かりがとても綺麗だ。


「起きたか?」


ミラの声に身体を起こそうとした時、ある物が腹の上にあるのがわかった。


「あ、この袋…」


「そのまま寝てしまっただろう。あのモモチューが置いていっていたぞ」


「あー、袋のこと完全に忘れてた…」


ハハと笑い合った後、ミラも袋を持っていたのに気づく。


「あれ?何で?」


「ふむ、君と競っていたモモチューが帰ると同時に、私のもとにいたモモチューも帰っていった。その帰り際、譲り受けた」


「へぇ、追いかけっこしなくても貰えるのか。……でも使えるのか?」


「それはまだ試していない」


今、手元には白い袋と灰色の袋の二つがある。

それは布製の袋に似ているが、触り心地はスベスベで上品な絹のようだ。

色もそれぞれのモモチューになぞられている。


「よし、じゃ早速なにか入れてみるか。…………これ、俺の剣とかも入るのかな…」


「あの老人の話では、袋の口に入りさえすれば良いと言っていたが、どうだろうな…」


「物は試し!………おー、入った。しかも重さも感じないし、袋の形も変わってない」


流石のミラもこれには唖然としている。


「振っても中にある感じもしないぞ…………これ、中身無くなったりしてねぇよな…」


「…………」


慌てて袋をひっくり返すが、剣は落ちてこない。


焦ったアクセルは袋に手を突っ込む。


「……ある。今握れてる」


そういうと剣を袋から抜き出した。


「凄いなこれ。どうなってんだ…」


「たしかに…これを狙う者が後を絶たない理由がよく分かる」


さらにその後も色々調べていく二人。


朝、村に戻り食事を済ませた後、老人を訪ねた。


「…本当に捕まえるとはのぅ……」


老人はアクセルが持つ袋を見ながら感嘆の声をもらす。


「なあ爺さん、この袋のこと色々教えてくれよ。爺さんも持ってるだろ?」


一瞬、驚きの表情を見せた老人だったがすぐ笑みに変わる。


「ホッホッホ、なんとも侮れん若者じゃ。いいじゃろ。ワシの知っていることなら教えよう」


自分達で確認した事も含め使い方を教わった二人。

その後は老人の昔話に華を咲かせる。


この老人も幼少期モモチューと遊び、捕まえることは出来なかったが、後に譲り受けたと語った。


「チュチュ袋のことを理解していない輩に狙われる事もある。あまり人前には出さんほうがいいじゃろうな」


他者が奪ったとしてもその袋は何の力も持たないただの袋になる。落し物の袋との明確な違いの一つだ。


「うん、気をつけるよ。それは良いとして、これ何でチュチュ袋なんだ?モモ袋とか、モチュ袋とかなら分かるんだけど…」


「さあのぅ。こればっかりはワシにも分からんよ」


一人だけ納得している者がいる。ミラだ。


(…チュチュ袋…可愛い響きではないか)


老人の家を後にし、二人は再び森にきていた。しかし人目が付かないくらいの浅い場所だ。


そして荷物をチュチュ袋に移し替えていく。


今では背負っていた大きなリュックも空になってしまった。


「これ、本当に便利だな。中の物は傷まないんだろ。石も入れ放題だな」


「たしかに。これなら本ももっと増やせるな。どうだ?これを機に文字を覚えてみないか?」


「うーーん、考えとく…」


最後に今まで背負っていたリュックを袋に仕舞い、この地を後にした。



▽▽▽▽▽



とある街で食事をとる二人。

たまには良いだろうということで来ているが、それだけが目的ではない。


現在モモチュー達のいた地から約二月ほど旅を続けた場所にいる。

この地に来てから魔獣が明らかに多くなっているのだ。


その為しっかりとした休息が必要だろうということになり現在に至っている。


「おい、聞いたか?また魔獣が出たらしいぞ」


「みたいだな…しかも今まで見たこともない魔獣がいたらしいぞ」


などと言う話し声がアクセル達にも聞こえていた。


「アイツらのことか…確かに他の奴より強かったな…」


すでに今まで見た事もないと言われていた魔獣と戦闘している。

僅かだが、通常の魔獣より身体が大きいモノ、尾が長くなっているモノ、様々な変異がみてとれた。


そして二人からすれば大差ないが、力が強くなっていたり、動く速度が速くなっていたりと確実に強さは増している。



それからも一度に出てくる数は少ないが、ほぼ毎日魔獣と出会う。その中には変異種も混じってきている。


「さすがおかしいな…この地は特別多いのか?」


今も魔獣との戦闘を終えたばかりだ。


「これは先を急いだ方が良さそうだ」


「そうだな。なんて所だっけ?」


「リーレストだ。君は相変わらず地名などを覚えないな…」


「用事が済んだら出ていくんだから、必要ないだろ」


今はリーレストという街を目指し進んでいる。

この街は薬学に特に優れ、他に並ぶものはないとすら言われている。


二人はそんな優れた知識をあわよくば手に入れ、激化する戦闘に備え薬も補充しようと考えたのだ。


数日かけ目的のリーレスト付近の平原を現在進んでいる。


順調な旅路であったが、遠くで魔獣と戦闘している集団を発見した。


「あれは…リーレストの騎士か…」


「行こう、どのみち通り道だ」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 無駄がなくてとにかく展開が早い事が、この作品の素晴らしいところだと思います。 [気になる点] 意図的なのか分かりませんが戦闘描写が少なくて主人公達二人の距離感とかが分かりにくいのが気になり…
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