15話 モモチュー 後編
本日は2本投稿
早速モモチューの住処の森に来た二人。
「じゃミラ荷物頼むな」
剣や荷物の一切を預け、地面に腰を下ろし静かにモモチューが来るのを待つ。
ミラは荷物の側で読書をするようだ。
しばらくすると一匹のモモチューが姿を見せた。
全長三十センチくらいだろうか。ずんぐりした体型は白くフサフサの毛に覆われ、手足は短い。頭部には猫の耳のような耳が見えている。目もクリっとつぶらで可愛らしい。
そして二本足で立ち、肩にはモモチューより少し小さいくらいの大きさの袋を担いでいる。
モモチューはアクセルには目もくれず、ミラのもとへ歩みよる。
そして袋を足元に下ろし、ミラに向かって何やら手を皿のようにして上下させている。
(…か、可愛いーーー)
意外にも可愛いもの好きが判明したミラであった。
しかしモモチューの行動の意味がわからず、あたふたしていると。
「お前に同じようにして欲しいんじゃねぇか?」
アクセルの言葉を聞き、ミラも両手で皿を作る。
するとモモチューはトコトコとミラに近寄り、袋を手の皿の上でひっくり返した。
「これはきのみ?」
意図がわからず首を傾げていると突然モモチューがミラの胸に飛び込み、顔をうずめる。
きゃっ、と可愛い声をあげミラも驚いていたが、可愛さに負け、されるがままだ。
そしてモモチューは身体を反転させ、ミラを枕にしながらミラの手皿からきのみをとって口に運び、寛ぎ始めた。
「こ、こら!そこでモゾモゾするな…」
慌ててるミラも新鮮だなとアクセルもその光景を眺めていた。
「こいつ追いかけっこする気なさそうだな…」
そんな言葉とほぼ同時にもう一匹、モモチューが現れた。
こっちは灰色の毛並みだ。しかし頭部の耳の間にトサカのような毛がある。さながらショートモヒカンだ。そして何故かここの毛だけ黒い。袋もモヒカンモモチューと同じくらいの大きさだ。
モヒカンモモチューはアクセルのもとに肩で風を切りながら歩み寄ると、ビシっと指差した。
「俺と追いかけっこしようってことか…いいぜ、望むところだ」
そう告げ、さっと手を伸ばした瞬間、驚愕した。
思っていた以上に速い。手の届く距離にいたモモチューはすでにさっきの倍近く距離を開けている。
「ほあー、お前凄く速いな。驚いた……へへ、楽しくなってきたな」
気合いを入れなおし、再びモモチューに迫る。
それをあっさり躱したモモチューは木の上で踏ん反り返っている。
アクセルも躍起になって追い立てるが、全く捕まえられる気がしない。
特に厄介なのは、枝に飛び移った時や地面に降りた時、地を蹴る音などが全く出ないことだ。
おかげで位置を目でしか確認出来ない。
「よーし、俺も身軽になるからちょっと待ってろ」
モモチューにそう告げるとアクセルは服や靴を脱ぎ、極力身体を軽くした。
しかし夜になってもその距離が縮まることはなかった。
最初からずっとモモチューを抱え見守っていたミラも、すでにモモチューを抱えたまま眠っている。
こうなれば持久戦だと、休む暇を与えず夜通し追い回し続けた。
たまに休憩を挟み軽く食事や水分を補給し、また追い続ける。
(ふふ、また随分と楽しそうだ)
まだ距離は縮まらない。
そして四日目の朝
「おい、モモチュー。明日だ。明日絶対にお前を捕まえてやる。今日はもうやめだ」
アクセルはモモチューにそう告げるとほぼ同時に眠りについた。
それを見たモヒカンモモチューも森の奥に消えていく。
もう一匹のモモチューは未だミラにべったりだ。ミラもこれでもかといわんばかりに甘やかしている。
目が覚めてもアクセルは動かず何もしない。
目の前で挑発されようが、全く動じず身体を休める事に注力した。
そして夜明けと共に動き出した。
お互いの姿を確認し合ったあと行くぞ、と告げアクセルから仕掛けた。
初日、絶望的な状況だったが、今はもう少しで触れそうなほど接近することが多々ある。
そう。これはモモチューにとって遊びなのだ。
モモチューが本気で逃げれば後を追うことは不可能。しかし遊びだからこそ、範囲を決めそのなかを逃げている。
それに気づいたアクセルはモモチューが逃げる範囲を把握し、その地形をも追いかけながら頭に叩き込んだのだ。
モヒカンモモチューも最初と比べると全く余裕がなく、焦っているようだ。
そして暗くなる寸前で遂に!
「だああーーー」
そんな声と共に飛び付きながらモモチューを捕まえた。
「いやっっったーーーーー」
胴体を両手でガッチリ掴まれたモモチューはガックリ項垂れている。
アクセルはモモチューを抱き上げたまま地面に寝転がると腹の上にモモチューを下ろした。
「おー、フワフワのサラサラで気持ち良いなお前。へへへ、言った通りだろ。俺の…勝ちだな…」
そしてそのまま眠ってしまった。
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