表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
165/167

161話 悪足掻き

劣勢の中、神喰いとの戦闘は続く。


だがそんな中でも幸いな事に、神喰いは他に攻撃手段がないのか、大剣を振るうのみであった。


しかしそれでも巧みに操られる大剣が脅威であることには変わりなく、剣を打ち合う衝撃のみで体が裂け、アクセル達には徐々に傷が増えるその一方で、神喰いには決定打を与えられずにいた。


神喰いはステラの氷魔法の拘束をものともせず、ミラの雷でも一瞬動きを止めるのみ。


だがそんな一瞬のスキをついて神喰いの大きく裂けた口が開いた瞬間を狙い、ソニアが神喰いの口内で炎を爆発させる。


たまらず神喰いも動きを止めた。


その瞬間を見逃すアクセル達ではない。

ロア、ロイ、ネロを伴いアクセルが四方から襲いかかり、それぞれが渾身の一撃を叩き込む。


神喰いから血しぶきが飛び散り、大きな口を開け咆哮をあげるが、そんな神喰いに、ミラの紅い雷が絶え間なく降り注ぎ、ソニアの炎が足元から吹き上がる。


大剣で炎を振り払い、ミラとソニアのもとに向かってくる神喰いに、カタナに属性を纏め腰を落とし構えをとるステラの姿が見えた瞬間、万物を切り裂く一撃が神喰いへと襲いかかる。


ステラの居合に合わせ、大剣を振り下ろす神喰いだったが、大剣と共に神喰いの腕が宙に舞う。



ガアアアアアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!



「よしっ!」


思わず言葉が漏れるアクセル。

しかしその直後、神喰いに変化があった。


腕が地面に落ちた瞬間、神喰いは咆哮を止め、その全身に金色の光を纏う。

そして左の拳を握り、ステラへと襲いかかった。


「うぐっ……」


「ステラっ!!」


「だ、大丈夫…」


咄嗟にカタナで防ぐステラだったが、カタナを粉々に砕かれ、同じく左腕の骨を砕かれながら吹っ飛ぶステラをアクセルが受け止める。


「あ、あれは………」


「マスターと同じ………」


「魔装………」



皆が集まり、金色の光を纏う神喰いを見ながらそれぞれ口を開く。


「違う………あれは魔装じゃない」


その中でアクセルがそれを否定する。


「あれは……ルプレックスが激昂時に見せる姿とよく似ている」


ルプレックスであるロア達と繋がっているアクセルだからこそ分かる。


「まさか、あの下半身はルプレックスだと……」


神喰いの下半身はもはや原型は分からないが四足獣であり、言われてみればルプレックスと似ているようにも思える。


「ここにきてそりゃ無いぜ……」


ただでさえ苦戦していた神喰いがここにきてその身体能力を強化し、数段速くなった速度でアクセル達に迫る。


散り散りに神喰いの突進を避けるアクセル達だったが、神喰いは背にある翼を伸縮性のある槍のような形状に変形させ、それぞれを狙う。


それぞれがそんな槍を躱す中、神喰いはソニアに迫り拳を振るう。


腕を交差させ防ぐソニアだが、両腕を砕かれ、凄まじい勢いで地面に叩きつけられた。


すぐにソニアは癒しの炎で回復し、戦線復帰を果たすが、その後も攻防はアクセルが後手にまわり防戦一方となり、深い傷が刻まれていく。


左腕を砕かれたステラは後方から魔法で支援することしか出来ず、ロア、ロイ、ネロもすでに立ち上がれ無いほどの一撃を受け、アクセルの元へと帰っている。


アクセル、ミラ、ソニアが死力を振り絞り、何とか神喰いと渡り合えている状態だ。


(くそっ………このままじゃ…)


アクセル、ミラ、ソニアのいずれかが致命傷を負えばそこから一気に崩れ、敗北は目に見えている。


戦いながらも必死に打開策を考えるアクセルだが、逆転の手は何も残されていないように思えた。


(どうせ死ぬなら全部絞り出してやる!)


そんな追い込まれた状態だからこそアクセルは覚悟を決めた。


「すまんっ!少し時間をくれ」


1人欠けることが敗北に繋がることを理解しつつもアクセルは全員にそう告げる。


「承知した!」「任せて!」「了解しました!」


そんな中でも仲間たちの力強い返事が届く。


その瞬間、アクセルは神喰いから距離をとったその場で両膝を地面につけ、微動だにしなくなった。


全員が現状だと死しか待っていないのは理解している。

そして同時に自身が逆転の手を持たないのはミラ、ステラ、ソニア、それぞれが理解していた。


アクセルが何かをしようとしているのはすぐ理解し、それに賭け全力で時間を稼ぐことに注力する。


だがアクセルが抜けた穴は非常に大きく、劣勢だった戦いがさらに劣勢となり一気に崩れそうになる。


もはや戦いにならず、致命傷を避けることがやっとの状態だ。


しかしそれも長くはもたず、ついにミラが神喰いの拳に捉えられる。


(避けきれないっ…)


神喰いの拳が迫る中、ミラの頭に死が過ぎるまさにその瞬間だった。


突然体が軽くなる。いや、そんな言葉では表現しきれない状態となり神喰いの拳から逃れる。


ミラの体にはアクセルが纏う金色の衣が纏われている。

ミラだけでなく、ステラ、ソニアも同様の状態だった。


「悪い……遅くなった」


隣に駆けつけたアクセルは目、鼻、耳、あらゆる箇所から血を流し、神喰いを睨みつけている。


「これは長くはもたない。体も感覚が随分違うからすぐ慣れろ」


アクセルは仲間全員に魔装を施し、今もなお止まらない鼻血を拭う。



神喰いとの戦闘は最終局面を迎えようとしている。





読んで頂きありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ