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13話 唯一無二の剣

「さて小僧よ、まずは確認じゃが、この剣はもう死んどる。全く新しい剣を打つか、この剣を鍛え直すかになるのう」


突然の展開に思考を巡らせる。

そして答えはすぐに出た。


「この剣を鍛え直して欲しい」


「鍛え直すといえば聞こえはいいが実際は別物になるぞ?それでも良いのか?」


「死んだらそこで終わりだ。それなら生まれ変わった方がいい」


必死に考えた末の結論だ。


「承知した。しかしそうなると何か繋ぎが欲しいの」


「繋ぎ?」


「そうじゃ。これを溶かし再度打っても別の剣でしかない。それなら一から作るのと変わらんじゃろ」


「たしかに…」


「これから作るのはお主の剣。お主の師の剣ではない。お主の剣である理由ともいえるな」


腕を組み考え込んだあと、荷物袋をひっくり返してみる。

そしてある物が目にとまった。


「これ…」


「ふむ…銃とはまた珍しい物をもっとるの」


「ああ、これは昔拾ったんだ……これ使えるのか?」


「銃その物を使える様にするのは無理じゃな。何よりワシが好かん」


「これ気に入ってるだけどな…」


「ならばそれ繋ぎにするとしよう」


「え!?」


「言ったじゃろ。お主の剣だと。お主が気に入った物があるならそれに越した事はない」


そういってドランは銃を手に取り観察を始める。


「でも銃を剣にするのか?そんなこと出来るのか?」


「ワシが成してみせよう。かっかっか、久方ぶりに気分が高揚しとるわ。しばらくお主は娘と共におれ」


そう言いドランは黙り込んでしまった。


アクセルもこれ以上は話が出来ないと分かるとミラの元に向かう。


小屋に戻り、ミラの側に座り込む。同時にミラも目覚めたようだ。


「悪い…起こしたか?」


「いや…ここの住人には会えたか?」


「それが………」


こうして今までの経緯を話しはじめた。


「それはよかったじゃないか。何か不安でも?」


「話が出来すぎじゃないか?」


「疑い過ぎだ…君の場合、もう少し人を信じた方がいい」


「まあ、確かに嫌な感じとかはなかったけど……」


人嫌いが加速し信じる事をしばらく忘れていた。

ミラに言われて改めて気づいた事である。


「ま、とにかく飯の準備でもしてくる。何かあったらすぐ呼べ。ここからそう離れた所にはいかねぇから」


「ああ、助かる」


こうして食事の準備をし、ドランに差し入れしたあと、その日は過ぎていった。


朝、ミラも全快とはいかないものの歩き回れるくらいにはなっている。

二人で外に出て日課の訓練をし、ミラは小屋に戻り、アクセルはドランのもとに向かった。


「おはよう、じっちゃん」


「む?小僧、良いところにきた。これから作り始める。出来るまで好きにしとれ」


「分かった。また後で飯と飲み物持ってくるよ」


こうして二日ほど過ごした後、ドランに呼び出され、ミラと共に向かう。


「とりあえずは完成じゃな。お主の為の剣じゃ」


そう言われ、台に乗せられた剣を見てみる。


二本ある。

一つは銀色。グリップ部分は角度を広げ握りやすく改良され、そしてリボルバータイプの銃身から牛刀のような片刃が伸びている。


手にとり眺めてみる。


「それにお主の師の剣を使っておる。いい出来じゃが、なかなか癖のある剣じゃ」


「……凄く手に馴染む。長さも重さも丁度いい。これならなんでも斬れそうだ」


感触を確かめ、ひとまず台に戻し、もう片方を手にとる。


グリップ部分から刃まで黒だ。こちらはリボルバー型に比べ、刃は細く少し長い。


「こっちもいい感じだ…さっきのより軽くて取り回しいい」


「こっちは元の素材が分からんかったし朽ちかけておったからの、補強も兼ねてお主が持っておった素材も使わせてもろうたぞ」


「………うん」


剣に見惚れ適当な返事になってしまう。


「なあ、これ俺が持ってた石だけか?何個か使ったにしても剣にするには足りないとおもうんだけど…」


「そんなものワシの懐から出したに決まっておるじゃろ」


「貰いすぎだ…剣を作ってもらっただけじゃなくて素材までなんて…」


「気にせんでええ。ワシが作りたかっただけじゃ。しかしそこまで言うなら今度来るときにでもお主の持っておる素材でも貰おうかの」


ドランが上機嫌でそう告げる。


「ああ、わかった。楽しみにしといてくれ」


そういうと改めて剣を手にとる。左手に黒の剣を、右手には銀の剣がそれぞれ握られている。

そして目を閉じ心を静める。


「ふむ、なかなか様になっとるの」


確かめるように剣を振る。

段々とその動きは加速し鋭さを増していく。

今まで剣を二本同時に使うことはなかった。しかし今、アクセルは淀みなく流れるような動きをみせている。


そして一頻り剣を堪能した後。


「…凄い…思った通りに動かせる…」


ミラ、ドランも見事だ、と言い称賛してくれている。


「小僧よ、それは確かに今、出来るだけのモノを注いだ。しかしまだ究極とは言えん」


「充分凄いけどな…」


「今までにない物じゃ。改良できることも後に見えてくるやもしれん。そのときはまた訪ねてこい」


「…本当に何から何まで…ありがとうな、じっちゃん」


一風変わった、そして同じモノが二つとない、アクセルの為の唯一無二の剣はこうして誕生した。

この日はドランを精一杯もてなし、雑談に華を咲かせた。

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