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128話 帰還の末に見たもの

―夜 カミルの自宅―


物置のような掘っ建て小屋にはいつも以上に人が集まっている。


カミルは突然訪れたにも関わらずとても親切に接し、丁寧に治療を施してくれた。


ミラの容態も診てくれたのだが、外傷はなく、魔法的な力でかなり消耗していると教えてくれた。


アクセルはなんとなく、その事を理解していた。


ミラから首輪を取り外す際、それに触れたことで呪いに近い力を感じていたのだ。


まだステラ、ミラ共に目を覚まさず、静かに眠っているのを見守っていると、扉が開かれ、なんとネロに連れられソニアが入ってきたのだ。


「おかえり……ネロもありがとう」


「ただいま戻り…ました。……っミラさん、ステラも!!嫌な予感がして戻ってきたのですが、マスターこれはどういう……」


「落ち着け。ここは人の家だ。あんまり騒ぐな……」


同日、ソニアはすでに目的であった風属性をすでに手に入れ、それをさらに昇華させていた段階であった。


しかし むしのしらせ というべきか、不意に嫌な予感がし、修行を切り上げ、浮島拠点に帰還。その後、誰もいないのを確認し、ダンジョン拠点に時空扉で移動した。

しかしここも無人だったことを不審に思っていると、すぐにネロが現れ、ここまで案内してくれていたのだ。


そしてアクセルはこれまでの経緯をソニアに説明する。


話を聞き終わるや否や、ソニアは怒りを顕にし飛び出そうとしていたが、今はそれよりミラやステラの安全確保を優先したいとアクセルに言われ、思い留まった。


そうこうしていると、ステラが目を覚ます。


まだ起き上がる事が出来ないようで、顔だけを動かしミラを探していたが、隣に寝ているミラを見つけて安心した様子だった。


「ソニア、帰ってたんだ。おかえり」


「すまない。私は肝心な時に何も出来なかった……」


ソニアはそう言うと、ステラの手を握る。


「ステラ…私を信じてくれるか?」


「うん。何するの?」


その質問にはソニアは答えず、握ったステラの手が炎に包まれる。


「……あったかい…それに凄く気持ちいい」


炎に包まれながらもそんな感想がステラから溢れる。


「っくぅ……気休め程度の効果しか出せないのか私は……」


いまいち要領を得ない会話だったが、そこにアクセルが入ってくる。


「ソニア、お前……もしかしてその炎、治癒の力があるのか?」


「……はい。風の属性を得たことで新たに得た力です」


ソニアは料理を始めたころから常々考えていたことがあった。


それは自らが、自身の力である炎が破壊しか出来ない事への葛藤だった。


とくにステラは魔法で色々なことが出来た。それは戦闘以外でも。

そしてそれはソニアにとって、とても羨ましいことだったのだ。


ソニアは料理を通じて命に携わることで、破壊しか出来ない火以外の力を求めるようになったのだ。


そんな想いと共にソニアは風の力を得たことで、可能性は広がり、自身が持っていた火、光の属性と併せ、治癒の力を持つ炎を創り出したのだ。


そしてこの治癒の炎、ソニア自身に使う分には治癒ではなく、再生と呼べるほどの効果を出せて見せた。


もはや無敵に思えるその力だが、決してそんなことは無く、意図して創り出した力である為、ソニアが即死してしまっては当然その効果を発揮することはない。

さらに魔力を使用している為、魔力がなくなれば同様に発動出来ない。


修行を終えた後、他者にどれほどの効果を発揮出来るのか、皆に実験を兼ねて効果を試そうと考えていた矢先の事件だったのだ。


そしてやはり他者に使用する分には、高い効果が出ないようで、軽い擦り傷を癒すくらいの効果しかなかった。


それでもソニアは少しでも力になりたいと、ミラとステラ両方の手を握り、癒しの炎を灯し続けていた。


そして翌朝、ミラも無事目を覚ます。





▽▽▽



―2日後―


アクセルはミラ、ステラを浮島拠点に移し、療養させている。


ステラは流石は獣人である為、驚異の回復力を見せていた。

全身の骨が砕かれていたはずだが、カミルの献身的な治療と所持していたリーレスト産の薬を使い、みるみる回復していった。

そして現在は動けるくらいまでに回復している。


一方ミラは、呪いによって消耗した為、とにかく安静にするしか治す方法がなく、魔力風呂に浸かるくらいしか有効な治療法がなく、まだ全快にはしばらく時間がかかりそうであった。

しかしそれでも自身の足で立つくらいは出来るようだ。


アクセルはそんな2人のそばを離れず、浮島拠点で護衛を、ロア、ロイ、ネロはダンジョン拠点のそばで警戒を、ソニアは関わったことで狙われるかもしれないカミルの護衛のため、陰ながら見守り、この2日を過ごしていた。



そんな日のある昼下がり。


「これから私達は降伏宣言と呼べる謝罪をしにいく。決して勝手な言動や行動はしないように」


アリスはエレンのみを連れ、アクセル達の拠点を訪れる予定だったが、そこに急遽ナナとララが加わったことで、主にナナに向けて釘を刺す。


「わぁってるよ……」


アリス達はアクセル達の拠点に向けて出発する。

読んで頂きありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 自分たちで仕掛けておいて、降伏宣言とは、、 アクセルの落とし所に注目してます
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