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10話 街の中へ

カッチャ、カッチャとアクセルが歩く度、音が鳴る。


「流石に気になるくらい音がするぞ…」


「でもよ、せっかく見つけたんだし…」


旅の途中、アクセルが洞窟や地下に潜り見つけた“石”達だ。

変わった形の物から、宝石のように光る物、その辺に落ちている物と変わらない物、様々だ。

しかし見つけたからといって、すぐに採るのではなく、眺めて、触れて、と一頻り観察した後、貰っても良いか?なんて事を石に尋ねてから懐に入れている。


自然からの恵みは採りすぎてはいけない。これも以前教えられたことだ。


「それは分かるが、肝心の石も割れるのではないか?」


その言葉を聞き、急いで石を取り出すアクセル。

そしてホッとした表情のあと、荷物袋から魔物の皮を取り出し、個別に包み、それらをまた別の皮で一纏めに包み仕舞い込む。

それは子供が自分の宝物を大事にしている様子、まさにそのものだ。


ミラも半ば呆れた様子で見守っている。


(…ここだけ見れば歳相応の男の子なんだろうが…)


魔獣や魔物といった自分達に襲いかかってくる者にはその無邪気な表情は消え、まさに修羅の如く斬りかかるアクセルの姿、そして今見ている無邪気な姿を見比べて苦笑いを溢した。


(…息抜きも必要か…)


そんな子供らしからぬ考えをしているミラも、実はアクセルと同じ年齢だったことが判明している。




▽▽▽▽▽▽▽





「おらあぁぁ」


その声と共に最後の魔獣を斬り捨てる。


「…とりあえずこれで最後か」


「…そのようだ……ケホ」


街をあとにし、既に二月近く道無き道を進んだ二人。魔獣の襲撃も今ので三度目ほどだ。


「しかしミラの雷の魔法すごいな…詠唱ってやつもいらないんだな」


「あれくらいの魔法なら詠唱は必要ない。もっとも君に教えてもらった訓練の成果だが…」


すでにミラもアクセルと同様の訓練を行い、小規模ながら雷を自在に操っている。

そして母の形見である細剣を装備し、一緒に戦っていたのだ。


「…………なあ、やっぱりお前だけでも街に帰った方が良いんじゃないか?」


「またその話か…」


「魔獣だけじゃない。そもそも俺の復讐の旅だ。それに俺と一緒で怖くないのか?いつ俺の魔力が暴走するか、俺にも分からないんだぞ」


「問題ないさ。それに君の話が正しいなら世界を破壊する規模になるのだろ?少しくらい距離をとっても変わらんさ」


「………でもよ……それでも」


「それにだ、人の世界で隠れながら細々と暮らすより今の方がずっと良い。私も望みは薄いが自分の世界のこと知れるかもしれんしな……ケホ」


「………分かった。もう言わない。どうなっても知らないぞ」


「ああ、かまわない」


ミラもアクセルに破壊の魔法が宿っていることは理解している。しかしそれを分かった上で共に居てくれるのだ。


(…コイツだけは奪わせない。絶対に…)


そう誓うアクセルだったが、次の日、事態が急変する。


朝、目が覚めるとミラの様子がおかしいのだ。

顔は赤みを増し、呼吸も荒く、時折咳込んでいる。


実際はただの風邪のようなものなのだが、昨日の魔獣との戦闘、そしてアクセルは今まで病気になったことがないため、どのような状態か分からないのだ。


「どうした!?大丈夫か?もしかして魔獣の呪いか?」


「大丈夫だ……少し…休めば……問題ない」


そう言うミラに反し、見事に動揺するアクセル。


そしてある決意をする。


「昨日見つけた人のいる所に行こう。そこで治してもらう」


そういうとアクセルは、普段は背中に背負っている剣を腰に下げ直し、ミラが背負っているリュックを胸に、そしてミラを背負い歩き出した。


なんとか昼過ぎに到着したその場所は、周囲を山に囲まれた鉱山街といったところか。


街に入る直前なんとか自分で顔に布を巻き付けたアクセルは意を決し、門番に近づく。

しかし止められることもなく、すんなり街に入れた。


ここは大きな荷物、荷車などを持つ者は出入りの際、調べられるが、それ以外の者は適当なのだ。


(…何も言われなくて良かった。早くミラを治してもらおう)


今もミラは背で息を荒くしている。


そして作物などが並べられた露店を開き、大きな声で客引きしている男のまえに立つ。


「なんだ、ガキ!金はあんのか?」


「…これでコイツを治す薬をくれ」


アクセルは拾った拳台のキラキラ光る石を差し出しながら言う。


「ここは食い物を売ってる場所だ。ここじゃ買い取れん。他所いきな」


「…わかった」


「……チッ!この先を進んだところに鍛冶屋がある。そこで石買い取ってもらいな!」


「分かった。ありがとう」


「わかったらさっさと失せな」


男に教えて貰った場所にいくとそこには工房らしきものがあった。

扉を叩くアクセル。


「誰かいないか?……誰かいないか?」


そう繰り返していると


「うるせぇな!聞こえてるよ」


その声と共に乱暴に扉が開かれた。

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