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09話 前途多難

旅立つ決意を固めた二人だがまだ家に残っていた。


「この先の森を抜けたら村があって、その先に街っていうのがあるらしい。まずはその近くまで行こう」


「らしい?」


「俺はここから出たことがほとんど無いし、他の人間がどんな風に暮らしてるかも知らない」


「…………」


「あと俺はこの顔のアザのせいで見つかったら殺される」


「…………前途多難だな…」


これがきっかけでお互いの過去や、どのように過ごしてきたか改めて確認し合う二人。


「……なるほど。君の境遇は理解した。であるなら人と接する場合は顔に布でも巻いておけば、とりあえずは問題ないだろう」


「そうだな。まあそれでも出来るだけ人には会いたくない」


「それは私もだな…魔族がそのように人間達に認識されているとなると…」


「でもお前はツノとか翼ないし、わからないんじゃねぇか?」


「君が分かった様に、分かる者には分かるさ」


改めてミラを見てみる。

黒髪を肩の長さに切り揃え、今はアクセルの服に着替えている。魔族特有のツノや翼はなく、立ち振る舞いや言動から育ちのいい人間の女性にしか見えない。さらに顔もキリっとした美人顔で歳も同じくらいだ。


「そういえば何でツノとか無いんだ?出し入れ出来るのか?」


「そうか、まだ言ってなかったな。私のお母様は人間だ。私は魔族と人間の混血なんだ」


「………へぇ…」


「聞いておいてその反応なのか…」


「どんな反応して良いかわからないんだよ。…なるほど、だから他の魔族達とは魔力が少し違って感じるんだな…」


「魔力を感じる?」


またしても話し合いが始まる。こうして互いの理解を深め合う二人。


「よし、そろそろ行こう。今日中に森を抜けたい」


「ああ、わかった」


まだ日が顔を出して少し。集落から近隣の村まで大人の足で約二日。だが今の二人なら一日あれば抜けれるだろう。

ミラも数日逃げ回り、疲労や怪我で追っ手に遅れをとりはしたが、落ち着き休息もとれた今、身体能力はアクセルとほぼ同等だ。


そして何事もなく森を抜けた二人。

そしてアクセルの生まれた村が目に入るが…


「酷いものだな…」


以前の面影はなく、家は全て薙ぎ倒され、人も見当たらない。壊滅といっていい状態だ。

魔物にやられたのだろう。

しかしすでに日も落ちているため、村で野宿をすることした。


「ここが君の故郷か…」


「…親の記憶もほとんどないし、思い出もない…俺の親は師匠と先生で、故郷はあの森の中だ」


「…そうか」


淡々とそう言うアクセルだったがどこか寂しげだ


「朝も軽く聞いたが、魔獣とやらの説明を頼みたい」


ある程度落ち着いたところでミラが尋ねてくる。


分かったと一言告げた後アクセルが魔獣について語る。

姿は黒く細い四足獣で群れを成してくる。

かすり傷でもそこから呪いを受け死に至る。

呪い発動までの時間に規則性はない。

呪いを解く方法は呪いをかけた魔獣を殺すこと。その他の方法はない。

さらにこの呪いは死に至るだけでなく、呪いを受けた者を魔獣に変える。魔獣に変化する条件等も分かっていない。

どこから来てどこに帰るかも不明。

村や街には魔獣のみの侵入を防ぐ結界がある。

また結界に似た効果を持つ木があるが、その場所にある木が有効なのか、木そのものの種類が有効なのかは不明。


以上のことをアクセルは師に教わったことそのままにミラに伝えていった。


「…思った以上に厄介だな」


「ああ、おまけに身体も硬い…魔獣一匹に対して三人で戦うのが定石だって聞いてる。それかすぐに結界内に逃げ込むかだな…」


「我らにそれは厳しいな…であるなら、戦うしかないか…」


「一匹一匹はそんなに強くない。何年か前に俺も倒してる。師匠も一緒だったけど…」


「理解した。しっかり記憶しておこう」


そして魔獣に会うこともなく数日で街が見える場所まで来た二人。


「ここはなんともないみたいだな…」


「情報を仕入れに行くか」


「……ああ」


なんとも歯切れが悪いアクセルの返事だがそれも仕方ないかと思うミラ。


そして門番の男に近づくと。


「そこで止まれ。まずは身分証を確認する」


「「身分証?」」


「無いのなら手数料として一人300ポルンだ」


この世界の通貨の単位はポルンだ。1円=小銅貨1ポルンで、銅貨が10、銀貨100、金貨1万ポルンとなっている。

そしてこの街の宿、一泊の値段は一人50ポルンだ。


「…ここには入らない…最近魔物が近くで暴れてたはずだ。何か知ってるなら教えて欲しい」


「…近隣の村を壊滅させたってやつか…我らも警戒しているが情報は何もない」


「…わかった」


何も得ることなく街を後にした二人。


「情報も金もない。身分証とかいうのも、必要だなんて聞いてなかったな…」


「手持ちの金も100ポルンだけか…しばらくは金に頼る事は出来ないな」


「元からそんなつもりはない。自然から少し分けて貰えれば生きていける」


「厳しい旅になりそうだ…」


こうして二人の先の見えない旅が始まった。

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