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106話 人魚

「こ、こんにちは。まさか人魚か?人が魔法で変身してるとかじゃないよな?」


「あはは、そう人魚だよ。君…だよね?ドラゴンに乗ってこの大陸に来た人間って」


「お、おう」


幼少期、グレイから聞いた冒険譚。その中に出てきた人魚の話のオチは人が魔法で変身しているというものだった。そして人魚の目撃談はほとんどがそれであり、人魚は架空の、伝説の種族だと思っていた。


しかしその伝説の種族が目の前にいて、ソニアの背に乗って西大陸に来たことまで知っている。


色んな経験をしたアクセルだが、久しぶりに思考をめちゃくちゃに乱されていたのだ。


「あはは、君は面白いね!私はアクア。よろしくね」


「アクセルだ……………………んだ…」


「うん?」


「ホントに人魚はいたんだーー!!!!!すげぇーーー」


喜びが隠しきれないのか、両手を上げ大声でそう叫びながら周囲を走り回るアクセル。


それを見たアクアもケタケタと笑いながらそんなアクセルを見ていた。


この世界では海のことについてほとんど解明されていない。深く潜ることも出来ない為、まさに海は別世界なのだ。


「はぁ……すまない。興奮しすぎた」


「ホントにアクセルは面白い人間だね。人魚を見つけた人間の多くは捕らえようとするんだけどね」


偽りの人魚目撃談の中には当然、真実のものも混じっていた。だが謎の多い人魚には根も葉もない噂があり、人魚の肉を食べると魚のように水中で自在に動けるだとか、血を飲めば不死になれる、人魚と交われば世界を思いどうりに支配出来るなど、人魚にとっては極めて迷惑な理由で狙われることがあったのだ。


「あー、人魚ってのはさ、人間にとって伝説の生き物なんだよ…だから色んな噂があってさ…その、すまない」


「アクセルが謝る必要はないよ。それに色んな噂があるのも知ってる。だから私達人魚もそんな人間のことを悪く言って近付かないようにしてる。私は自分の目を信じるけどね」


「そうか……でも俺が言うのもなんだが、人間には近付かない方が良い。弱いくせに強く見せようとする馬鹿な種族だ……」


「多くの人間はそうなんだろうね…でもさっきも言ったけど、私は自分の目を信じる。少なくともアクセルは違うでしょ?」


「ああ、そう在りたいと思ってる」


その後もお互い時間を忘れ、語り合った。


元々人魚は世界中の海にいたらしいのだが、地上の争いや人魚が狙われるようになってからは、海流の流れが複雑な西大陸の海に集まったそうだ。


そして幸いなことにここ西大陸にいる人々はダンジョンにばかり目がいき、たまに地上の様子を見に来ていた人魚には全く気づかなかったらしい。


そしてたまたま地上に様子を見にきたアクアは、ドラゴンに乗った人間、獣人が混ざる一行を発見し、気になっていたようだ。


「ねぇ、アクセルって魂を4つも持ってるの?」


「え?いや、あー多分コイツらだな。紹介するよ」


こうしてロア、ロイ、ネロも紹介しアクアは驚き半分、喜び半分といった様子だ。


ロア達との関係もアクセル自身、ハッキリと分かっていない。


ロア達がアクセルを慕い、魔結晶を用いて契約と呼んではいるが、アクアはこれを同化と表現していた。


「狼の王達と同化を果たすなんてアクセルは只者じゃないねぇー!!このこのー!」


「へへ、まぁたまたま気に入ってもらっただけだ」


照れながらもそう返すアクセルだが、アクアの博識ぶりには驚かれる。


海中の生き物のことならいざ知らず、地上の生き物のことや上位変異種のことまで知っていたのだ。


まだまだ話し足りないが、日も暮れかけてきた為、別れを惜しみながらもそれぞれの帰路につくことになった。


「今度は仲間も一緒に連れてきて話そうね!人魚の国に紹介しても良いよ」


別れ際そんなことを言っていたアクアと別れ、宿に戻ると仲間に早速、人魚のアクアのことを話した。


「わぁー!いいなぁ!!ボクも会いたかったなぁ」


「ふむ、私も興味あるな。是非人魚の国とやらは行ってみたい」


「私も人魚は見たことがないので会ってみたいです」


色んな感想が出てくるが、別行動した本来の目的である情報を整理することにした。


アクセルは島に向かうはずだったが、アクアとの出会いでスッカリと忘れていた。


ミラとステラも大した情報はなく、申し訳ないと頭を下げる。


最後にソニアから食べ物は口にしても問題なく、また美味であり見たこともない物も多数あると締めくくった。


全員で店を食べ歩きをしようと盛り上がっていたのだが、アクセルが突然大声を上げた。


「あーーーーーー!!!!」


スパーーンと快音が響き、ミラに突然大声を出すなと叱られるが、アクセルはあることを思い出したのだ。


「さっきアクアの話ししただろ?俺もロア達もルプレックスって紹介はしたけど、狼の王なんて一言も言ってない。でもアクアは確かにロア達を見て狼の王って言ったんだ。なんで既に失われた言葉の意味をアクアは知ってたんだ?」


「ほぅ……ますます興味が出てきたな」


確かにダンジョンも気になるが、それと同じくアクアのことが気になり始めた。


しかし再会の約束はしたものの、いつ、どこでなど詳しくはしていない。


まだ別行動での情報収集は続けるため、アクセルも再度海辺には行く予定だ。


アクアと再会できればその辺しっかりと決めようと心に誓い、眠りについた。


読んで頂きありがとうございます

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