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08話 ミラ

ここまで書き置きです。次回の更新も頑張ります。

少しの肌寒さと、いつもとは違う固い感触で目が覚める…


ゆっくり顔を上げると、意識を失う前見た悪夢が現実となって襲い掛かり、自然と涙が溢れてくる。


「……なんで……なんで……なんで、なんで、なんでぇぇ」


そう言いながら拳を何度も地面に叩きつける。


魔物は見当たらず、周囲にはアクセルの声だけが響く。


しばらく嗚咽をもらしながら地面を叩き続けるアクセルの拳は、既に自身の血で染まっている。


「…みんなを、帰さないと…」


一頻り感情をぶち撒けたあと、ボソッと呟く。

以前グレイに教わったことだ。死んだ者は皆平等で、その後、大地に眠り、世界の魔力として帰っていく。


心は冷え切り、無感情でただ淡々と皆を集め、穴を掘り、そして土を被せていく…

土を被せるたび抑えていた感情が涙と一緒に溢れ、嗚咽を漏らす。


出来上がった墓に魔法の師であるネーラの杖を突き立てた。


そしてその前で膝をつき、剣の師であるグレイの剣を握りながら絞り出す様に口を開く。


「…あいつは俺が絶対に殺す…この剣で…………絶対に…」


その呟いたあと、墓に寄り添うように眠りについた…




その日の内に目覚めたアクセルは一度家に戻り旅立つ準備を始める。


亡くなった皆の私物は木箱に詰め、旅立つ前にでも埋めようと考えていた。


やるべき事を終え、明日からの旅に備え無理矢理にでも寝ようと寝床で丸まり目を閉じる。


しばらく経っても寝付けないアクセルだったが、突然飛び起きるように寝床から出て剣を握った。


魔族の魔力を感じ取ったのだ。


(…なんでこんなところに…)


外に出て集落の方に向かう途中、夜空の星とは違う光を見つける。


(…燃える鳥?)


ハッキリと姿は捉える事は出来なかったが、集落の上空を燃える鳥がゆっくりと飛んでいるのだ。

しかし魔族の魔力はあの鳥からは感じない。


(…今は魔族だ。もうこれ以上荒らされてたまるか…)




▽▽▽▽▽▽▽



(……どこに逃げれば……ッ!あれは燃える鳥?…あっちに)



「「イヒヒヒヒヒ」」


「大人しくしなぁ、姫さまよぉ」


姫と呼ばれた少女を追っているは魔族の二人。いずれも以前見た魔族より少し小さく翼もない。


一方、姫も既に傷だらけで、元は綺麗なドレスであろう服も所々破けている。


そして燃える鳥を目指し逃げてきた少女は拓けた場所に出た。


「ここは………うっ」


集落までたどり着いた少女は、周りに気を取られた一瞬の油断を突かれ、背中に火の玉が直撃してしまう。


「ご主人様の命令だ。大人しく、くたばりな」


倒れた少女にトドメを刺そうと迫る魔族。その手には剣が握られている。

剣が振り降ろされようとしたまさにその時、三人とは別の声が響く。


「これ以上、ここを荒らすなぁ!」


身の丈程の剣を振りかぶりアクセルは魔族の一人を肩から斬り裂いた。


「なっ?ガキがぁぁ」


仲間がやられてもう一人の魔族が激昂する。


その両手の掌には人の頭ほどの火の玉が浮いている。


「くたばれ、ガキがぁ」


その言葉と共に火の玉がアクセルに迫るが、アクセルは構わず魔族に一直線に向かう。

そして火の玉はアクセルに当たる事なく消し飛んだ。


「バカな…」


その言葉と共に魔族は首を落とされた。


少女は気を失っているようだ。家に連れ帰り手当てをした後、アクセルは魔族達を集落から離れた森の中に埋めた。



(…ここは…)


まだ外は薄暗いが、目が覚めた少女は手当された身体を確かめながら周りを見渡す。するとガチャっと扉が開く。


「…!君はあの時の…」


「?…あの時?…まあ良いか。生きてて良かったな…」


「君が手当てしてくれたのか…感謝する」


「……で、なんで魔族がここにいて、魔族に追われてた」


「その前に…私は魔王ジークの娘、ミラだ。君がお父様と戦っていたのは見ていた…」


「…なるほど…俺はアクセルだ」


こうして互いに紹介し合ったあとミラが経緯を話し始める。


「お父様と君の戦いのあと、お父様の部下の者達が反乱を起こした。私とお母様はなんとか逃げ出したが、お父様は恐らく…」


「………」


「お母様も門を閉じる為、残ると言い、それっきりだ…」


「…そうか…」


「…君は一人でここに住んでいるのか?」


「…昨日、みんな殺された…魔物に」


「…そうか…すまない…」


それからも様々なことを互いに尋ね合い、話す二人。まるで寂しさを埋め合うかの様に…


そして


「俺はここを出る。お前はどうする?」


「私は…私も共に連れて行ってくれ。人の街に馴染むことは出来ないし、何より一人は…不安だ」


「…わかった。一緒に行こう。よろしく頼む」


手を差し出すアクセルと、それをとり、握るミラ。


こうしてまだ幼い少年と少女は旅に出る。




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