プロローグ1
完全初心者がノリと勢いで書き始めました。至らない部分もあると思いますが、他作品更新の間にでも呼んで頂けると幸いです。
「はっ、はっ、はっ…」
薄暗い森の中を、走っている少年がいた。
見た目は四歳程だろうか。その幼い身体には泥や擦り傷が目立ち、度々振り返り、後ろを気にしているようだ。
そして背中には浅く、しかし大きな”斬り傷”が痛々しく刻まれている。
“お前は死ぬ事に意味がある。お前は全ての人の為に死ななければならない”。
そう言い、ある者は怪しく笑みを浮かべ、ある者は奇声を発しながら、追いかけてきて斬り付けられた。
幸い、斬られた瞬間、段差から転がり落ち致命傷には至っていない。
なぜ襲われるのか、どこに逃げればいいのか、何もわからないままとにかく少年は走り続ける。
立ち止まればあの男達に追いつかれる。
恐怖、痛み、飢え、渇き、疲労が常に付き纏い、少年の身体を蝕んでいく。
そして、とうとう限界を迎えた少年は、木に体重を預け、周りを見渡す。
男達は追って来ていないようだ。それを確認すると、今度はどうしようもない渇きが少年を襲う。
すぐ近くの木の根をかじり、中の水を吸い出す。そうして渇きを凌ぎ、目に付く草や葉を口に運び、飢えを凌いでいた。
そして小さな身を隠せる隙間を見つけて潜り込み、土や落ち葉を被って眠りにつく。
誰に教わったわけでもない。生きたいと思う本能がそうさせているのだろうか。
そして目を覚ましては、また走り出す。こんなことを、どれほど繰り返しただろう。
この日はポッカリ口を開けた様な空洞がある大きな木の洞見つけ、そこで眠ろうと転がり込む様に入った。
腰を下ろし、手を地面についた。すると手に土や石ではない、別の何かの感触がある。
(なんだ…これ…)
半分、土に埋もれた、それらを掘り出して、土を払う。
そしてしばらく眺めたあと、噛り付いてみた。とても硬くて食べれそうにない。
その後もなんとなく眺めていると、不思議と気分が落ち着き、眠気が手招きし始める。
そしてそれらを大事に懐にしまい、抱く様にその日は眠った。
目を覚まし、またしばらく進むと森を抜けて、川が見えた。まだ空は明るくない。いや、暗くなっていっているのだろうか。川から少し離れた場所に家らしきものが確認出来る。
誰か出てきたらどうしよう、逃げきれるだろうか。そんな不安を抱きつつ、頭を必死に働かせた。
しかし
(もう……いいか……つかれた……)
視界は霞み、走る力ももうない。
なるようになれと、覚悟を決めて、懐に入れた物を抱えてフラフラと歩き、川に足を入れた。
(冷たくて……気持ちいいな……)
片手で水を掬い、一口飲み込む。
(おいしい……)
そう思った瞬間、顔を川に突っ込み、限界まで水を飲む。
「ぷあっ、はあ、はあ、はあ……」
今まで常に感じていた渇きが嘘の様に消えていく。そして目を閉じ、息を落ち着かせる。
ゆっくり目を開け、ふと視線を横に向けると、地面に見たこともない草が生えていた。
(あれ……なんだろう)
近づくと地面の感触が変わる。
(柔らかい……)
意図的に柔らかくしてあるのだろうか。一定の範囲だけ土が変わっている。
少しの間、足の裏で感触を確かめた後、草に近づき、そして根元を持って力を入れる。
思ったよりも重くて抜けない。再度、力を入れる。
すると突然抵抗がなくなり、勢い余って尻餅を付いてしまう。
しかしその手には自分の腕より太く、白い根がついていた。
今までかじってきた根より、美味しそう。そう思い、恐る恐る齧ってみる。
瑞々しく、シャキシャキした歯ごたえ。たまにガリッと土を噛んでもそれが気にならないくらい美味しい。
そう思った瞬間、我を忘れてかぶりついてしまう。
夢中で食べていると、突然……
「それ、違うよ」
後ろからの不意な声に体が跳ね上がる。振り返るとそこには、少年と同じくらいの背丈だろうか。髪を2つに束ねた少女がいた。
「土、洗わないとダメだよ ?」
そう言い、手を差し出しながら近づいてくる。
即座に身を翻し、走り出そうとした瞬間、視界がグニャグニャに歪む。
少年は身体に力が入らず、そのまま地面に倒れ込んでしまった。
「うわぁ、だ、大丈夫?ど、どうしよ」
少女はあたふたしながら駆け寄ってくる。
すぐ近くに膝を下ろし何か言っているが、少年には届かない。
(もう……いいか……)
そう思いながら、少年の意識は闇に溶けていった。
読んで頂きありがとうございます。