光明が見えた!
すいません、色々とありまして更新が遅れました。
これからは楽観的に考えず、最低一日一話を基本に、出来たら二話投稿、を考えてやっていきたいと思います
化け物
そうとしか表現の出来ない怪物がそこにはいた。
それは神話の中、御伽噺の中、勇者の英雄譚、そこの中でしか見ることのない存在。
生きた蛇の髪を持ち、蛇のような下半身、辛うじて人の形だとわかる上半身には肩甲骨の辺りから、黄金の翼を生やしている。
顔を見ることは叶わないが、恐らく顔を見たその時、アレクは生きていないだろう。
あれこそは神話の化け物、モンスターや魔物などの括りでは表現しきれぬ存在の一つ、『ゴルゴーン』。
あんなものが実在していいのか!?
叫び出しそうになるが、それを無理矢理飲み込んで、アレクは撤退を決意した。
あんなもの、戦えるわけがない。
戦いにすらならない、一方的な虐殺だ。
アレクはゴルゴーンの方に意識をやりながら、少しずつ身体を引いていく。
だが、得てして予想外の時にこそ、予想外の事態は重なるようにして起こるもの。
髪の代わりに生えていた蛇とアレクは目があった、ような気がして、直ぐに角に身を隠した。
次の瞬間、壁の向こうで小さな蛇の鳴き声が聞こえる。すると、《サーチ》でわかるゴルゴーンの位置がこちらに移動を始めた。
くそ!、と心の中で毒づきながら、杖と片足を駆使して必死に逃げる。
ゴルゴーンか気づいたのは確実に、アレクが焦って音を立ててしまったせいだ。
そもそも、アレクは『スキル』の《遠見》を使ってかなりの遠距離から見ていたのだ。蛇がこちらに気づくはずなど無いというのに!
ドンドンと距離は詰まってくるが、どうやらゴルゴーンはここの地形を把握してはいないらしい。
色々な道をしらみつぶしに探し始める。
そして、その隙にアレクは何とか自分がゴルゴーンを感知できなくなる程の距離まで逃げる事に成功した。
アレクは取り敢えず、生き残れた事に安堵のため息を吐いて、ここら辺に他のモンスターがいない事に納得した。
恐らくは、あの化け物に怯えて逃げ出すか、殺されるかしたのだろう。
しかし、そうなると困るのはアレクだ。
彼は今の彼でも倒せるレベルのモンスターを倒し続け、『進化』しなければ復讐はおろか、ここから逃げ出す事も出来ないのだ。
少し考えてから、アレクはこの階層に見切りをつけて、別の階層に移動する事を決意した。
♢☆♢☆
階層を変える、そうは言っても階段なり、転送魔法陣なりを探すのは決して楽ではなかった。
理由はゴルゴーンだ。
というのも、アレクは完全に警戒されてしまったらしく、ゴルゴーンがアレクの《サーチ》の圏内に入った瞬間、別の方向に逃げるくらいしなければすぐにアレクの下に向かってこようとするためだ。
もし、下手な位置で見つかれば、片足のアレクでは逃げ切れない。
その事実は、アレクの探索速度を遅くさせ、精神的疲労をかさませる。
しかし、それでもアレクは成し遂げた。
探索を始めて3日、モンスターであったから耐えられたが、人間のままであれば衰弱死していただろうなと思いながら、アレクは目の前で光る魔法陣を見つめる。
魔法陣、遺跡などでよく見られるそれは、基本的には三種類に分類される。
一つはトラップ、踏み入れた瞬間に即死するものもあれば、新たなトラップを大量に起動したりする。
ただ、こちらについては『斥候』の常時発動『スキル』、《罠感知》で感知が可能なため、アレクは引っかからない。
二つ目は純粋な階段としての利用。
上か下か、それはわからないが別の階層にある魔法陣と繋がっており、入るとその階層に移動できるというもの。
そして、3つ目。
これがアレクの懸念事項、ランダム型転送魔法陣だ。
入った瞬間、遺跡内の適当な位置に飛ばされてしまうのだが、あくまでも移動用であるため、《罠感知》でも気づけない。
しかし、だ。
ここで怯えていては始まらないのも確か。
ランダム型だったとしても、ゴルゴーンから一度離れなければ、アレクはここで死ぬしか無いのだ。
アレクが魔法陣に飛び乗った瞬間、それは眩い輝きを放ち始めてーー
♢☆♢☆
光が収まり、アレクの視界に映り込んだのは先程までとはまた違う石組みの壁。
ゴルゴーンの部屋の壁が青銅色だったとすれば、ここのは藍色、とでもいうべきか。
とはいえ、これまでにアレクが見た事の無いものという点では同じだ。
アレクは周囲の確認と同時に、近くに魔法陣が無いかを探すが、見当たらない。
どうやら、先ほどの魔法陣はランダム型だったようだ。
出た瞬間に、やばいモンスターと戦闘!なんてのが無かった事に安堵しつつ、周囲のモンスターを確認する。
すると、いきなり近くに3つの反応が見えた。
西に二つ、東に一つ。
アレクは東側の方から見に行くことにする。
複数のモンスターに取り囲まれれば即死、その為、常に《サーチ》をかけながらのゆっくりした移動になってしまう。
普段なら5分もあれば踏破できる道を40分近くかけて移動すると、ゴルゴーンの時と同じように、通路の角からモンスターの事を覗き込む。
そして、ゴルゴーンの時程では無いが、似たような衝撃がアレクを襲った。
そこに居たのは、神話、とは言わないが、一流の冒険者達が語る英雄譚などに出てくる怪物、『ミノタウロス』。
牛の頭を持った人型の獣、そういうと気味が悪い程度の感想しかでてこないが、実際にはそんなものではない。
毛皮に覆われた筋骨隆々な身体、敵を威圧するかのような角、そして何よりデカイ。
身長は余裕で3mはある。
アレクは何も見なかった事にして、別のモンスターを探し出す事にした。
その後、西側に感知したモンスターやら、他の場所にいたモンスターなどを探し回ったが。
「どれもこれも存在すら眉唾な化け物じゃねーか!」
と、アレクは叫び出したい気持ちになった。
そう、何処を見渡しても今のアレクに倒せるようなモンスターなど存在しない。
いや、人間の頃でも逃げる事すら困難な化け物ばかりだ。
(ここはアステル遺跡とは全く別の遺跡なのか?モンスターの出現が明らかにおかしい)
遺跡は下に行けば行くほど強いモンスターが多くなる、ということはない。
階層の主、そう呼ばれる階層に一匹しかいない化け物は別として、通常のモンスターは基本、1階だろうが50階だろうが変わらない。
アステル遺跡はトラップの数とその難度こそ、遺跡の中ではトップクラスだが、それとは反比例に通常モンスターはそこまで強くなかった・・・筈だ。
色々と情報が多過ぎて、整理が追いつかなくなってきたアレクは、休憩も兼ねて背中を遺跡の壁に預ける。
が、少し妙な感触がアレクの背中を押す。
そう、何か出っ張った物がぶつかったような・・・
アレクがいやな予感を感じた、次の瞬間、一瞬の抵抗があったかと思うと背中の出っ張りはガコリと、妙な音を立てて押し込まれた。
そして、そこから、アレクが警戒する暇も無く、アレクの頭の上を壁から飛び出した刃が掠めた。
人間の身長であれば、丁度胸辺りがバッサリと持っていかれるような位置だ。
(あ、危ねえ・・・油断してた・・・)
考え事に意識を取られ過ぎれば、命を取られる。
それが遺跡だ。
アレクは自分の幸運に感謝しつつ、より一層気を引き締めようとして、自分の脇にあった石がまた元に戻ったのを視界の端で確認した。
そこでアレクはふと、思いつく。
自分で倒せないモンスターでも配置されたトラップを駆使すれば倒せるんじゃないか?
と。
遺跡内のトラップで死ぬモンスター、というのは意外と多い。
そもそも、モンスターに当たって壊れてしまうようなトラップばかりだったら、徘徊する魔物達のせいでトラップなど全て壊れてしまっているだろう。
アレクは見えた一筋の光明に、大きく裂けた口を歪ませた。




