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『アニヒレーション・アビス』

 

 火山の噴火ではない、何かが空中で弾けたような音がカナンのお腹に響く。


 「何かが空で争っているのか?まさか、アレクでは無いよな?」


 訝しげに呟くカナン、音を立てた犯人の片方は、彼女の予想通りだったが、答え合わせは現在不可能だった。


 何故なら、彼女のいる場所は火山の内部であるからだ。

 所々を溶岩が流れるそこは、外の灯など一切届かないが、溶岩や、そこらかしこで燃え盛る炎のお陰で、視界に困ることはない。


 問題があるとすれば、100度近い気温だが、魔物の中でもかなりの強さを誇るカナンが無意識のうちに垂れ流している魔力の壁を突き破る事が無い以上、何の問題もない。


 「おーい!アレクー!何処にいるー!」


 モンスターを呼び寄せることを承知で、アレクの名前を呼び続ける。

 が、不思議な事にアレクどころか他のモンスターが寄ってくる気配もない。


 というより、ここら辺からモンスターの気配が一切しなかった。


 カナンはアレクほどでは無いが、モンスターの気配探知はかなり長けている。

 匂い、音、魔力探知、それに加えて彼女自身の勘、そのどれもが一級品だ。

 

 そして、そんな彼女がずっと周囲を警戒しているというのに、モンスターがいそうな感じが一切しないのだ。


 カナンは妙だな、と思いつつも、更に奥へと進む事にした。



♢☆♢☆

 


 身体中の血が沸騰してるかのように熱い。

 死が隣を駆け抜け、肌が泡立つ。

 自分の繰り出した死が相手を掠る。


 拮抗する実力、絡み合うお互いの思考。


 「おおおおぁぁあ!!」

 「ウラァア!」


 アレクの腕がジエルの脇腹を抉る。

 相打ちで放たれたジエルの拳がアレクの頰に突き刺さる。


 お互いにたたらを踏みつつも、決して膝はつかない。

 腫れ上がった顔面、血塗れ、アザまみれの身体で相手を殺さんばかりに睨みつける。


 「これだ!これを待ってたんだ!これが、戦いだ!これが闘争だ!なあ、アレクゥゥウウ!!!」

 

 ジエルが狂乱して叫ぶ。

 アレクは叫びこそしないものの、その口角はずっと吊り上がっており、その瞳の奥には狂気の輝きが爛々と輝ていた。


 最早、自己再生に回す余力も無く、どちらが相手を先に殺すかしかない。


 これが、これこそが死闘だ。


 今、アレクの頭の中にはここが遺跡であることも、復讐の事も、カナンの事も何もない。


 ただ、目の前の強敵との戦いしかない。


 アレクが一歩踏み込みながら、ショートアッパーで、ジエルの顎を跳ね上げる。


 そこから更にもう一歩、踏み込んだ瞬間に、ジエルの爪先がアレクの腹に突き刺さった。


 よろめくアレクへと追撃するように、ジエルが腕を振るうが、アレクはそれを地面に転がりながら回避、起き上がってそのまま一度距離を取ろうとする。


 が、ジエルはアレクと並走するように走ってきていた。


 「シッ!」


 ジエルの腕が振るわれた瞬間、しゃがんでそれを回避、アレクの背後の岩塊が吹き飛ぶ。

 お返しとばかりにアレクが裏拳を放つが、それはジエルの掌で受け止められた。


 しかし、それはあくまでもフェイント、本命の蹴りがジエルの意識外から、脇腹に決まる。


 「ゴホッ」


 一瞬だけ出来た隙、アレクはそこを見逃さずに畳み掛けた。


 しかし、ジエルの耐久力も並では無い。

 八発程アレクが殴った辺りで、大振りの蹴りを放つ。


 それを食らうようなアレクでは無いが、それで発生する衝撃波は如何ともしがたい。

 一度、大きくバク転して完璧に躱す。


 着地際を狙って距離を詰めてきたジエルの拳を受け流しつつ、裏回し蹴りで相手の側頭部を狙うが、その脚を掴まれる。


 「馬鹿が!」

 「ッ!」


 ジエルが掴んだ脚ごとアレクを振り回して、岩塊に叩きつけた。


 巨大な岩が砕け散り、その後ろにあった崖の側面へとアレクの身体が埋まる。

 アレクは抜け出そうとするが、それよりも早く、ジエルの飛び蹴りが突き刺さった。


 そして、アレクが苦悶の声を上げる間も無く、蹴りに込められたジエルの魔力が炸裂。


 大爆発を起こすと共に、衝撃に耐えきれなくなった火山の一部が、地崩れを起こし、動かぬアレクの身体を瓦礫が覆っていく。


 翼を使って崩落から逃れたジエルは、崩れていく火山を見下ろしながら、その翼に魔力を貯めはじめた。


 「まだ、終わらねえぜ・・・」


 白い翼が黒く染まり、周囲の空間が歪曲する程に魔力が溜め込まれる。

 そして、ジエルがその名を叫ぶのと同時に、その破壊の一撃は放たれた。


 「『ミーティア』!!」


 ジエルの翼から、無数の黒い流星が降り注ぐ。

 一つ一つが、高い魔力密度を誇るそれは、着弾と同時に大爆発を巻き起こす。

 たったの七発で山を一つ吹き飛ばし、地面が抉れようが、その下からマグマが噴き出そうが御構い無しに、ドンドンと流星は突き刺さる。


 全て撃ち終わった頃には、山があった場所には巨大な穴が空いており、その中央部分、凡ゆる場所からマグマが噴き出している場所で倒れている何かが居た。


 ジエルはゆっくりと地面に降りると、倒れている白い物体、アレクの元へと歩み寄る。


 そして、ジエルが死んでるかどうかの確認をしようと腕を振り上げた瞬間、アレクは相手の足に手を伸ばした。


 だが、ジエルはそれを読んでいたようで、すぐに飛び下がると、楽しそうに笑う。


 「ククッ、やっぱこの程度じゃ終わらねえよなァ」

 「・・・」


 アレクは立ち上がろうとして、自分の右脚が上手く動かない事に気づく。

 それを気づかれないように、立ち上がるが、そもそも全身のダメージが酷い。

 はっきり言って、立っているのがやっとのレベルだった。


 そして、それはジエルにもわかっているようで。


 「だが、俺の『ミーティア』を食らったんだ。原型を留めていた事には驚きだが、それでも、かなりのダメージは残っているだろ」


 アレクは表情を変えない。

 既に相手は殆どこちらの状態を確信しているが、最後の確信をこちらから与えるつもりは無い。


 「ハッ、良いねえ。最後まで諦めねえその眼。最高に俺の好みだ」


 ジエルが構えるのと同時にアレクも構えるが、その動作は緩慢だ。


 アレクが構え終わるよりも早く、ジエルが距離を詰めてくる。

 先程までなら余裕で見切れていた拳も、今では添え手で流さなければ避けれないほどに身体の動きが鈍い。


 続けて繰り出される攻撃を凌ぐのが精一杯でとても攻撃にまで手が回らない。


 だが、それでもまだ負けが決まったわけではない。

 もしかしたら、程度の可能性だが、賭けてみる価値のある手段はまだ残っている。


 アレクは勝利を掴むための一手を確信するために、相手の攻撃一つ一つを慎重に見極める。


 そして、一発。

 

 大振りになった一撃を選んで、跳躍、そのまま魔力を翼に通して飛翔する。


 「逃がさねえよ!」


 ジエルもまた、飛翔する。

 だが、その速度は遅い。


 アレクはそれを確認した瞬間、翼に全力で魔力を込めて、そのまま体当たりでぶつかる。


 そして、ジエルはそれを横に動いてかわそうとしたが、完璧に避け切ることはできず、アレクの肩がジエルの胸を強打した。


 「ゴホッ!」

 「ッ!」


 お互い、体勢を崩して地面に落ちる。

 そして、立ち上がりながらアレクは確信したように、口を開いた。


 「やはり、魔力は殆ど残っていないようだな」

 「ヒヒッ・・・さてねぇ」


 ジエルはアレクへの意趣返しとばかりに、挑発的に笑う。

 だが、先程の動きからして最早魔力が無いのは明らかだ。


 「無理するなよ、そもそも俺とお前は同じ種族で、能力も殆ど同じなんだ・・・そんな俺を一発でノックアウト出来るような大技を使えば、そうなるのはわかりきってる」

 「やけに喋るじゃねえか・・・無理してんのはお前だろ」


 そう言うと、ジエルは再びアレクへと突っ込んできた。

 その動きは緩慢、だが、アレクは殆ど抵抗できずに殴り飛ばされる。


 「時間稼いで体力回復でもしたかったのか?甘い、お菓子ように甘いなァ!!」

 「ぐっ」


 そう、ジエルの魔力が尽きているという事はあくまでも、アレクの勝てる可能性があるというだけ、現状、殆ど身体が動かないアレクが、依然として窮地に立っていることに変わりはない。


 ジエルが、起き上がろうとしたアレクに蹴りを放つ。

 転がってなんとかそれを回避したアレクは、転がった勢いで立ち上がって、再び翼を使って空へと上がった。


 「落ちた機動力を残る翼と魔力で補うつもりか!」

 「うるせえよ!」


 アレクは、自由に動かない身体を背中の翼から発生する推進力で無理矢理突き動かす。

 

 そして、再びジエルに身体ごとぶつかりに行くが、ジエルはそれをあっさりと避けた。


 (お前が、同じ手を二度食らうような奴じゃないってのは知っている!)


 アレクはそれを予期していたかのように、地面に脚をついて、無理矢理ブレーキをかけるとジエルの避けた方向に再び突進する。


 しかし、その読み合いではジエルの方が上だった。


 まるで、アレクが突進して来ることがわかっていたかのようにジエルは振り向くと、アレクの身体を受け止めて、地面に叩き落とす。


 「楽しかったぜ〜、アレク」


 倒れたアレクをジエルが踏みつけた。

 地面に放射状にヒビが入り、アレクの身体から骨の砕ける音が聞こえてくる。


 「悪いな、アッサリと殺してやりたいところだが、生憎魔力が残ってないからなァ。このまま、油断せず、確実に殺すぜ〜」


 もう一度、ジエルが脚を踏み下ろす。

 それでも、アレクが死なないからもう一度、まだ足りないから、もう一度。


 何度も、何度も、何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度もーーーーーーーーーーーーーー


 遠のく意識の中、アレクの意識に語りかける何かが居た。



 『おい、下手くそ。そろそろ変わってもらおうか』



 その言葉が何処から放たれたものかはわからない。

 一体誰が言ったのかもわからない。


 ただ、アレクは何も考えられずにゆっくりと意識を手放した。


 そしてーーーー


 







 何度目ともわからず、ジエルが脚を下ろした瞬間、その脚をアレクの腕が掴んでいた。


 「何?まだ、動け・・・」


 ジエルが言葉を最後まで言い切る事は無かった。

 掴まれた足に途轍もない力が掛けられて、思い切り上空へと投げ飛ばされたためだ。


 「おいおい!何だってんだ!」


 ジエルが驚愕の声を上げつつ、翼を広げようとするが、それよりも速くアレクの姿がジエルの視界に映った。


 そして、アレクのかかと落としがジエルの身体をくの字に折り曲げ、そのまま地面に叩きつける。


 「ガァ・・・」


 苦しむジエルを見下ろすようにアレクは翼を広げて、空に佇む。


 そして、アレクが片腕を天に伸ばすと、アレクの身体に途轍もない量の魔力が満ち始めた。


 「滅せよ・・・『アニヒレーション・アビス』」


 呟き、天に向けていた手をジエルに向けた瞬間、アレクの背後に7つの巨大な魔法陣が現れる。

 

 「これで終わりだ」


 


 


 

『おい、お前の主人公いつも似たようなことばっかしてんな』


そんな暴言を友人から頂いて、心が折れかけた私です。

そんな事言ってんなら、お前書いてみろよと死ぬほど言ってやりたかった私ですが、それを言ったらおしまいだという事で、昔書いてた私の作品を見直してみました。


同じ事やってましたね。私って、ほんとバカ。


それ以外にも恥ずかしい文章、稚拙な文章、そして何よりひねりもクソもないクソつまらんストーリー。

もっと面白い小説を書きたいなと思った今日この頃です


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