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第8話 妹とスキル

「「はぁはぁ……」」


 俺と妹は二人揃って息を荒らげている。

 別に、エッチなことをしていた訳では無い。

 早く家に帰ると申し出た妹が俺の手を取ったかと思うと、思いっきりダッシュし始めたのだ。まぁ、そのダッシュが帰宅部の俺にとってはかなりきつかったってわけだ。

 妹も帰宅部なので、かなり息を荒らげていた。足は異常に速かったが。

 俺もエリート帰宅部の仲間入りをして、家に帰る早さを競っていればこれくらいどうってこと無かったのかもしれないがな。

 っと……。そんなことはどうでもいい。

 早く帰った理由を聞きたい。

 妹はぐたーっとしながら、ソファーに腰をかけていた。俺はお茶をコップに注ぎ、妹の前に持っていく。

 そして、俺も隣に腰掛ける。

 妹はお茶を一気に飲み、「ふー!」っとおっさんのような声を出し立ち上がった。


「ねぇ、兄貴」

「なんだ? 話したいことってやつか?」

「そ、そうなんだけどさ……」


 妹は再び顔を真っ赤にする。

 俺もさっきの色々な妄想を思い出し、少し恥ずかしくなる。


「あ、兄貴さ! わ、わ、私で……そ、その」

「な、何?」

「わ、私で! 下の……その、部分を大きくしたんだから!!」

「は、はぁ!? し、してねぇよ!」


 しました、ごめんなさい。気づいてましたか……!!


「何回も言わせんなっ!! してたの! だーかーら、罰として……課金させて!」

「おいおい……今は課金するゲームもないだろ? お前は戦ってんだし……。いや、俺が悪いのは百も承知だけどさ」

「あっ、認めたー! 兄貴が妹で大きくしたことを認めたー!」


 と、子供のようにはしゃぎ出す。

 こいつは恥ずかしくないのだろうか。


「お前も今、なかなかに恥ずかしいことをしてるぞ?」


 すると、また顔を真っ赤にする。

 表情がコロコロ変わって面白いなー。


「う、うるさい! じゃ、じゃあさ、罰として!」

「罰として?」

「この私と……!」

「ん?」

「ゆ、ゆ、ゆ、ゆ、遊園……」


 段々と声が小さくなる。

 遊園って何だ? 遊園??


「お、おう?」

「かなぃ……?」


 遊園かない??

 何言ってんだ、こいつ。頭狂ったか? また、ゲームか?


「何だって?」


 妹は林檎のように真っ赤な頬を更に赤くする。

 例えるなら、林檎からドロドロの血に変わるような感じだ。凄く分かりにくい例えだな……。我ながら、自分の知能の低さに落胆する。


「も、もう何でもない! 罰は保留!」

「そうか」


 まぁ、妹がそういうならそれでいいだろう。

 俺はそう思いソファーから立ち上がる。だが、その時。本題を思い出した。


「あぁー!!」

「どうしたの兄貴? 誰かにローターでも入れられてるの? 穴を掘られるの」


 ぐへへへー! とふやけたような顔になる。

 こいつ何なんだ? 腐女子なのか? 兄が掘られることがそんなにいいか?!


「ちーがーう! 俺も大事なことを思い出したんだよ」

「なに?」

「お前のさ、スキル振り分けー!」

「えっ……?」


 と、妹は不審者を見るような目になり体を抱え始める。

 いや、お前の属性とかの話じゃねぇからな!?


「いや、そうじゃなくて、真面目な話な! これからどんなスキルで戦っていきたいかって結構大事だなって思ったんだよ」

「おー!! 兄貴が私をエロ目線で見てるのかと思ったよー」

「違うわ!!」


 俺はそう言いながらポケットに入れていたスマホを取り出す。

 アプリを開くと、妹の顔が出てくる。

 それをタップすると、たくさんのスキルが出てきた。

 おぉー。凄いなぁ!

 スキル欄はゲームにあった要素だけでなく、現実でも使えそうな『社交性』『可愛さ』なんてのもあった。

 社交性って……。陰キャがそこに振ったところで突然話し始めたらおかしいし、まず話すのか?? よく分からないスキルも何個かあった。

 まぁ、これは俺が決める事でも無い。妹が決めることだ。


「お前のスキルだし、お前が決めろよ」


 そう言い、俺はスマホを妹に差し出す。

 すると、妹は少し興奮気味に「んー、分かった!!」と勢いよく受け取った。

 そして、妹は部屋の端に行き俺のスマホを目を輝かせ眺めていた。

 しばらく……といより、一分程で妹は「おぉー!」と言い始める。


「やけに決めるのが早いな、何にしたんだ?」

「ん、違うよー」


 ぷぷっ! と妹はおかしいくらいに笑い始める。

 遂には腹を抱え始めた。


「どうしたんだよ?」

「いや……これは!! ふははは!!」


 妹は大爆笑を続ける。


「どうしたんだ??」


 俺は妹に返された自分のスマホを見た瞬間。気が付けば妹の頭をポコンと殴っていた。


「痛っ! ムキになんなよ! クソ兄貴!!」

「るっせぇ!! プライバシーの塊だろ!!」

「これが?? ふふっ!! プライバシーもクソもないじゃん!!」


 あぁ、悪かったな!!

 確かに、これを見て笑う気持ちもわかるけどさぁ!!

 酷くないか!? お兄ちゃん泣いちゃうぞ?!

 そう、俺の目に映ったものは自分のLINEのトーク履歴だ。

 ここで隣に普通のLINE風景を並べて、ビフォーアフターとして見て欲しい。

 なんてことでしょう……!

 自分のLINEは公式(女優)と話しているではありませんか。

 友達の数も圧倒的に少ない。わぁ!

 そして、俺はすかさず妹の頭を殴ったってわけだ。


「うるせぇ!! いいから、スキルを決めやがれ!」


 すると、妹は「ふふっ」と笑った後スキルを決め始めた。


「これに決定!!」


 そして、妹はスマホを天に掲げた。


「何にしたんだ?」

「んーとね。……内緒!」

「いや、俺だってスキルを見ることが出来るんだぞ?」

「設定で見れなくした」

「はぁ!? そんな事出来ねぇだろ?」

「んー……出来たからした」

「戦いの時、スキルが分からなかったら不便だろ!」

「だーいじょうぶ。技は見れるし、第一技なんて増えてないからっ!」

「……それならいいけどさ」


 わざわざ内緒にするってなんだよ!

 まぁいい。妹はこういうやつだ。

 今後、さっそくスキルの効果が発揮されるわけなのだが。そんなことを俺は知る余地もなかった。

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