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妹と課金

 後日、俺が目を覚ますとゲーム音声が直接脳に語りかけてきた。


「妹さんが起きたら、詳しい説明を始めます」

「は、はぁ?」


 そして昼飯を食べ始め、正午を回った頃。


「妹さんが起きたようなので話を始めます」

「ちょっと待った。妹の体は起きていても、脳が多分起きてない」

「?」

「あー、気にしないでくれ。いつもの事だから!」


 俺は階段を駆け上り、部屋の戸をトントンと叩く。


「誰だぁ……」

「俺だよ。寝ぼけてないで、はよ起きろ」

「くらえぇ!! ウルトラスーパーキラリンビーム」


 そんな頭のおかしい子の声が聞こえてきたと思うと、何かが下に落ちるようなドンという音が聞こえてくる。


「大丈夫か!?」


 俺は急いで扉を開く。

 そこにはパジャマがはだけ、エロい格好で倒れ込む妹がいた。

 足をだらんとさせ、外れかけたボタンのおか……せいで胸がちらりと見えている。


 ……健全な兄として興奮してなんかいない。興奮してなんかいない。


「おーきろ!」


 トン! と頭を軽く叩く。


「ふぇえぇぇえ!?!?」


 すると、妹は顔を真っ赤にさせ、俺を弱々しい腕でポコスカと殴ってくる。


「な、なんで兄貴が無断で部屋に入ってんの?!?!」

「お前がベッドから落ちたっぽかったから心配したんだろ!!」

「は? 落ちてないし!! 普通に寝てましたー!」

「はぁ?? それなら、これは覚えてるだろ! う、ウルトラスーパーキラリンビーム!」

「えっ……。キモっ!!」

「ガチでドン引きするのやめてもらえる?! お前の真似をしただけだぞ??」


 そんな下らない口喧嘩をしていると、仲裁を取るような形でAIの声が聞こえてくる。


「本当に仲のいい兄弟なんですね……。話をしてもいいですか?」

「「それはない!」」

「分かりました。謝りますから。それでは話を始めます。まず、敵の探し方です。戦闘の方はとりあえず……大丈夫ですよね。ゲームの操作に似ていますし」

「ですね」

「探し方なんですが、これはかなりアバウトです。モンスターやらに取り憑かれてそうな人。としか言えません。言動や行動がおかしかったりします。例えば……。急に道中で発狂し始めたり」

「それはYouTuberじゃないか!?」

「ボソボソと何かを言い始めたり」

「それは陰キャじゃないか!?」

「まぁ、アバウトなんですよ! あと、人の目に付かない物陰やらにいることもありますね」

「本当に妖怪ウォッチじゃねぇか!! 怒られるぞ!?」

「先に謝っておきますか。ごめんなさい」

「そういう問題じゃねぇ!!」

「まぁ、そんな事はどうでもいいです」


 ……良くはないけどどうでもいいや。


「敵を見つけた後の対処法は分かりますね? この前のようにしてください」

「はい」

「でもさー、武器とかどうすんの?? 初期装備だけー?」

「お、妹さん。筋がいいですね。肝心な武器。今までは、敵が落とした素材やら、課金でゲットしていましたね?」

「そうですね」

「モンスターを倒して素材を集める。というのは変わりません」

「それだと、武器が出ずらくない?」

「そうです。だから、そこが違うのです。『課金は命……』です」

「「?」」

「お二人さーん。不思議な顔をしてどうしたんですか??」


 どういうことだ? 課金は命? 課命? でも、命は一つだろ? 追加?

 あぁ? 意味が分からなくなってきた。


「どゆこと?」

「それな」

「社会人とニート以外、金をあまり自由には使えませんよね?」

「はい」「え?」


 あれ? 妹と意見の食い違いが起きた。

 金なんて、バイトをしたって限度があるもんなぁ……。それを言ったら、社会人やニートも同じなんだろうけれど。


「クレジットって、ATMがある限り無敵じゃないの、、?」


 俺は妹の後頭部を強めに叩く。


「痛っ!! 何すんだ!」

「当然だ! こいつ、ニートと同じ考えだ……」

「聞こえてるよぉ!?」


 妹が骨をボキボキと鳴らす。


「まぁ、話を戻しますよ? 課金は命。と言うのはですね……。月に課金できる額が決まってるんですよ。あまり、やりすぎると命を落とします」

「!? 課金怖っ! ATMは無限だよ!? おかしいじゃん!! ゲームの設定と違う! 最低!!」

「黙れ」

「なので、課金のし過ぎは命に関わるって事です。1000円くらいなら、筋肉痛程度で済みます」

「「1000円!?」」

「普通に高くないか!?」「安くない!?」


 もう、やだ。この妹!!


「上限は1万円くらいにした方がいいかもしれませんね。それを超えると……骨折とかしちゃうかも……」

「「1万!?」」

「高過ぎない!?」「安くない!?」


 俺は無言で妹の後頭部をもう一度叩く。

 こいつは何円課金してんだよ!!


「痛っ!」

「まぁ、ルールはこんな所ですかね。本戦はやって見ないと分かりませんね。敵のいそうな場所に移動しましょう」


 そう言うと、Googleマップのようなものにピンが刺された。


「ポケモンGOだぁ!!」

「おま! いろんな意味でやめろ!」


 これから先、どうなるのやら……。

 俺は、湿布をたくさん買おうと心に決めた。

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