第4話 妹、世界を守る
こんな出来事に巻き込まれてしまったので改めて、このゲームについて説明しようと思う。
ゲーム名は『ジョブチェンジファンタジア』。正直、この名前は製作者のやる気の無さを感じてしまう。
多分、何も思いつかなかったんだろうなぁ……。
だが、このあまり良いとは言えないゲーム名に反し、内容はかなり良い。
フィールドは3Dになっていて、敵に当たると昔懐かしい、単純操作のRPGになる。
ストーリー的には、世界を支配しようとする魔王軍。ショッキーを倒すというゲームなのだが……。
ショッキーの戦い方が色々な魔王を見てきても、かなり下劣な方なのである。
なんと、味方や人の心を乗っ取り、その力を使うという最悪集団だ。
まぁ、自分もストーリーは終わっていないので、詳しい説明をする必要は無いだろう。
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「何をして欲しいんだ?」
「サッキノチカラデセカイヲスクッテホシイ」
「……は?」
「スケール壮大だね!! 楽しそー!」
「いや、楽しくねーよ……」
実際、何かが起きているのは分かったけど、さっきのゴブリンといい殺しに来ているのは間違いないよな。
妹をそんな危険な目に合わせるわけにはいかない……。
「デ、テツダッテモラエマスカ?」
「断る。断固拒否だ」
「えぇ!?!? 何で?!」
「お前が一番驚いてんじゃねぇよ! 危ないだろ! 死んだらどうすんだよ!」
「戦いたいもんー! 楽しかったもんー! 感覚なかったけど!」
「まず、その時点で危ない! 記憶が飛んだりしたらどうするんだ!」
「知るか!」
「イケンガワカレテイルヨウデスネ……」
「ならさ、しっかり説明してくれよ。今、何が起きているのか」
「ワカリマシタ……。アレハ、ジョブチェンジファンタジアノ、ホントウノセカイデオキタハナシデス」
――数日前
「ふぃー! 勇者さん! お疲れ様ー!」
「あぁ。あいつら、ひぃひぃ言いながら逃げていったな!」
「流石、勇者さんですよ!」
なんて、私も呑気なものでした。
ですが、後日。
勇者達はあっさり負けてしまいました。
所詮、モブキャラの集まりだったんでしょうね。ゲーム内のストーリーと一緒です。
「ちょっと待ったァ!! 泣けてくるわ、それ!」
「そうですか? まぁ、いいです。話を続けます」
「てか、普通の喋り方出来るのかよ!」
そして、私たち勇者側が守っていた場所には何故か知りませんが地球と繋がる通路があったのです。
「「いや、何でだよ! ゲームの設定と違うな!」」
「そうですか? あながち合ってません? ゲームの設定では攻められた、あの世界に地球から来たあなたが残された勇者達と共に助けるって感じじゃないですか」
「確かに、似てるかもね!! なら、私達は英雄だ! よし、やろう!!」
「だから、話を!」
「まぁ、続けます」
そして、そこから地球自体を乗っ取ろうと動きを進めました。
最近、謎の殺人事件が多発していますよね。
それは、ショッキーの仕業です。
「待て! あえて、最初このゲームをした時は突っ込まなかったけど、ショッキーって完全にアウトだよね!?」
「製作者に言ってください」
「あっ、はい」
奴らの攻撃手段はこのゲームの基本となる、精神攻撃。
それに、さっきのゴブリンのように直接攻撃で殺しているようです。
「は、はぁ? で、なぜ俺達に? しかも、連続殺人事件って、東京で起きてるやつですよね。ここ、関係無いです」
「東京が……というわけでは無いんです。東京に通路が繋がっているので、そこに多く現れています」
「は、はぁ? で、何で俺達なんですか?」
「運命だよ! 私達はヒーローなのだから!!」
「うるせ!」
目を輝かせて、馬鹿なことを抜かす妹。
ため息がこぼれそうだ。
「怒らないでくださいね?」
「は? 内容によっては怒りますよ。ランダム☆ とか、アホなことは抜かさないでくださいね」
「ランダム……では無いんですけど、プレイ時間が……多かったから?」
「……!! 運命!」
「うるせぇ!! 馬鹿なんですか?!」
「いや……。あのですね、実の事を話しますと……」
「と?」
「あなた方はイレギュラーなんです」
「「??」」
妹と顔を見合わせ何の事だ? と、顔で伝える。
「説明させてもらいますね。世界を救ってもらうのならば、もちろん投げ出さないでやってくれるような人がいいです。それは分かりますよね?」
「まぁ、勇者が投げ出したりしたらヤバいもんねー!」
「そう……だな。魔王の前で『ごめんなさい!』なんて、言って土下座して逃げるようじゃ、ダメだからな」
「まぁ、そんな理由でこのゲームを愛していたと思われるランカーの方々に頼んでいるんですよ。……ぶっちゃけた話。ニートも多いし」
「いや、ぶっちゃけんなよ!!」
夢もクソも無いじゃないか! ニートが勇者なんて、ラノベだけだろ!
あんな、面倒くさそうな異世界で地球上ですら、働けないやつがまともな事を出来るとはとても思えない!
「まぁ、話を戻します。お兄さん? あなたは何も関係ないんですよ」
「……は?」
「もう一度言いますよ。何故か、妹さんにお願いしに来たのにあなたまで巻き込まれてしまった! そういう訳です。基本は世界を守ってくださる方は自分で敵を見つけて、自分の意思で戦いますからね」
「そなの! なら、やる!! 兄貴関係無いじゃん!!」
「分かりました。ありがとうございます! お兄様もそれでいいですね?」
「だから、ちょっと待てって!」
「こちらの方は契約が済んたのでとりあえず話す事は無いのですが……」
「分かった! 少し俺の話を聞いてくれないか?」
「……はい? 何ですか?」
「俺らって、異例な訳だよな? だったら、二人一組で戦わせてくれないか?」
「妹様がそれでいいのなら……」
「……んー、おっけ! じゃあ、頑張ろうね!! 兄貴!」
「お、おう!」
「それでは、改めて後日。更に説明をさせてもらいます」
そう言うと、その謎の声は聞こえなくなった。
「じゃあ、兄貴……。その、改めてよろしく!!」
「よろしく」
こうして、俺らは世界を守る?? 二人のバディとなった……!