表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/6

プロローグ

奴隷とはなんであろうか?


人でありながら他者に所有されるもの。


人でありながら権利や自由を有しないもの。


人でありながら苦役や労働に従事するもの。


一般人の感覚からすれば、こんなものだろう。


だが、僕は改めて問いたい。


奴隷とはなんであろうか?、と。




「おい高橋!なんだこの書類は!」


フロアに怒号が響く。このフロアの主たる男性からだ。


「はいぃぃぃ」


すぐに高橋と呼ばれた男性が飛んでくる。そして彼は言葉を続ける。


「課長、先程提出した書類に何か…」


「何かじゃない!よく見ろ!間違いだらけじゃないか!お前ふざけてるのか!あぁ!」

課長は高橋の言葉尻に被せるように怒鳴った。怒髪天を突く形相でさらに続ける。


「数字は間違っている上に誤字もある!しかもこの案件は江田サービスのだろ!秀栄産業宛てになってるぞ!」


「も、申し訳ありません!すぐに訂正を…」


高橋は言葉を紡ぐ。しかし…


「いらん!お前はさっさと大川紙業へ集金に行ってこい!未払い代金の回収だ!」


にべもなくあっさりと高橋の言を切り捨てる課長。慌てて高橋は外出の準備をする。


「わ、わかりました!すぐ行きます。…行ってきますー」


慌ただしくフロアを出ていく高橋。すると課長の側にいた職員が話しかける。


「課長、あいつまたやらかしましたね。心中お察しします。」


「全くだ。毎日毎日やらかしやがって。あいつは俺の寿命を削る気か?」


「ははは…しかしあいつもう30なのになにやってんですかね。仕事できないにも程がありますよ。」


「本当だな。一体何回ミスれば気が済むんだ。フォローするこっちの身にもなってほしいもんだ。」


課長と職員は高橋の不出来について話し続ける。その頃高橋は大川紙業へ歩いていた。


『ひぇぇぇ!またミスっちまったぁ!どうしよう…課長の顔青筋だってたよ…トホホ。』


一人思いながら歩く高橋。彼はさらに続ける。


『はぁ…自分ではミスが多いのもわかってるし、何回もチェックしてるはずなんだけど…全然ミスが減らないよ。自分なりに色々考えて真面目に取り組んでいるつもりだし、ふざけてなんていないんだけどなぁ…』


一人心の中で呟きながら歩き続ける。それからも、一人考え、悩み、嘆き、思索しながら歩く高橋。しばらくすると大川紙業の近くまで来ていた。


あとは大通りを渡り、路地に一本入れば目的地だ。厳つい巨漢である大川紙業の社長が自然と思い出され、ちょっとだけげんなりする。


「あの社長なかなか払ってくれないから大変なんだよなぁ…」


そんなことを独り言ちる。と、街中の喧騒の中に耳をつんざくような音が聞こえた。


「え?」


信号待ちをしていた彼は、そう呟きながら音源に目をやった。すると巨大な物体が自分へ迫っているではないか。


「トラック!?」


そう呟くも、突然のことに身体が動かない。ブレーキ音だけが、脳に突き刺さる。


高橋の目には、スローモーションのように景色が映った。やがて彼とトラックの距離はゼロになる。そして刹那の時間差ののち、彼の意識は唐突に消失した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ