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代行神シエルにおまかせください!  作者: 村崎 芹夏
「はい、おまかせください!」
42/52

はい、おまかせください! Ⅳ

「あなた達、どうせ『反神教団(エリクタス)の調査を自分たちにやらせよぉー!』とか言うつもりなのでしょう?」


「「っう……」」

 

 まるで心の中を読まれているかのように、意図していたことをズバリ当てられてしまった二人は同時にバツの悪そうな顔を見せた。


「どうやら図星みたいね。ダメよ。あなたたちには今やるべきことがあるでしょう。そちらに集中しなさい」 


 やや厳しい口調の割にレーミアの表情はどこか嬉しげにも見える。彼女の言うやるべきこと、これはシエルの補佐という事を指しているのだろう。アネット、ユウナの両名とも、シエルを釣り合いに出されてしまってはそれ以上何も言えず、口を紡ぐしかなかった。この短期間でシエルという存在が周りにとって大きなものになっているのかが伺える。そして、レーミアもそれをわかった上で、こういう手段をとったのだろう。


「とにかくエリクタスのことはあたしに任せておきなさい。……それともあたしじゃ頼りなくて信用できないのかしらー?」


「いえっ、決してそのようなことは……それでは、そちらはお願い致します」


 本日何度目かのレーミアの悪戯っぽい笑顔を受けたアネットは渋々ながら了承の意を示した。横に居るユウナも残念そうに顔を伏せているが、同意した模様である。


「とりあえず今日はそれを伝えに来ただけよ。またなにか進展があったら連絡するわ」


 そこまでいうとレーミアはぶらりぶらりと興味深そうに神務所内を見て回り、とりとめのない世間話をして、ある程度時間が経ってから「このあともまだまだやらなければいけないことがあるの」っと言って神務所をあとにした。どうやら神の居城(グラズヘイム)に帰ったようだ。


 グラズヘイムは神の居城という名前に反して、四神の居住地として建てられたものではなく、神聖な儀式の場として使われている。無論、テトラ・テオスやその仕騎達は城内に自由に出入り、使用が可能となっている。四神(テトラ・テオス)の一人、レーミア・フィエルは、フィンガロー東区の端地に神務所兼自宅の建物を構えてはいるが、一日の大半をグラズヘイムで過ごし、"移動がめんどくさい"という理由からそのまま宿泊することも珍しくはなく、半分くらいはそこに住んでいるようなものであった。


 レーミアが代行神の神務所を去ってから、ノウラントの捜索を許可されず、やや落ち込み気味のアネットとユウナ。そんな二人の気持ちを切り替えさせたのは、やはりムードメーカー的な存在になりつつある、咲き誇る花の様な笑顔を浮かべたシエルであった。


「さぁ、二人の気持ちも分かるけど、レーミアさんの言ったとおり、私たちは今出来ることをやろうよ! まだまだ忙しくなりそうだよ!」


「うむっ、シエルにそう言われては仕方ないな」


「そうね、うちはシエルに付いて行くって決めてるし」



 それから更に少しの時間が経った《シエルの神務所》には、ここ数日の中で初めて、来訪者の途絶えた安息のひと時が訪れていた。しばらくの間、目が回るような忙しさにテンヤワンヤしていた少女たちにとって、この空いた時間はとても新鮮なものであり、一息入れるには打って付けの時間となった。


 神務所の中央に置かれた大きな円形のテーブルに備えられた木質の椅子に腰を掛けるシエル。その隣に、疲れた体を癒すようにストレッチをしながらユウナも座り込む。そんな二人に少し遅れて、銀鎧(ぎんかい)の上からエプロンを纏うという珍妙なファッションのアネットが、双子の月と双子の太陽が描かれた、お洒落なティーカップとティーポットを乗せたトレーを持って現れ、同じくシエルの隣へと腰を落とす。可愛らしいティーポットの中には既にお茶が準備されているらしく、僅かな湯気と共に、爽やかでほんのり甘い香りを注ぎ口から漂わせていた。


 アネットは手際よくそれぞれのカップへとポットの中身を注ぐ。カップの中で揺らめく金色の飲み物は、より一層強くなった心地よい香りで彼女たちの鼻腔を優しく(くすぐ)る。十人以上が優に囲うことが出来るテーブルに隣同士で並んだ三人は、優雅なティータイムを楽しむ。


 しばらく、女子会のような雰囲気で何の取り留めのない話を楽しみ、手にしたカップの中身がほとんど無くなりかけたとき、シエルがふと思い出したかのように口を開いた。


「あっ、そういえば私大事なことを忘れてたよ!」


 アネットとユウナが同時に「何を?」といったような不思議そうな顔を浮かべる。それに対し、シエルは嬉々とした表情で応えた。


「魔法だよ魔法! 私、使えるようになったんだよね?」


「魔法……あぁ、神力のことか。そうだな、一応、正式に神聖を受けたから代行神とはいえ、多少なりとも行使できるはずだ」


「ねぇねぇ! その神力ってのはどんなことが出来るの!?」


「それは私にも分からない。神力で発揮される力は人ぞれぞれなんだ。戦闘に特化した力もあれば、驚異的な治癒力もあるし、ゲンロウの様に超常的な装置を作り上げるという変わり種もいる。そうかと思えば、特化しない代わりに各方面に対してバランス良く力を発揮する場合もある。神の領域とまで言われるその力の大部分は未だに解明されておらず、未知の領域なんだ。だからシエルがどんな力をどれだけ有したのか、というのは実際に力を行使して見なければ分からない。ただ、与えられる力のタイプは全くのランダムというわけでもないらしい。レーミア様曰く、『神力はその者の内面に影響される』とのことらしい」


「シエルは絶対に戦闘向きの力じゃないわね」


 ユウナが可笑しそうに笑う。アネットも同意したように頷いた。


「確かに私は戦ったりするのは無理かなー。んー、空を飛べる力とかがいいかな? あっ、でも私が空を飛べたらグーちゃんの背中に乗る必要がなくなっちゃう……それは嫌だなぁー。後は……センスティアのいろんな景色をもっともっと見てみたいな!」


「ハハハっ、それはもう神力というよりもシエルのお願い事みたいになってるな」


 またしてもアネットとユウナがシエルの天然っぷりに誘われて笑いをこぼしてしまう。シエルも自分の話がだんだんとズレてしまっていた事に気付いて、気恥ずかしそうに顔を赤らめた。


「まぁ、神力に関しては焦ることはない。然るべき時が来れば自ずと使えるようになると、昔レーミア様がおっしゃってたからな」


「そっかー。じゃあその時までのお楽しみって事だね」


 シエルはそう言いながら、描かれた月と太陽がひとつのストーリーを織り成しているカップを口に当ててからグイッと傾け、最後の一口を綺麗に飲み干すと、「ご馳走様でした」と礼儀正しく感謝を示した。小休憩が終わることを告げる、神務所の入口の扉に備えられたベルがその身を揺らして小さな音を響かせたのはそれとほぼ同時であった。


「「「こんにちは! シエルの神務所へようこそ!」」」」


 本来の仕事に戻るべく、急いでティーセットを片付けた三人の少女達が賑やかに揃った挨拶でそれを出迎える。

こんにちは、作者の村崎 芹夏でございます。 


気が付けば既にGW目前。年が明けてから4ヶ月が経とうとしているのですね。最近本当に時間の流れが早く感じます。私は有限の時間を有効に活用できているのだろうかっと考えると、ついつい感慨深くなってしまいます。


とはいえ、そんなこと考えたところで答えなんてでなので、私はいまやりたいこと、書きたいものに対してひたすら突き進むのみです!


さて、今回は動きとしてはさほどありませんが、次回から少しずつストーリーが展開していく予定です。


GW中に執筆が進めば更新できるかな? そこはちょっと曖昧なのでお約束はできませんが、極力がんばります^^;


ではでは、今回も読んでくださった方々、ありがとうございました。また次回更新した際にはよろしくお願い致します。



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