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代行神シエルにおまかせください!  作者: 村崎 芹夏
「それでも私は……!」
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それでも私は……! XV

 アネットはユウナにそっと近づくと、短い呪文を六ワード分組み合わせた一つの長い詠唱を行いながら、ユウナの両手を拘束する黄色い円光の魔導錠に手を伸ばす。すると、ユウナの手の自由を制限していた桎梏は、しゃらんという音を立てて砕けると、そのまま光の因子は微かな余韻を残しながら消滅した。



「あなた達正気なの!? 友達って……」


 嬉しそうにニコニコと喜ぶシエルの言葉に被せるように声を荒らげたユウナは、ロングルの森での戦闘で泥だらけになった顔に理解出来ないといった表情を浮かべている。


「嫌……かな?」


「嫌とかそういう問題じゃなくて……うちはシエルの事を」


 思いつめる様な表情で訴えるユウナの言葉が終わらないうちに、シエルは凛とした声でそれを遮った。


「そのことはもういいの!」


「なんで……なんでシエルはそんなに普通でいられるの!?」


 ユウナはそんな嘆きのセリフとは裏腹に、目の前でシエルがどうしていつものように全てを包み込むような優しい笑みを浮かべているのか……それがほんの少し分かるような気がした。それはシエルという少女の事を少しずつ理解し始めていたからである。シエルは純粋に誰かのためになりたいと思っている。真っ直ぐな気持ちで何事にも立ち向かっている。たぶんセンスティアが大好きなのだろう。自分と同じように……今ならはっきりと分かる。シエルはノウラントから与えられた事前情報とは全く異なる人間だ。どういう経緯かまでは分からないが、正式な手順で代行神の座に就き、新米ながらも精一杯この世界のためになろうと頑張っているのだ。  

 ユウナはそう自分の中で整理し終わった途端に、心の奥から罪悪感の渦が止めど無く湧き上がる。すると、パチリと大きく開いた藍色の両瞳がじわりじわりと湿気を帯び、それは瞬く間に大粒の涙へと変化していった。自分はなんて事をしてしまったのだろうか……ノウラントに洗脳されていた可能性があるとはいえ、こんなにも心優しい代行神にあらぬ罪を着せるどころか、その命を狙うなど……そのうえでシエルは自分を許すと言った。それがどれだけ凄い事かなど想像に余りある。 


 一頻りの罪悪感が襲った後、次にユウナが考えたことは償いであった。間違いを犯してしまった自分は当然それを償わければならない。命をもって~などという事をシエルが望まないのは彼女の性格からしてもはや明白である。ならば一体どうすれば……ユウナの中で様々な感情が土石流のように流れ駆け巡る。


「最初は変な先入観があったからゴタゴタしちゃったけど、私はユウちゃんとしっかりとお友達になりたいの。もう一回最初からね!」


「友達……ウチと……?」


「そうだよ! ユウちゃんの事を色々知りたいし、私の事ももっと知ってほしいの。勿論アネットもね!」


「でも……でも……」


 心が揺らぐユウナの中に浮かぶ不安を読み取ったのか、シエルはハキハキと明るく、いつもの調子で言葉を重ねる。


「はーい、細かいことはなーし。大丈夫だよ、もしも次にユウちゃんが道を間違えそうだったらちゃんと私が呼び戻すから!」


「――っ!!」


シエルが発する言葉の何もかもが暖かい。んだ心を癒してくれる魔法の笑顔。ユウナはこの瞬間に心の中である事を决めた。


(ウチは――シエルのためになりたい!)


 罪滅ぼし……そんな大層なものではない。そもそもこんな事で許されるとは思ってもいない。しかし、シエルのために……こんな自分と友になりたいと言ってくれた代行神の少女のためなら何でも出来る。そういった不思議な感情がユウナの中で止めどなく込み上げていた。


「え、えっと……シエル、本当にウチなんかが友達でいいの?」


「ユウちゃんがいいんだよ!」


 恐る恐る、念を押して確認するユウナに対して、シエルは相変わらずの天真爛漫な笑顔で"が"の部分をやたら強調してそれに応えた。それ聞いたユウナは、今まで心の中で様々な感情を塞き止めていたダムが決壊したかのように頭の中が真っ白になり、大粒の涙で濡れていた顔が更なる大洪水を起こしグシャグシャになりながら、途切れ途切れの言葉で呟く。


「あり……がとう……」


 ユウナがその言葉を言い終えた瞬間に、シエルはぎゅーっとユウナに抱きついた。一瞬の出来事にユウナは驚いたが、顔を近づけたシエルの瞳に、うっすらダイヤモンドのように美しく、透明性の高い涙滴が滲んでいるのを見て取ると、そっと代行神の少女の背中に腕を回し、その温もりをしばし堪能した。触れ合う肌から伝わる感触は二人の少女の身体に染みわたり、その互いの優しさが体を温める。

こんばんわ、作者の村崎 芹夏です。


またしてもギリギリ3週間の更新・・・しかもいつも以上に短い! 3週間の壁だけは超えてはならないという謎のプライドが現れ、なんとか今日中に更新を!っと頑張ったのですが、執筆できたのがここまで・・・すみませんm(_ _)m


忙しさに加えて新しい作品の設定を考えてたら代行神の方が疎かになってました。 申し訳ありません。 んー、もうちょっとペースアップして更新したいという意思はあるんです……あるんですけどなかなか^^;


さて、今回はユウナさんの心情にスポットを当てております。 こういう主人公以外のキャラにスポット当てる時の書き方って正直、私は下手なんですorz


書きながら気付いてはいるのですが、どうにも視点が安定しない・・・こういうときは完全にユウナ目線で書いたほうがいいのか・・・独学で書いてるとわからないことだらけで大変です><


この章もいよいよ終盤! もうちょいで一区切りになります。 そのタイミングで新しく執筆してる作品も紹介していければなぁーっと考えております。


その時は是非、代行神共々よろしくお願いします。


ではでは、今回も読んでくださった方々、ありがとうございました。


また次回投稿した際にはよろしくお願い致します。

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