それでも私は……! Ⅹ
アネットは事の顛末を見届けると、気絶しているユウナの横を抜け、シエルの元へと駆け寄った。
「シエルっ!」
喉の奥からありったけの声を絞り出したアネットの叫びは掠れがかっていた。しかし、その声にはシエルに対する最大限の思いが込められていた。いままで苦しみに耐えていたシエルがそれに応えるかのように視線をアネットに向けると、心配させまいと苦痛で歪んだ顔に無理やり笑みを浮かばせてみせた。
「シエル! 待っていろ。すぐにフィンガローへ連れて行ってやる。街へ戻れば医魔師もいるからすぐに解毒できるはずだ」
「私は……大丈夫……だよ。それより……ユウちゃんを……助けてあげて……」
苦しそうに途切れとぎれでそこまで言うとシエルは、いままで無理をしていたのが祟ったのか、全身から力が抜け落ちてしまった。慌ててアネットが駆け寄って確認をすると、呼吸はしっかりとしているし心臓もしっかりと鼓動していた。どうやら気を失っただけのようである。
「『ユウちゃんを助けて……』か。こんな状況でも尚ユウナを気遣うなんて、本当にこの娘は……」
ボソリと小さく呟くアネット。シエルを消そうとまでしたユウナという存在。アネットがユウナに対して、怒りや憎しみといった負の感情しか抱いていないのは明白である。だが、シエルは違った。自分が命を狙われていたということ知った今でさえも、ユウナの安否を気遣い助けて欲しいと願った。守護すべき主の命令として、そして信頼する友人の頼みとしてそれを果たさないわけにはいかない。だが、完全な状態ならいざ知らず、痺れが残った体で華奢な身体とはいえ、少女二人を担ぐのはさすがのアネットでも至難であった。どうするべきかと方法を考えていると、アネットのもとへコットンがやってきて"ヴァン"と小さく一度吠えた。
「手伝ってくれるのか?」
半ば冗談半分だったアネットの問いに、もう一度短く吠えてコットンが返答する。
泥だらけのお姫様のシエルをアネットが両腕で抱きかかえ、気を失っているユウナをコットンが背中に乗せるという形式で一人と一匹は大きな荷物を背負ってロングルの森を抜けるべくゆっくりと歩き出した。
こんばんわ、作者の村崎 芹夏です。 いやはや、再来週まで本当は更新できないかなーっとおもっていたのですが、さすがに1ヶ月以上更新が空くのはまずいということで死に物狂いで執筆を進めました。
ということで今話で一応目玉?だった戦闘パートは終了です。 執筆を続けたり、自分の文章を読み返したりするたびに自分に足りない部分、出来ていない部分が色々と浮き彫りになってきます><
一応、気付いた点は意識して直そうとはしているのですが、書き進めるうちにどうにも油断してしまいます。 まだまだ執筆の技量が足りないといくことですね・・・精進せねば!
いつものごとく色々と投稿後にちょいちょいと修正を加えて行きますのでご了承ください。
それと・・・もともともう少し先まで更新できないと言ったのですが、お盆休みを含め、最近休日に予定がビッシリ詰まっていまして、8月の後半まで更新ペースがマチマチになりそうです。 すみませんorz
いやはや・・・時間が欲しい!
さて、今回も読んでくださった方々、ありがとうございます。また次回更新した際にもよろしくお願い致します。