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代行神シエルにおまかせください!  作者: 村崎 芹夏
「私が神様の代行ですか!?」
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私が神様の代行ですか!? Ⅲ

「あ、あの、大丈夫なんですか?」


シエルの心配は異世界生物への恐怖からではない。先程の僅かなコミュニケーションでこのグドーというドラゴンが友好的な存在である事は十分に分かっていた。


 アネットへのこの投げかけは、”二人も背中に乗ってグーちゃんは重くないのか?”という意味合いである。アネットもそれを察して、なんとも軽快な返事をする。


「案ずる必要はない。ドラゴンは自身の体重の三倍の物でも持ち上げることが出来るといわれている。二人ぐらい朝飯前さ」


「そ、そうですか。じゃあ、お邪魔します。グーちゃん、お願いね」


 シエルの後半の言葉はグドーに向けられたものであった。グドーの顔を覗き込み、笑顔で声をかける少女に対して"クーン"と小さく一声あげたドラゴンは、まるで言葉を理解して了承の意を示したようであった。


 ふにふにと柔らかい感触の鱗に覆われた背中を豪快に跨るアネット。シエルはミニスカートを履いているため、アネットと同じような座り方に躊躇い、両足を揃えて横に投げ出す姿勢で着座した。


 少女がグドーに安定した姿勢で座ったことをチラリと確認すると、アネットは太陽光によって光沢を増す艶やかな黒鱗に覆われた、大きなドラゴンの背中を軽く二回ほど指先で小突き出発の合図を送る。


「さぁグドー、行こうか。おっと、今日は大事なお客さんがいるから安全第一で頼むぞ」


 まるでアネットの言葉を理解しているかのように、”クーンクーン”とその巨体には似つかわしくない可愛らしい声で返事をしたグドーは、背中で折り畳んでいた両翼を思い切り天空に向かって伸ばす。只でさえ大きな身体が、翼を全開に広げることによって更に幾段とスケールが増し、想像を絶する迫力である。


 グドーが、その漆黒の両翼で空を裂くように何度も大きく上下に羽ばたかせると、その周辺で下から巻き上がるような形で強風が起こり、シエルは思わずスカートの裾を押さえてしまう。


 徐々に翼の上下運動を加速させていくと、比例するかのように周囲に走る風圧もだんだんに増していき、やがてその巨体がふわりと新緑が生い茂る丘から離れ、浮上していくのが分かる。


「――すごい! ほんとに飛んだ!」


 先程、遥か遠くの渓谷からグドーが、高速で飛翔してきたところをシエルは自分の目で確認していたため、間違いなく飛べることは分かっていたのはずなのだが、やはり今まで経験したことのない状況に対して、半信半疑がなかったとは言い切れない。それ故、飛行の瞬間には、感動があった。


 飛行機の離陸にも似た、慣性に引っ張られる不思議な感覚に戸惑いつつも、バランスを崩さぬように重心を低くし、グドーの背中に手を置いて踏ん張りを利かせる。


 センスティアの大地から十数メートルほどの地点まで来るとグドーは浮上を停止させ、数秒間の空中ホバリングの後、再度大きく翼を煽って大気を撫でると、今度は前進方向へ加速し始めた。浮上時とは異なり、滑空飛行に入ると両翼を激しくバタつかせることはなくなり、時折仰ぐ程度で後は慣性にまかせ、グラインダーの要領で飛行しているようだ。


 翼が風を切る斬空音が減少したことで、シエルには上空からセンスティアの大地が織り成す自然の景色を楽しむ余裕が生まれていた。


 先程まで自分達がいた小高い丘も美しい世界を遠くまで見渡すことが出来ていたが、ここからの景色はそれすらも霞んでしまう程に素晴らしく感動的なものである。


 浅緑色の若葉が元気に生い茂る大地、ギラつく太陽の下で水面に光雫を映す湖畔、雄々しく聳える荒々しい岸壁の砦、遥か遠くに米粒大程で見える中世ヨーロッパの神殿を連想させるような、古びているが立派な建造物。


 この大パノラマから見据えることが出来る景色の何もかもが、呼吸をする事を忘れてしまいそうな程に麗美で自然と感嘆が漏れてしまう。 


 向かってくる風圧を割いて進んでいく感覚は普段は決して味わうことが出来ない新鮮な体験である。しかも、グドーの安全飛行のおかげで不安感は一切無く、むしろ風の気持ち良さと絶景を優雅に楽しむ余裕さえあった。


「気持ちいぃー!」


 深呼吸をしてみれば、そこら中に満ちている空気に甘い味がついているのではないかと錯覚する程に美味しく感じる。


 初めてドラゴンの背中に乗って、飛翔を体験シエルの心の中には、止め処なく興奮の大波が押し寄せていた。


 シエルは最高の気分に浸りながら、ふと自らがこの世界に降り立った成り行きを振り返った。


 彼女がセンスティアの地を踏んだのはつい先程だ。それどころか、眼前でグドーの背鱗を小突きながら指示を送っている紅髪の騎士の少女と出会ったのですら、そう時間は経っていなかった。



こんばんわ、作者の村崎 芹夏です。

今回はちと短めの更新。


私の更新はいつも話ごとではなく、いつも適当なところで区切って行なっているので話がイマイチ切りのつかないところ、もしくは切りが良いとこを選んで極端に長くなるか極端に短くなるといったヘンテコな構成になっております(笑)

 なかなか読んでくださる方にとっては気持ちの良い投稿方法ではありませんが、執筆ペースの関係上どうかご理解頂けると幸いです。


ではでは今回も読んでくださりありがとうございました。 次はどちらを更新するかはまだ未定ですが、次もよろしくお願い致します。

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