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代行神シエルにおまかせください!  作者: 村崎 芹夏
「それでも私は……!」
25/52

それでも私は……! Ⅳ

「大丈夫ですか? 怪我とかはないです?」


 シエルは後方に退避していた金髪の少女が、涙目になりながら近づいてくるのを目にして心配そうに声を掛けた。


「うん、ウチは大丈夫。それよりもあなたは平気なの?」


 金髪の少女がいくつもの浅い切り傷のついたシエルの体を見ながら心配そうに応えた。


「そっかー。良かったです! ちょっとだけ痛いけど、私も全然平気です!」


「本当にありがとう。あなた達がいなかったらどうなっていたことか……ウチはユウナ。 ユウナ・アルテレイ」


「私はシエルって言います。えっと一応センスティアの代行神をやっています」


「私は代行神シエルの仕騎アネットだ」


 この世界に来てから幾度目の自己紹介になるだろうか。さすがに小慣れてきたシエルは、初期と比べれば割とスムーズに完遂してみせた。正式に神聖を継承したのだが、一応、という言葉を付けたのは、まだ代行神としての実感があまり湧いていない証でもある。


「代行神……?? ってことはあなたは神様なの!? あっ、神様なのですか?」


 降り注ぐ太陽の煌きでより一層眩い美しさを放つブロンド髪の少女ユウナは、代行神の意味がよく分からなかったのか、一瞬だけ間を空けたが、すぐさまシエルの立場を理解すると、思わず出てしまったラフな喋りを丁寧語に訂正した。だが、シエルは丁寧な喋りに対して無性に気恥ずかしさを覚え、それをやや苦笑い気味で訂正の訂正を求める。


「えへへ、あの、神様って言っても代行ですし、そんなに気負わないで貰えると私も嬉しいというかなんというか」


 不思議王な表情を浮かべ、その言葉の意味を考えていたのか、またしても一瞬だけ間を置いたユウナは、やがてクスクスという小さな笑いを漏らした。


「そんな事言う神様は初めてよ。そう、シエルがそれを望むならウチは構わないわ。ウチもこっちのほうが話しやすいし」


 なぜかあれほど鋭かった敵意がすっかり消え去り、急に大人しくなったラグトスはシエルの足元に擦り寄り懐き始めている。丁度アネットとシエルの間に入り込んでいる、綿菓子のように白くふかふかした毛を持つ猛獣は、未だに紅の刃を手にしている騎士の少女に対しては全く無関心のようである。 


「ラプタ・ロウ」


 ラグトスの意外な行動には目を見張るものがあったが、その状態から戦闘の流れが終わったことを悟ったのか、アネットは紅剣の剣先でゆっくりと空中を水平になぞりながら呟く。するとやはり先刻と同様に、日中の光下でも識別できる美しい青白さを放つ光が瞬くと、それは騎士の手にしていた紅剣と共に跡形も無く消えた。


「――!?」


 シエルはそんな光景を正に目を輝かせながら見つめていた。 


「ねぇねぇアネット! いまのなに!? 魔法? すっごい! 剣が一瞬で消えた! そういえばさっきもいつのまにかあの綺麗な剣持ってたよね!」


「あぁ、そうか。シエルはこの剣を見るのは初めてだったな。《紅刃剣クロエラ》私の愛剣だ。クロエラ自体が持つ能力で剣を異次元空間から自由に出し入れすることが出来るんだ」


「はにゃっ! なんかこれぞ魔法! って感じですごいね!」


「はははっ、シエルは期待通りの反応をしてくれるから自慢のしがいがあるな」


 隠しきれない興奮の眼差しで押し迫るシエルに、アネットはクロエラの持つ特性を説明した。


 センスティアに存在する装備品の三種の分類、常装、魔装、神装のうち最上位に位置する神装にあたる《紅刃剣クロエラ》。神装には神の力に匹敵する奇跡の力が宿るとされており、アネットの持つそれも無論例外ではない。クロエラが持つ自在に異空間から出し入れが可能という能力。これは間違いなく魔法を遥かに上回る超常現象なのである。いくら魔力という概念が一般的であるセンスティアとはいえ、時空間の壁を越えることは容易ではないのだ。ゲンロウが確立したという《世界》という途方もない一線を越えることができるシステムも彼の神力があって初めて成せた技なのである。 


 しかし、空間移動という驚異的な能力でさえも神装にとってはおまけ程度でしかない。《紅刃剣クロエラ》には更なる奇跡の力が眠っているが、それを説明すれば話は長くなるし、代行神の心優しい少女はあまり望まないであろう能力なのでその点についてアネットが触れることはなかった。


 シエルはアネットの説明が終わるまで羨望の眼差しで、餌を与えられた小動物のように夢中で聞きっていた。それを見てアネットも嬉しそうな表情である。やがて、クロエラについての大まかな説明を終えたアネットは、今後の対応を検討するために口を開いた。


「さて、何故か分からないが、すっかり大人しくなってしまったなこいつは」


「そうだねー。この子どうしよっか?」


「レーミア様からの依頼は"街に被害がでないようにラグトスのを対処しろ"だったからな。またこいつがいつ暴れだすかわからない以上このままってわけにもいかないだろう」


「倒しちゃう……の?」


「そうだな、最善を考えればそうなる……だが、シエルはそれを望んでいないのだろ?」


 シエルの思いを理解したのか、何かを含んだ笑みを溢した騎士の少女はそれに問いかけで返した。アネットの思惑を読み取ったシエルは、少し前から頭の中で考えていた事を口にする。


「じゃあこの子をおうちに返してあげるってのはどうかな?」


「住処の森にってことか。確かにそれなら当面は街への被害は心配ないだろうから、レーミア様からの依頼を達成したことにはなるな」


「ねぇ、ロングルの森に行くの? うちも付いて行っていいかな?」


 シエルとアネットが今後の方針を決めていると、唐突にユウナが会話に参加してきた。   


 ロングルの森とはラグトスが本来縄張りとしている森であり、現在三人と一匹がいる丘陵地帯からは徒歩で半日程度の距離にある。 


「なにがあるか分からないからユウナはフィンガローに戻ったほうが良いと思うが」


「お願い。私も行ってみたいの」


「皆一緒のほうが楽しいよ! アネット、私からもお願いー」


 二人の上目遣いによる懇願に勝ち目がないことを瞬時に悟ったらしいアネットは、やや苦笑い気味にあっさりと折れた。


「仕方ない。みんなで行くとしよう」



 センスティアの澄み渡る蒼空には白雲と照りつける太陽、そして何種かの飛行モンスターの影が映し出されている大地を、代行神シエル御一行様は南南西に向かって歩き続けていた。ロングルの森へは先ほどと同様に、ラグトス以下、その他の森に生息する生物を怯えさせてしまうという理由から漆黒のギアナー・ナイトドラゴン、グドーの手は借りずに徒歩での移動となる。 


 ラグトスに襲撃された際、ユウナを庇ったシエルは上腕部に浅い裂傷を受けていたが、移動の最中、歩きながらユウナが応急の手当を施していた。


 彼女は肩から掛けていた群青色のやや大きめのポーチから、清潔な包帯とガーゼを取り出す。それと同時に取り出しておいた、黄色い粘着質の液体が入った瓶から中身を少し指先に乗せ、それをシエルの傷口へと優しく塗り伸ばす。


「これは傷の治りを早める薬よ」


「くぅ……」


 傷口に染みる痛みに思わずシエルは口をへの字に曲げて渋い顔をみせる。その後はガーゼ、包帯を丁寧に巻いてユウナは手際よく処置を完了させた。小難しい作業ではないとはいえ、薬の塗り方、包帯の巻き方、ガーゼの当て方等々、ユウナの手つきはこういった処置に手馴れているという印象である。


「ユウちゃん、ありがとう!」


「いえいえ、このぐらいお安い御用よ」


 そう言いながらユウナは余った包帯とガーゼ、そして黄色い塗り薬が入った小瓶を群青色のポーチへと戻す。その際に、シエルはユウナの大きめのポーチの中に多種多様な色の液体が入った同様の瓶がいくつも綺麗に並べられているのを横目で見てとった。これらは全て医療用の薬品であるらしい。 


 処置を終えてからの会話でユウナが医魔師(ヒーラー)であることを知り、応急処置の手際が良かったのにも頷けた。 

 

 小さな丘をいくつも越え、地を抉る巨大なクレーターが点在する平野を抜け、透明度の高い水面が輝く湖畔を横目に通り過ぎ、ピクニックというにはややスケールの大きい行軍を続けること数時間。ようやく目的地が視界に映し出された。


こんにちは、作者の村崎 芹夏です。


いやはや、大変おまたせしました>< やっとこさ更新できました。


最近は週末も予定がびっしりでなかなか><


うちの会社が今日からGW突入ということでなんとか執筆しました。


とはいえ、GWも予定が詰まっているのでそれほど執筆が捗りそうにもないのですが(笑)


はてさて、今回は少し会話多め?ですかね。


ここから先はユウナさんがPTに加わってラグトスを故郷に戻してあげる流れです!


いつもどおり執筆してから見直ししてない&飛び飛びで執筆しているため誤字脱字、設定の矛盾等々ありそうですね(笑) これもいつもどおりちょいちょい修正していきます。




というか・・・案の定、規定文字数に届かなくてコンテストに応募できないかったです>< 


まぁ、私の遅筆が原因ですので仕方ないですな・・・


もっと精進せねば!



今回も読んでくださった方々、ありがとうございます。


また次回投稿した際もよろしくお願い致します。

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