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代行神シエルにおまかせください!  作者: 村崎 芹夏
「代行神シエルにおまかせください!」
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代行神シエルにおまかせください! Ⅰ

 すっかりと日が沈み、宵闇が一面を覆うフィンガローの街並みに差し込むのは、両道脇に等間隔で浮かんでいる魔導機巧を取り込んだ球状の発光体の灯火と、夜空に浮かんだ月明かり、そして建物から溢れる生活灯のみである。 


 シエル、アネットの二人は懐中時計を探していた老婆、エマルダに別れを告げた後、まで戻ってきていた。


 商店街(メインストリート)に比べれば劣るものの、それでもそれなりの人通りがあり、賑わいを見せていたサブストリートもこの時間となってはすっかり静まり返っている。通りの各所に構えられている商店はどれも一様にショーケースの照明が落とされ、入口の扉には閉店を意味する流麗な文字がグリーンに発光しながらプカプカと浮かんでおり、薄暗い街並みに幻想的な雰囲気を醸しだしている。


 先程シエルはルオン広場で代行神を引き受ける決意をアネットに告げていた。それを聞いたアネットは安心感からなのか、目尻に涙を滲ませた。普段の騎士としての凛々しい表情を緩ませて、年相応の女の子らしい優しげな顔でシエルに感謝を伝えた。だが、騎士としての威厳があるのだろうか、アネットがそんな可愛らしい一面を長く露わにすることはなく、サブストリートを歩く今ではすっかりと元の凛々しい紅の騎士に戻っていた。


 普段の気高き騎士アネットも好きだが、時折見せる少女らしいアネットはそれ以上に好きかもしれない、シエルはそんな少々場違いなことを考えながら歩みを進めている。


 雑音が消えた街中では二人の石畳を叩く小さな足音がやけに大きく響いてい聞こえる。 アネットからは夜も遅くなってしまったので寝床に案内する、詳しいことはまた明日話し合おうと説明されていた。


 しばらくアネットに連れられてサブストリートを奥の方まで歩いて行くと、ふと騎士の少女は足を止めた。その目の前には赤い外壁が特徴的な二階建てのあまり大きくない小洒落た家が佇んでいた。サブストリートでも割と隅に位置したその家は、昼間二人で見て回ったアッカー魔具店などが立ち並ぶ通りから少し離れた場所にあるようだ。


 こんな場所で歩みを止めた事に対して不思議そうに首を傾げるシエルはアネットに問いかけてみた。


「あの、ここって……?」


 その質問をあらかじめ予期していたかのようにアネットは軽快に応える。


「ここは失踪した神、ゲンロウが住んでいた家だ」


「えっ、そうなんですか!? 神様ってなんかこう……もっと豪華な場所に住んでいるのかと思ってました」


 よく見ると家の扉には、他の商店と同様にライムグリーンに発光する文字で《神務所》と浮かんでいる。


 シエルはセンスティアの神という存在の形が未だに良く掴めていなかった。世界を統治する程の存在でありながら、雑用にも似た事も行っていたり、空間移動装置を作ったかと思えば意外にも庶民的な家に住んでいたりと、身近な存在なのかそうでないのか、ぐちゃぐちゃと頭の中で思考が絡み合っていた。


「他の三神の方々は分からないが、ゲンロウは色々な意味で特別だろう」


 ゲンロウの住んでいたという住居を前に何かを思い出しながら耽るアネット。そんな彼女にシエルは声を掛けることができなかった。


 少しの間、赤い外壁の家を眺めていたアネットはふと我に返ると、シエルを家の中へと案内する。


「さぁ、シエル中へ入ろうか」


「えっ、ここはゲンロウさんの家ですよね? 私がお邪魔してもいいんですか?」


 アネットがゲンロウの家を観光として案内してくれた、そう思いながら説明を聞いていたシエルは、ちょっと驚いた様子で家の入口の扉に手をかけようとしていた騎士の少女に再び問いかけた。


「はははっ、それなら問題はない。シエルはゲンロウの代行となるのだからな」


 納得が出来るような出来ないような……そんな理由だがアネットはなんの迷いも無く答えた。そしてシエルの介入により止めていた手を再始動させ、扉の取っ手に手を掛けると、鍵の掛かっていない扉が、ラッチボルトが開放される小さな音を立ててゆっくりと開かれる。するとアネットはその中へとズンズンと入っていった。シエルも慌てて後に続く。


 二人が観音開きの扉を潜ると、突如ボッっという音を立てて勝手に屋内の照明に明かりが灯る。


 扉の奥には廊下などは無く、入口からそのまま広い空間が広がっていた。どうやらこの建物の一階部分が丸々この部屋だけに使われているようだ。日本特有の履物を脱ぐ玄関などはない。部屋の中央には大きな丸テーブルが一つあり、それを囲うように椅子がいくつか並べられている。入口のドアが設置されている壁とは対面にあたる壁にはL時の大きなカウンターテーブルがあり、後方には数多くの引き出しが設けられた大きな棚が設置されている。そのカウンターの反対の壁際には上階へと道を伸ばした階段が設けられていた。


 表には《神務所》という看板が掲げられていた事と、この階のレイアウトを見ると、ゲンロウという神はここを仕事場として使っていたのだろう。


 この建物の主であるゲンロウが失踪しているというであれば、内部は埃っぽい状態であってもおかしくはないが、そんなことは全くなかった。むしろ各所まで掃除が行き届いており、本当に主が不在なのだろうか? と疑ってしまうほどである。


 シエルが失礼だと分かっていても、他人の家で興味心を抑えきれずにキョロキョロと辺りを見回しているとアネットは一声かけて、大きなL字カウンターの反対にある階段をスタスタと登っていく。シエルもそれに習って若干の(きし)み音をあげる階段をゆっくりと駆け上がっていく。


 二階は居住スペースになっており、一階の雰囲気とは打って変わっていた。階段を上りきった先には廊下があり、その途中の脇には三つの個室への扉が備えられていた。その一つ、階段から一番近い部屋の前にアネットが立つ。


「ここがシエルの部屋だ。私は隣の部屋にいるから何かあったら遠慮なく呼んでくれ」


 そう言ってアネットは少し先にある木製の扉を指さした。


「あっ、はい。ありがとうございます」


「神の引き継ぎの儀式は明日行おう。今日はゆっくり休んでくれ」

 あけましておめでとうございます。作者の村崎 芹夏です。


 年末年始の慌ただしさもあって2週間ぶり、そして今年初の更新となります。 

 私がこちらさのサイトで小説を書き始めたのが7月ですので、もう約半年も経つのですね。 時の流れというのは早いものです。


 さて、代行神の方ですが、今話から次章?(次章というより自分の中では場面が切り替わっただけなのですが……)に入っていきます。


 少し遠回りをしましたが、ここから代行神としてのお仕事を少しずつ書いていければと思っています。

 今回登場したゲンロウのお家、神務所は一応これからシエルさんとアネットさんの活動の重要な拠点となる予定です。 


 色々と設定やら変なところを細かく書いていたらどんどん次数が増えてしまうという(笑) この後に代行神として初めての仕事を物語に入れる予定です。

 一応、目安として十万時程度で一つの展開を終わらせる(ライトノベルっぽく)目標で書いているのですが、初めての仕事の触りにすら入っていないのに既に約五万字……

 後先考えずに書きたいことをバコバコ書いてるとやっぱりダメですね(笑)

 そんなわけで随分と遅い展開で進む物語ですが、もしよければ続きを見ていただけると感激です。



 ではでは、今回も読んでくださった方々、ありがとうございました。 また次回更新した際にはよろしくお願いいたします。

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