君の横顔
雰囲気を出すため、なるべく改行制限なしでお読み下されば幸いです。
俺は選択を迫られていた。
でも冷静に考えればすぐに決断出来そうな事だった。
でも…………今の俺には決断力というものが薄れている。
正直、ここまで悩んだのなんてかなり久々だと思う。
果たして今までに、明らかに条件が違い過ぎる何かを選択する時にここまで悩む事があったかどうか、それさえ思い出せないくらい久々だと思うのだ。
「あーあ!何々だよ、一体さ。俺にどうしろって言うんだよ、アイツは!」
俺は叫び声に近い溜め息をついた。
今日で通算3日敷きっぱなしの布団に大の字で寝転ぶ。
見上げた天井に染みを探す。
―――実家ジャネーンダ。アルワケナイダロ―――
―――ああ、そっか―――
自問自答してから俺は寝転んだまま、テーブルに置いてある灰皿の中の吸い殻を見た。
アイツ口紅なんか付けるんだ…………。
口紅が付いた吸い殻を見て、俺は改めてアイツが女だって事を認識する。
アイツが女子だって事は、初めて出会った時から知ってる。
そう、小学校の時から。
でも今まで、何と無く付かず離れずみたいな感じでつるんだりしてて、女なんだなぁなんて改まって考えたりしなかったし、どっちかっていうと
「女の子」
っていうイメージだった。
そう!英語で言うと
「lady」
じゃなく
「girl」
なんだ。
深く意識した事無いし、意識する様な対象でも無かったし。
だから、今の気持ちだって
「好き」
じゃなくて
「嫌いじゃない」
の筈だ。
「はぁ…………。」
俺はまた溜め息を付くなり、今度は枕に突っ伏した。
フワリと柔らかい香りが鼻孔を刺激する。
一晩アイツが使っただけなのに、枕にはしっかりと足跡の様に残されている。
香水を付けるのは前から知っていた。
だって俺も普段香水を付ける人間だから。
それにしてもいい匂いだなぁ。
結構この匂い好きかも。
何て名前の香水か今度聞いとかなくちゃな。
でもこの匂い覚えがあるような気がする………。
まあまた聞いときゃいいや!
………それより、頭ン中を整理しなければ。
悩み事を思い出した俺は、また天井を見上げた。
目を閉じて実家の天井と重ね合わせながら、落ち着いて考えてみる。
今朝……と言ってもついさっきだが、アイツが帰って行った時よりは、大分落ち着いてきた。
今日は久々の晴れでびっくりするくらい暖かい。
昨夜の寒さは嘘だったみたいに。
レースのカーテンしか掛けられていない窓から差し込む陽射しが、寝不足気味の目に染みる。
ここまで上天気だと、ちまちま悩むのもアホらしくなるな。
昨日が今日なら良かったのに………。
俺は珍しく後悔してた。
心底後悔してるかと聞かれたら、首を縦には振れないが、それでも少し後悔を感じる。
昨日がこんなに上天気だったら、俺は悩む事も無かっただろう。
昨日がこんなに上天気だったら、枕にアイツの匂いが残る事も無かっただろう。
昨日がこんなに上天気だったら………。
―――俺ハアイツヲ抱イテシマッタンダ―――
アイツ、高橋リカコは小学校からの同級生で、ずっと一緒って訳でもなかったが結構接点はそこそこにあった。
ものすごく気が合う訳でもないが、一緒に居て気分が害される事も無い。
空気?という訳でも無いし、上手い表現が見付からない。
まあ、仲の良い女友達かな。
でもそう思っていたのは俺の方だけだった。
リカコは俺の事をただの男友達とは思っていなかったんだ。
別にそれを確信した事で激しく驚いたりはしない。
薄々、もしかして・・・・・・と思う事も無かった訳じゃないし。
ただ俺ははっきり気付いている素振りは見せなかったし、リカコも昔から態度や接し方があからさまに変わっていない。
それでも、何と無くだけど気付いてしまった。
俺が、リカコに対して何の感情も持っていなかったら、俺もリカコの気持ちには気付かなかったとは思うが、正直本当は気付きたくなんて無かった。
リカコは以前、俺の親友のカズと付き合ってたし。
俺とリカコが・・・・・・っていうのはちょっと想像つかないし。
大体アイツは強過ぎる。
カズと付き合って居た時もそうだったが、男が守らなくても一人で生きていけるんじゃないか?と思わせる様な女だ。
俺は決して亭主関白派じゃないけど、あんなにもリードしてくれる女だと、「俺なんか居なくてもいいんじゃないか?」と寂しくなるだろう。
常に男より一歩も二歩も先を見越して、まるでこっちが置いてけぼりにされた気分になる。
特に俺なんか優柔不断な所があるから、尚更だ。
涙は女の武器だと思っている女とは違って、泣いている所など一度も見た事はない。
負けん気が強い。
そんな女だ・・・・・・。
いい女なのかもしれない。
でも男をきっと駄目にする要素は大いに持ち合わせている。
それにはまるのが俺は怖かった。
平凡が一番いい。
出来れば波風が立ちにくい相手の方がいい。
「はあ・・・。」
また溜息が出た。
今度は自己嫌悪。
俺は後半年で結婚するのに。
浮気なんて今まで考えた事も無かったのに!
魔が差した・・・・・・では済まない。
俺自身もそれではイマイチすっきりしない。
俺は煙草を燻らせ、今朝までを振りかえってみる。
───昨夜───
リカコから電話が来た。
「ねえ、今何してんの?」
「別に、テレビ見てたよ。」
一週間振りくらいだった。
俺が一人暮らしを始めてからは、リカコの職場も近い所為か頻繁に連絡を取り合っていたが、今日は少し久し振りに感じる。
「終電なくなった。」
「うん。」
俺はチラリと時計に目をやった。
既に午前一時を回っている。
「もう一時越えてるからな。」
「今日彼女は?」
「来てないよ。」
「じゃあ、今から行くね。」
「うん、今何処?」
「駅前。」
「迎えにいくよ、待ってて。」
こんな風にリカコが、一人暮らしを始めた俺の家に来る事はそう珍しい事じゃない。
不思議な事に彼女の麻菜は、酷いヤキモチやきなのに、リカコに対してはかなりの信用を置いている。
カズと付き合っていた事を知っている所為もあるだろうが・・・。
確かに疾しい事は今まで無かったが、麻菜と付き合う前はやや、危うい状況もあったのでリカコが遊びに来ている事は、一度も麻菜に言った事はない。
というより、何故か言えない。
俺はリカコと駅で落ち合うと、コンビニに寄り酒やらつまみやら、色々買い込んだ。
そういえば前にもこんな感じの事があったなあ・・・・・・。
ふと思い出す。
18ン時だったな、確か同窓会の後・・・
「前もさ、こんな事あったの覚えてる?」
思わず左手に持っているコンビニの袋を落としそうになった。
以心伝心とは正にこの事だ。
「ああ、同窓会の後だよな。確かお前が『帰りたくない。』とか言って。」
「余計な事覚えてんのね。もう。」
リカコはそう言い苦笑した。
・・・・・・余計な事だったのか?
あの時『帰りたくない。』と言われた俺はかなり動揺したんですけど。
取り留めのない話をしてるうちに、我が家に到着した。
「何かあゆむン家来たの久々!」
腰を下ろすなりリカコは呟いた。
確かに最近麻菜がよく来てたし、俺も出てる事が多かったからだ。
リカコもしょっちゅう夜中まで遊んでたりする風でもないし、たまに終電がなくなってここに泊まりに来るから、久々といやぁ久々だ。
「どう?最近、麻菜ちゃんとは。」
リカコは缶ビールを開けて飲み始めた。
俺も一口飲んで答えた。
「別に、普通。」
婚約をした事は言えなかった。
目出度い事なのに、ビールと一緒に飲み込んでしまった。
「さっきの話だけど。」
「え?」
「同窓会ン時の話。」
「ああ、うん。」
「あれ、冗談で言ったんじゃないから。」
「・・・・・・うん。」
当然だよ。
あれが冗談だったら、動揺した俺一人アホみたいだろ。
そう思いながらリカコを一瞥すると、頬が軽く紅潮して不覚にも色っぽく見えた。
ひとしきり話して、気が付いたら午前四時だった。
いつもならとっくに寝入っている頃だ。
今日が休みで良かった。
「あっ。もうこんな時間じゃん。さっさと寝なきゃ起きれない。」
「そうだな、寝るか。」
俺は布団に身を滑り込ませ、部屋の電気を消す。
「ねえ、ちょっと。」
「ん?」
「毛布。貸して。」
ああ、そっか。
まさか一つの布団に寝る訳にはいかないよな。
リカコはソファに横たわって俺が毛布を渡すのを待っている。
俺は暗闇に少し慣れてきた目でリカコを見た。
「早く。寒いよ、風邪ひくじゃん。」
リカコは俺の方に手を伸ばす。
俺はその言葉を無視した。
別に風邪をひかせるつもりはない。
ただ少し意地悪というか、反応が見たかった。
「こっちにおいで。」
うろたえるリカコが面白いからちょっとからかうだけ。
本気でリカコが入ってくるとも思えないし。
「何言ってんの。酔っ払ってないで早くちょうだいよ。」
予想に反してそんな言葉が返ってきた。
つまらない。
俺は意地になってきた。
「酔ってないよ、自分こそ早く入らないと風邪ひくよ。」
意地になった俺は、毛布を貸そうという気はもう無かった。
リカコは何も言わなかったが、戸惑っているのが解る。
俺もそれ以上何も言わなかった。
五分程だろうか。
二人とも一言も交わさない。
ったく、マジで風邪ひくぞ?
そんなに意地張ってどうするんだよ。って意地ンなってんのは俺か。
あーあ、俺の負けだ!
「リカコ、悪かったって。そんなとこで寝たら風邪ひくから!」
「・・・・・・だから毛布貸してよ。」
「無理。俺も寒いの。だからお前が布団に入れば丸く収まるんだって!」
毛布を貸したら寒いのは事実だ。
リカコは俯いて黙りこむ。
「何もしないよ、するわけねーだろ。」
勿論何かしてやろうとなんて思っていない。
でも言ってみると、下心がある男の台詞みたいで微妙な気持ちになった。
「騙されたと思って来いって。マジ風邪ひくぞ。」
我ながら説得力がない。
でも他に言葉が思い付かなかったのだ。
「・・・・・・わかった。」
リカコはやっと俺の隣に恐る恐る潜り込んできた。
黙ってこっちに背中を向ける。
よく考えると、こうして一つの布団に一緒に入るのって前にもあったな。
あの時は一生懸命天井の染みを数えて、変な気を起こさないように気持ちを紛らわしてたっけ。
それにカズも居たしな・・・・・・。
俺はなるべくリカコに自分の体が触れないように、そうっと上を向いた。
でも、ここは実家ではないので天井の染みは無かった。
何だか急に目が冴えてくる。
アホだ、俺。
妙に緊張してきてる。
心を落ち着かせようとリカコには聞こえないように、深呼吸する。
しかしそれがマズかった。
吸い込んだ空気に混じって、リカコの香水らしい匂いが鼻腔を擽った。
急に全身が熱くなる。
アルコールとはまた違う感覚に眩暈がする。
その瞬間───
俺はリカコの髪の毛に触れていた。
微かにベージュ懸かった細く長く伸びた髪。
指先で軽く触れると、上白糖の様にさらさらと零れ落ちる。
リカコの肩が僅かに上下した。
しかし驚いているのは俺もなんだ。
リカコはゆっくりとこちらに寝返りをうつ。
「どう・・・したの・・・?」
声を潜めているからか、掠れているみたいに聞こえる。
透き通る儚げな茶色い眼がこちらを見詰めている。
それはすごくすごく弱々しくて、目を逸らしたら今にも消え入りそうな、とても普段のリカコが所有する物とは思えないくらい虚ろな眼だった。
自らが置かれた状況を理解しているからこそ出る、怯えた色に浮かび上がった眼。
「あゆむ・・・どうしたの?」
「さあね・・・・・・。」
俺はそう言い終わるや否や、リカコを抱き締めていた。
「ちょっ・・・何。」
何かなんて俺にも解らない。
自分で自分が解らないんだ。
何で二人は一つの毛布に包まっているのか。
何で俺はリカコを抱き締めているのか。
何でリカコの声が掠れているのか。
何でそんなに怯えた眼をするのか。
───何で俺はこんな気持ちになるのか───
解らない、解らない、解らない、解らない、解らない。
何も音が聞こえない。
鼓膜がじんと熱くなるくらいに痛い。
鼓動が早鐘のように高鳴るのがわかった。
リカコは俺の腕の中で、もう何も問わなかった。
それからは、ただ夢中だった。
情欲が支配するままに、目の前にいる女を抱いた。
色情魔に唆された気分だ。
終始、リカコは『女』だった。
薄く閉じられた瞼を縁取る睫毛。
僅かに入り込む光だけでも判る淡雪の様な肌。
細く、折れてしまいそうな腰。
肉欲を掻き立てる、色香を放つ柔らかな首筋。
時折聞こえる、遠慮がちな甘い声。
どれも俺の知らないものばかり。
カズは知っていたものばかり・・・・・・。
決して俺が知ろうとしなかったもの。
それが何時間かの出来事だ。
そして当たり前のように朝はやってきて、俺は昨夜の自分の挙動が恥ずかしくて、それにリカコに申し訳なくて、動揺を隠せない。
それはきっと彼女も同様、いや俺以上だったに違いない。
「お、おはよ。」
リカコは何事も無かったように振舞おうと努めている。
そんな少し寂しげな横顔がいじらしい。
「おはよ・・・。」
俺はそう答えて、ふと自分の腕が痺れているのに気が付き驚いた。
腕枕なんて・・・した事がなかったので、照れくさい。
「あ、あのさ、服着たいから・・・。」
「あっ!ごめん。」
・・・・・・俺、何謝ってんだ?
そう思いつつも顔を背ける。
まあ、お互い予期せぬ出来事だし、そうなるよな。
不本意だよな、俺はともかくリカコは絶対。
でも!お互いガキじゃないんだし長い人生の間、こういう事があっても不自然じゃないよな!
やや開き直りチラリとリカコを見ると、まだ着替え中だった。
細い肩甲骨が妙に綺麗に見え、そこに届く細い髪が絶妙なバランスだ。
思わず見入ってしまう。
でも何だかその背中が、昨日より弱々しく思えて胸が締めつけられる。
つと、リカコが着替え終え、振りかえる。
「見てるし。デリカシーがないわね。」
膨れながらも苦笑する姿が痛々しい。
さっきの横顔といい、この弱ってしまった笑顔といい、一度は開き直ったものの、やっぱり昨日の事を何も無かった様には俺には出来ない!
何が『騙されたと思って』?
彼女は心底『騙された!』と思っているに違いない!
「俺、最低だよな・・・。」
リカコが玄関のドアノブを回した瞬間、俺はぼそっと呟いた。
「・・・・・・そうだね。でも後悔してないあたしはもっと最低なの。」
リカコはそう言うと俺の方に一瞥もくれずに出て行った。
───そして今。
俺は選択を迫られている。
俺には麻菜という彼女がいて、尚且つ婚約もしている。
麻菜はすごくいい娘だ。
度が過ぎたヤキモチはたまに萎えるけど、ふんわりしてるし、優しくて可愛い。
守ってあげたくなるような娘だ。
一方リカコは、美人で頭もいいし、大人だし話が解る女だ。
確かに昔からモテてたし、いい女だと思う。
でも、誰かが守ってあげなくても枯れてしまわないだろう。
今まではそう思っていた。
昨夜の出来事が起こるまでは。
昨夜のアイツは俺の抱いていたイメージをガラリと覆した。
まるで俺のイメージの中の『リカコ』は空想だったかのように。
自分は知ったような気で居たのを思い知らされて悔しかった。
俺が思う以上にアイツは女だ。
そして本当は弱いし、脆い。
───カズは知っていたのかもしれない。
そう思うと、カズよりも自分の方が長い時を過ごしてきたのに、何も知ろうとしなかった自分はアホだ。
遣る瀬無い気持ちでいっぱいだ。
どうしたらいいんだろう?
俺は素直に麻菜を選べないで居る。
昨日だって、俺は麻菜の事を忘れて居た。
リカコを抱いている時だって、あんなに夢中になって何もかもが頭ン中から吹っ飛んでた。
こんな経験は初めてだ。
「あっ、そうだ!」
俺は寝転がっていた体を勢いよく起こして、立ち上がった。
ニ、三秒考えて通算三日敷きっぱなしの布団を畳み始める。
前にリカコに布団を毎日上げろと言われたのを思い出したからだ。
でも麻菜には言われた事が無い。
布団を閉まい、掃除機を掛ける。
テーブルの上に整頓された空き缶を、テンポよく次々とゴミ袋に納める。
口紅が付着した吸殻も捨てる。
悩み続けるのは性に合わない。
俺はいつもの自分を無理矢理起動させるように、無心で掃除をして、シャワーを浴びる事にした。
「ふう。」
全開に出した熱めの湯が全身に染み渡る。
頭を洗っている時、またリカコの辛そうな横顔を思い出して苛ついた。
カルキをたっぷり含んだ湯が、昨夜の出来事を皆流してしまいそうでまた苛ついた。
シャワーを浴びて多少すっきりとした俺は、リカコ同様、小学校からの付き合いのミツに電話を掛けた。
一人で悩みたくなくなった俺はミツに相談しようと思ったのだ。
ミツは俺のただならぬ異変に焦りながらも、快く引き受けてくれた。
「あゆむ!久し振りだな!」
待ち合わせた場所に車を停めていると、ミツが助手席側の窓をノックした。
電話を除いては、半年振り位に会う友人が元気そうで何だかホッとした。
「何かあったのか?あゆむが相談なんて明日は雪でも降るんじゃねーの。」
ミツは車に乗り込むなり軽く笑う。
でも俺は真面目に笑えない。
「おいおい、何だよ。言ってみろって。」
「・・・・・・うん、ちょっと順序がバラバラになってもいいか?」
「ああ、思いついた事から言ってみ。」
昨夜の出来事を洗いざらい話すのは冷汗三斗だったが、ミツは冷やかしもせずに相槌を打ちつつ、終わりまで聞いてくれた。
「まあ、要は婚約してんのに浮気しちゃったっつー訳ね!」
「う・・・・・・、まあそういう事になるよな。」
「でさぁ、お前はリカちゃんの事好きなんだろ。」
「わからん。」
「でも、お前のさっきの話聞いてたら、お前は多分リカちゃんに惚れてんだろうなぁと思えるけど。」
「そうか?じゃあ逆に聞くけど、もしミツがリカコと一晩過ごしたらどうなる?」
「どうなるって・・・そんな状況に遭遇する事がないけど・・・縦んばあるとしても何もない自信がある。」
「もし向こうから誘ってきたら?」
「まあ、有り得ないけど、リカちゃんならいいよなぁ。でも同級生で、昔から友達付き合いしてる子なら、ちょっと無い方がいいって。大体あゆむが手ェ出したんだろ。向こうから誘って来たんじゃねーじゃん。」
「ですよねぇ・・・・・・。」
「で!話戻るけど、悩むって事は麻菜ちゃんか、リカちゃんどっちにしようって考えるからだろ?イコールリカちゃんに恋愛感情を持ってるって事だろ。」
「認めたくない。」
「はあ?意味わかんねーし。」
「確かにリカコは一緒に居て気が楽だし、面白いし美人だし、いいけど。今までは何かこう、強いっていうか男よりしっかりしてるっていうか・・・・・・。」
「見下されてるみたいな?」
「いや、見透かされてるって方が近いな。」
「まあ、昔から大人っぽかったもんな。」
「そうなんだよ、だから一人で生きていけそうだろ?」
「とは言っても、リカちゃんも女だからな。案外好きな奴の前では弱かったりするんじゃねーの?」
ミツにそう言われ、昨夜のリカコはいつもと違う風だった事を思い出した。
「昨日のアイツ、何か様子が違ってたんだよなぁ。俺も何か変だったし。」
「だから!要はそれだよ!男も女もヤッてみねーとわかんねーって事だよ。」
「お前ヤルとか下劣な言い方すんなよ。」
「あらら、とか言って一番下劣な事仕出かしたの自分だぞ。そんなにムキになるのはやっぱ惚れてる証拠だよ。」
「・・・・・・・・・。」
「多分あゆむは、リカちゃんがあまりにしっかりしてるんで、自分じゃ役不足に思われると思ってんだよ。だから、今まで実はイイ感じになりそうな時はあったのに逃げてたんだよ。」
ミツに言われながら、段々自覚していた。
本当はもう解っていたのかもしれない。
でもリカコを好きになれば、もっともっと汚い自分が露骨にされそうで・・・・・・。
それだけが怖かったんだ。
「なあミツ。俺これからどうしたらいいかな。」
「それは俺が口出す事じゃないし。どっちを取るかはお前次第。ただ、『二兎を追うものは一兎をも得ず』だからな。」
「わかってるよ。そういう器用な事は出来ねー。」
俺にはもう答えが出てた。
今の俺に一番必要なもの。
「サンキューな、ミツ。」
ミツは意気揚揚としていた。
それにしてもミツに恋愛相談をする日が来るなんて夢にも思わなかった。
ましてや、こんなにすっきりできるなんて・・・・・・。
帰りしなにそれをミツに言うと、意味シンな笑みを漏らすだけだった。
そのうち聞き出してやる。
家に帰って、直ぐに麻菜に電話をしたが電波が届かなかったので、メールを入れておいた。
***話があるから、メール見たら電話して。***
少し素っ気無い感じがしたが、もう終わるんだ。
これでいいだろう。
俺は携帯を閉じてウトウトし始めた。
何ともいえない疲労感を覚える。
リカコのあの、泣き出しそうな横顔が脳裏に焼き付いて離れない。
苛々はもう感じない。
自分の素直な気持ちと正面から向かい合ったら、不思議と楽になれたんだ。
いつの間にか俺は寝入ってしまった。
「はっくしゅん!!!」
寒さで目を覚ますと、部屋は真っ暗だ。
かなり寝てたんだな・・・・・・。
携帯に目をやる。
***受信メール一件***
着信はないみたいだ。
徐にメールを開くと麻菜からだ。
「電話してっつったのに。」
寝惚けたままの目を擦りメールを読む。
***メールでごめん。
でも電話しづらくて・・・。
昨日はごめんね。ちゃんと言うべきだったよね。
でも言えなくて。あんな風に見られるなんて。
よく考えたらあたし達まだ若いし結婚とか早いよね。
だから、別れよう。
さよなら、本当にごめんなさい。
麻菜***
何の事かさっぱり解らなかった。
本来謝るべきなのは俺なのに。
何故麻菜が謝るのか?
このメールから読み取れるのは、麻菜も別れるつもりでいる事。
それになにか俺の知らない事情がある事。
俺は返信を押して、メールを打ち始めた。
電話で話した方が早いのだが、この状況パターンだと恐らく麻菜は電話をとらない。
***メール読んだよ。
ちょっと意味がわからなかったんだけど、昨日の事って何?
それと、実は俺も別れるつもりでメールしたんだけど。
良かったら話さない?***
98%電話が掛かってくる自信を持ちながら送信ボタンを押す。
───掛かってきた。
「はい。」
「あ、あの・・・。」
笑いたくなるくらい落ち着き払っている俺とは裏腹に、麻菜は心臓が破裂しそうな程緊張しているのが手に取るようにわかる。
「昨日俺に見られたみたいな事が書いてあったけど、何の事か全く把握出来てないんだよな。」
「えっ!?昨日夜駅前で会ったよね?」
「昨日?駅前・・・?」
俺は昨日の記憶を辿る。
確かに夜駅前には行ったけど、リカコを迎えに行っただけで麻菜に会った覚えはない。
「それって、何時頃?」
「えっ?一時過ぎてたかな。」
・・・・・・一時過ぎ。
確かにその頃俺は駅前にいた。
まさかその時麻菜は近くに居合わせたのか?
それを俺は気付かなかったけど、麻菜は気付いたんだ。
そして俺が気付いたと思い込んでいたんだ。
「俺、昨日それ位の時間に確かに駅前に行ったよ。でも麻菜が居たのは知らなかった。」
「えっ・・・・・・。そうなの?でもあゆむと目が合ったから、見られたのかと思って。」
「いや・・・。で、そん時麻菜は男と居た訳?」
「・・・・・・うん。ごめん。」
「謝らなくていいよ。俺もその日駅前に行ったのはリカコを迎えに行ったからなんだ。」
「でもリカコちゃんは友達なんでしょ?」
「・・・・・・そうじゃなくなったみたいなんだ。ごめん。」
「そっか・・・。何かあたし達最悪だね。」
「ああ、だな。」
「でもこれでもう終わりだね。」
「うん。じゃあな、元気で。」
「あゆむも・・・。」
こんな風に俺と麻菜は終わった。
何だかよく解らない終幕となってしまったが、委細を一々麻菜に問う気にもならなかった。
それだけ、俺の気持ちは麻菜から離れていたのかもしれない。
ただ、お互い浮気をした事は確かな事実なんだ。
そしてお互いその浮気の方が自分にとって必要なものだったんだ。
一人になった気楽さと、本当に自分が進みたがっていた方向を見付けて、気持ちは今までに無いくらい晴々していた。
一段落つくと、無性にリカコに逢いたくなった。
昨日の今日で、彼女は逢い辛いだろうか?
でも時間が経つにつれ、もっと逢い辛くなり、しこりに為りはしないだろうか?
俺は迷いながらも、既にリカコに電話を掛けていた。
「逢いたい。」
俺は言葉を飾る事なく、素直に告げた。
ただ唐突に。
ごく率直に。
彼女の都合も聞かずに。
きっと逢えると信じていたから。
俺は直ぐにリカコの元へ車を走らせた。
ただ逢いたい一心で。
「リカコ!」
リカコの姿を確認した俺は走って行って、力いっぱい彼女を抱き締めた。
昨日もそうだったんだ、きっと。
リカコを見付けるのに集中し過ぎてて、麻菜と目が合ったのも気付かなかった。
つまりはそういうことだったんだ。
「あゆむ?昨日から何か変だよ?」
腕の中でリカコは小さく呟く。
「変で結構!」
自分に言い聞かせるかのように答える。
───離したくない───
決心が鈍りそうになる。
その前に・・・・・・・・・・・・。
俺はリカコを車に乗せて、懐かしい海まで車を走らせた。
あの同窓会の夜、二人がもっと素直になれてたら良かった夜。
彼女もきっとそう望んでいたはずの夜。
───離れたくない───
海に着き、俺達は車を降りて浜辺を歩く。
あの夜は12月で寒くて、五分と外に出て居られなかったっけ。
今夜は、もう春で暖かいから少しは長く居られるかな。
「懐かしいね。あの時の事思い出すなぁ。」
「うん、俺も今思い出してた。」
少し前を歩いていたリカコが振り返って笑う。
俺が素直だと君も素直なんだね・・・・・・。
緩い潮風がリカコの髪を揺らす。
甘い香りが鼻腔に触れ、切なくなる。
ねえ、君はこんな風にこれからも俺の少し前を歩くんだろうね。
僅かに抵抗を感じたそれも、今は微塵も嫌じゃない。
君はいつからそんなに綺麗になったんだろう。
───どうかこのままでいさせて───
「そういやさ、リカコが付けてる香水って結構いいよなぁ。なんてやつ?」
これはどうしても聞いておきたかった。
昨日のリカコを忘れないために。
するとリカコは一瞬困った顔をして言った。
「visage de profil (ヴィザージュ・ドゥ・プロフィル)っていう香水だよ。」
「俺それ持ってるよ!」
「でしょ?」
それはリカコがまだカズと付き合っていた頃、もう使わないという事で俺にくれた香水だった。
同じものを持っていたんだ、どうりで懐かしいような気がしたんだ。
「確かあれって、お前もう使わないって言ったじゃん。」
「同じの使いたかったから、そう言うしかなかったんだよ。好きでもない子に『お揃いで』とか言われたら重いでしょ。」
そうだったんだ・・・・・・。
そんな健気な想いがあったのか。
照れくさそうに歩き出すリカコがたまらなく愛しく思えた。
俺はまたリカコを抱き締めた。
さっきよりも強く。
自分の脈拍が伝わってしまうのではないかというくらいに。
「好きだよ。多分カズと付き合っていた時から。ずっと。」
口から心臓が飛び出そうだ。
同じ台詞でも今までこんなに緊張した事はない。
「あたしも、あゆむの事すごく好きだよ。」
リカコの声は微かに震えていた。
細い肩も小刻みに震えている。
俺は更にきつく抱き締めた。
壊れてしまいそうな腕に、ずっと消えない痕が残ればいいとさえ思った。
───時間よとまれ───
このまま朝が来なければいいのに・・・・・・。
そうすれば君と一緒に居られるのに・・・・・・。
君を泣かせたくないのに、きっと君は泣いてしまうだろう。
やっと本当の君を知る事が出来たのに、俺は宇宙で一番アホかもしれない。
リカコは麻菜との事について何も聞いて来なかったが、知っておく権利はある。
俺は実は麻菜と婚約していた事や、今夜それを破棄した事、その引き金となったお互いの浮気の事、俺が今までリカコに対してどんな想いを抱いていたのか、過去の事も含めて話しておいた。
リカコは全てにおいて驚いていた。
無理もないだろう。
俺は元々自分の感情や考えている事を、あまり人に話すような人間でもなかったから。
「それとな・・・・・・。勝手な考えかもしれないけど、聞いてくれる?」
俺は決心した事をリカコに伝える事にした。
「・・・・・・うん。」
俺はリカコを後ろから抱き締めたまま、話し始める。
顔を見たら言えなくなりそうだったから。
ふと風が止んだ。
波が砂浜に打ち寄せる音だけが静かに響く。
月が映しだされた水面が哀しくゆらゆらと揺れる。
二人が黙るとあまりにも静かで、世界にはもう誰も残っていないみたいだ。
風が再び吹き始めた。
───離れたくない───
「俺さ、ずっとお前は強い女だと思ってたんだ。学生時代もいっつも笑ってたし、結構長い間一緒だったけどお前泣いてンの見た事ないし。」
「ああ・・・、結構負けず嫌いだからね。」
「だと思うよ。でも、昨日ああいう事になって本当は違うなって思った。実際は脆くて、弱くて、本当は我慢してただけなんだって思った。それを知って俺は正直支えてやりたいって思ったよ。」
体が震えてきた。
緊張からなのか、それとも寒さからなのか判らない。
「でも、付き合いが長いってのもあるし、麻菜と同時進行みたいな感じもあったし、100%の自信っていうか実感みたいなのは、あまりないのも正直な所。だからこの感情も本当に今だけのもじゃないかどうかの判別がついてない。」
「・・・・・・そうだよね。」
「ごめん・・・・・・。俺何か意味不明な事言ってるな。」
「・・・・・・ううん、わかるよ。」
リカコは小さくかぶりを振る。
君は本当に解るの?
それで本当に納得するの?
でも俺は君がそんな風に、変にものわかりがいい様な振りをするのを知ってて、こんな残酷な事を言うんだから、最低極まりない男だ。
───離れたくない───
「だからな・・・・・・。俺達逢うの今日で最後にしようと思う。」
言い切ると激しい後悔の渦に飲み込まれた。
しかし覆水盆に返らず。
でもこういう風にしないといけない気がしてならないんだ。
お願い泣かないで・・・・・・。
「そして、また同窓会とか、何処かで偶然出逢った時に二人の気持ちが変わってなかったら、そこから始めたいと思ってる。」
なんて勝手な言い分だろう。
俺だってこんなのおかしいと思う。
───離れたくない───
浜辺はまた沈黙に落とされた。
二人ともしばらくの間言葉を失くして、水平線の方を見詰めている。
まるで苦い思い出を瞳に焼き付けるように。
何かから見付からない様に息を潜めて。
氷の世界で凍えてしまわぬように、互いに身を寄せて。
「わかったよ。普段あゆむってそんな風に自分の気持ちをあんまり言わないもんね。・・・・・・だから、それだけ真剣に考えてくれたんだよね。」
そう言い、振り返って精一杯の笑顔をつくるリカコ。
「何で・・・・・・笑えるんだよ。」
俺は自分で言っておきながら、後悔が押し寄せる喉の痛みに耐えている。
「・・・・・・だって・・・、泣いてたら、次に逢う時まであゆむの中に、あたしの泣いてる顔しか残らなかったら辛いじゃん。・・・・・・だから笑っとくんだよ。」
「・・・・・・っく・・・!」
もう堪え切れなかった。
押し寄せた涙は、ドラマとかで出るような程大粒で、後から後から頬を伝って流れる。
「あ、あゆむ・・・・・・。」
君の声が震えているのがわかる。
どうして君はそんなに強い振りをするの?
「うっ・・・・・・っ・・・」
必死に押し殺した声も限界があった。
喉の奥が火傷しそうなくらい熱い。
しょっぱい水分が溢れてる眼球の裏も。
嗚咽する声が漏れる唇も。
頬を抑えた両手も。
張り裂けそうな胸も。
何もかもが熱かった。
───離れたくない───
俯き、親の愛情に飢えた子供のように、声を殺し咽び泣く俺を今度はリカコが抱き締めてくれた。
しかし直ぐに彼女の胸は上下して、すすり泣くのがわかった。
俺も君も本当はすごく泣きたかった。
でも安堵出来る泣き場所が見付からなかったんだ。
───側にいさせて───
離れたくない、離れたくない、離れたくない、離れたくない、離れたくない。
愛してる、愛してる、愛してる、愛してる、愛してる。
時間をとめて、時間をとめて、時間をとめて、時間をとめて、時間をとめて。
これほど苦しいのに、果たしてこの感情に偽りなどあるのだろうか?
互いは互いを愛し求めているのに、離れる必要などあるのだろうか?
いつか・・・なんていう未来など本当にあるのだろうか?
それでも・・・・・・浮気をした俺にはつけなければならないケジメと、受けなければならない制裁があるから・・・・・・。
こんな始まり方じゃあ、きっと善いはずなんてないから・・・・・・。
涙が止まらなくなってこのまま永遠に眠ってしまいたい。
切り裂かれそうなくらい愛しい君を巻き込んで、制裁もケジメもあったもんじゃないのに。
愚かな俺、哀れな君。
それでもまたいつか必ず逢える未来を信じたかった。
二人の遠回りする想いは何処かで繋がるという運命があって欲しい。
俺達は喉が渇くまで泣いた。
やがて朝日が顔を出した。
砂浜が照らされ、キラキラと輝く。
朱色に染まる波が砂を浚っていく。
そんな声も出ない綺麗なシチュエーションが、愚かな俺には勿体無くてまた涙が零れる。
俺は絶対この情景を忘れる事はないだろう。
そして君のその涙に濡れた横顔も忘れない。
無理に笑顔をつくる必要なんてない。
泣きたい時に思い切り泣けばいい。
心から・・・・・・そう思った。
帰りの車の中、ひとしきり泣いてすっきりしたのか、俺もリカコも自然に笑えていた。
ただ声は掠れて、原型を留めていない。
瞼も腫れて視界が狭くなった気がして運転し辛い。
リカコも大分泣き腫らした目をしていたが、彼女は泣いても綺麗だった。
俺の左手に重ねた彼女の右手の冷たさが、熱を残す体には心地いい。
───時よ、どうか早く過ぎて───
俺が選んだ道は滑稽で、残酷なものだった。
でも必ずいつか逢える。
それまで二人は想い続けていられたらいい。
そんな運命を信じていたい・・・・・・。
───1年後
俺はまだ君と再会していない。
風の噂では雑誌のモデルか何かをしてるとか。
君もきっと何処かで俺の風の便りを聞いているのかもね・・・・・・。
そういえばミツだが、あの相談の後聞き出してみると、ホストをしていたらしい。
なんでもマダムに一番人気だとか・・・(笑)
どうりで女心がよく解るわけだ。
少し納得。
交差点で信号待ちをしながら、そんな事を思っていたらミツから電話が鳴った。
「おっす、久し振り。実はなあゆむに重大ニュースがあんだよ!」
何気なくビルボードに目をやる。
そこには懐かしい顔が微笑んでいて、思わず口元が綻んだ。
風の噂もたまにはアテになるもんだ、なんて思いながら。
「でな?聞いてるか?リカちゃんが雑誌の専属モデルになったんだって!」
それにしても一段と磨きがかかっちゃって・・・。
「あゆむ?!聞いてんのか?」
「ああ。もう知ってるよ。」
俺は目を逸らさずに答えた。
「なーんだ!知ってんのか。でももう一個あるんだけど、これは耳寄りだぞ。」
「何。ミツが結婚するとか?」
「違うよっ!来月同窓会があんだよ!」
「・・・・・・へえ。そうなんだ。」
「お前感情表現乏しいな。もっと喜べよ。」
ミツにそう言われ、ちょっとグサッときた。
別に喜んでないわけじゃないけど、心の準備が出来てないだけなんだ。
それにいざ逢うとなると、彼女の心変わりも不安だし。
でも、とりあえず逢える。
同じ空の下で生きていれば、きっと何処かで繋がっているから・・・。
俺は年甲斐もなく、来月の同窓会が待ち遠しくて仕方なかった。
完
この話は番外編として書いたものですが、この話だけ読んでも支障はありません。後に本編というか、この話に繋がる作品を書く予定です。